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インド生活回想記② インド人セラピストの真実

写真は停電でまる1日クリニックの営業ができず日本から持ってきた折り紙で鶴の作り方をインド人セラピストのスリラジャとアヌープに教えている光景です。
停電はしょっちゅう。


十年前アーユルヴェーダのクリニック&スパで日本人マネージャーとして来た私はインド人セラピストとの初顔合わせに少し緊張してドアを開けた。

スリラジャという二十代半ばの女性セラピストが出迎えてくれた。

リラックスしているというよりは力が抜けちゃったような感じ…良くも悪くも。

日本だったら仕事場では気合が入っていてスキを見せないような人って多いのでこちらも構えてしまったり緊張してしまうことは当たり前なような気がするのだが…

そっかぁ、そうだよねインドだもんねという感想を持った。

アレ?あと2人男性セラピストも来てるはず…

スリラジャに聞くと、まだ来てないと言うだけでいつ来るかはわからないと…

エェ〜、もう開店時間だよ 汗
開店時間が10分くらい過ぎた後、ラジブという男性セラピストが何食わぬ顔で入ってきた。
まるで当たり前のように…

そしてドミニクというセラピストもその後数分後に現れた。

いつもこんな調子か!

まさかねと思ったが翌日も同じ。
穏やかな様子でナマステ〜と挨拶してくる。
予約していたお客様の方が先に来て待っているのに。

お客様も怒っている様子はなくただ普通に待っている。
ただしインド人客にかぎってだ。

こんな事もあった。
アーユルヴェーダの女医は地下鉄で一時間半かかる場所からこのメインブランチに来るのだが、インド人患者が予約の時間より30分ほど遅れてやってきた。

女医も予約診療時間になっても来ない。

私はどうしたことかとハラハラしたが、インド人患者は「買い物でもしてくるわ」と言って出て行った。

その患者が一時間後に戻ってきたがまだ女医は来ない。
患者はまた一時間くらいスリラジャと雑談したりチャイを飲みながら待っていた。

そして女医は予約診療時間から3時間くらい後にようやく現れる始末…

焦る様子もなく、患者もイライラする様子もなく診察と処方が終了した。

こんな事って日本ではありえないだろう。

日本で病院で待たされたとしても医師が予約の時間に3時間も遅刻するってことはないはずだ。

そんな女医だからなのか…

このクリニックの経営者であるアーユルヴェーダの女医は週に2回くらいしか来ないため、セラピストたちが遅刻する事を知らないのか…それともここはインドだから医師も承知の上なのか…

私はしばらく様子を見ることにしたがセラピストたちは相変わらずだった。

アーユルヴェーダのセラピストは南インドからデリーに出稼ぎのようにやってくる人が多い。

スリラジャもドミニクもラジブも南インドからやってきた。

後でわかったのだがスリラジャは一ヶ月に2回くらいしか休ませてもらえていなかったのは気の毒だった。  

南インドの家族を思い出して泣いている事もあった。

ドミニクは私が来る前はマネージャー代行をしていた。

インドは買い物もリキシャに乗るのもクリニック&スパでトリートメントを受けるのも定価で支払うのではなく互いに交渉して決めるとあう文化がある。

店には一応トリートメントの料金表やメニューが置いてあるがドミニクが勝手に料金を決め客にその金額を支払わせていたようだった。
ドミニクが客に言った金額とレジに置く金額が違っていることがだんだんわかってきた。

差額は勝手にドミニクのポケットの中に…

そして朝店のドアを開けさせ自分は毎回遅刻、閉店後の片付けも全てスリラジャにさせていたのだ。

私は2ヶ月ほどずっと観察し、これ以上は黙っていられないと思い女医に報告した。

ドミニクは3年ほど働いていたらしいが今回の件が発覚してクビになり南インドに帰っていった。

その後スリラジャも病気の母を看るために南インドに帰っていった。

安い給料から仕送りしているスリラジャは飛行機では帰ることができず長旅になるが列車で帰らなければならなかった。

スリラジャにはランチを分けてもらったり、トリートメントの技術を教えてもらったりとてもお世話になった。

スリラジャが帰る前に私は少しばかりのお金を包み渡した。

気の毒でたまらなくそうせざる負えなかった。

ドミニクが辞めた後、スニルとアヌープという男性セラピストが来た。

アヌープはまだ若いイケメン系のインド人だがとてもシャイで優しい。

スニルは誰でもがそう思うであろう、なんか変わったヤツ。
なんと表現したらいいのか…

ミスター・ビーンのような、何を考えているのかわからないようなヤツ。

しかし裏表ない人畜無害な人。

ある朝、スニルが勤務時間になっても全く来ない。

アヌープとラジブが電話をしても出ない。

昼をまわった頃スニルからラジブに電話が入った。

今、警察にいて事情聴取されていると…
えぇぇ!何が起きたの?

地下鉄の女性車両に乗っていたため警察に連行されたと言う。

私はスニル変なヤツだと思ったがチカンでもしてしまったのかと一瞬、勘ぐってしまった。

しかし実際はスニルはチカンをしたわけではなく、朝の電車に女性専用車両があることを知らずに乗ってしまって満員電車のため気がついた時は他の車輌に移ることもできなかったらしい。

デリーの通勤ラッシュは日本よりひどいくらいだ。

テンネンの更に上を行くスニルならありえることだ。

右側がスニル左はラジブ

インドの文化を知らないと勘違いすることがある。
それは中年のおじさんになってもおじさん同士で手を繋いで歩いたり、おじさんの膝の上におじさんが座っていたりする光景を見かける。

彼らはゲイではなく、それは当たり前なのだ。
小さな男の子同士なら手も繋いだり膝抱っこもしたりするのと同じ感覚なのだ。

デリーで住み始めた頃、昼休みになるとおじさんたちが手を繋いでランチを食べに行くのを見て不思議な光景だと思ったがだんだんと慣れてしまった。

男同士は手を繋ぐのにインドではまだ恋愛結婚が許されていない家庭も多く、男性と女性は一緒に並んで歩けない。
結婚関係でない男女は男性が少し先を歩き女性は少し離れて歩く。


男性セラピストのラジブは歌うのが好きだった。

お客様がいないと待ち合いの椅子に座り歌い始めるのだ。

その声はだんだん大きくなっていく。
しかも日本の演歌のこぶしのような歌い方なのだ。

インド歌謡を聞くと日本の演歌のこぶしと似ているなあと思うことがあったが、まさかクリニックでラジブのこぶし前回の大声の歌を聞くとは思わなかった。
時々はうるさ〜いと思うことも正直あったが本人に悪気はないのだ。

そんなインド人セラピスト達とは暇な時間はチャイを飲んだりインドの甘〜いお菓子を食べたりしながら、時にハラハラ、時に涙…でもたいていはインド時間的な緊張感の抜けたゆっくりした時間を一緒に過ごした。

そうだ!何年かぶりでフェイスブックからアヌープに連絡してみよう…

こんなnoteもやってます。よかったら見てください。

https://note.com/elements5/








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