2022年の阪神タイガース、公式戦を全て終える

阪神タイガースが、2022年の公式戦全日程を終了した。甲子園で行われたヤクルトとの最終戦は、そう簡単には終わらなかった。両軍共にもう順位は確定しており、選手、観客、何れもこれは消化試合であるとの認識を持って開始された試合であったが、巡り合わせの結果、あろう事か延長戦に入り、結局は12回を同点で終わり、引き分けとなった。しかも、我が阪神タイガースは、9回が終了した時点で控えの選手が投手野手全てを含めて才木投手しか残っていない状態であった。9回までに、投手交代、代打、代走と、ベンチが動き過ぎたのである。

解説の藤川球児氏がこの異常事態に気が付いた時、阪神タイガースを指揮しているのが藤川氏にとっても大先輩である矢野監督である事を踏まえた上でも、「これは、これから投げる才木投手が可哀想ですよ。」と、思わず中継中に絶句していた。当然である。控え投手として準備をしており、更に今シーズンは靭帯修復手術のリハビリから復帰したばかりの謂わば病み上がりの状態であった才木投手に、「もう順位は決まっていて全くの消化試合であるが、仕方が無いので残り最大3イニングを投げろ。」と言い、マウンドへ送るのである。仕方が無いとは言え、この仕打ちはあまりにも酷だ。

それでも才木投手は全力の投球で3回を無失点で押さえ、されどもうとっくに主力選手がベンチへ退いている打線は彼を全く掩護出来ず、試合は12回を終了した。藤川氏は「打たれても打たれなくても順位には全く影響が無いこの状況で、才木投手は甲子園を埋めた満員の観客の為だけに腕を振りましたね。それ以外に腕を振る理由がありませんから。」と、たった一人戦っていた才木投手を称賛した。これもまた、その通りである。今日この試合を観に来た観客がせめて悲しまずに帰路へと向かえるように、才木投手は腕を振ったと捉える他無い。

何度でも述べるが、今日の選手起用は酷いものであった。退任が決定している矢野監督も最後に酷い事をするなあと思った。しかし私は、この監督の事が嫌いでは無い。寧ろ、仮に私が仕事をするならば、矢野監督の様な上司の元で仕事をしたいと思っている。挑戦する若手を笑顔で熱く応援し、その成長する姿を見てまるで自分事の様に喜び、時には喜びのあまり感極まる、そんな矢野監督が私は好きであった。年齢が全く違う若者を相手にしている関係上、口から出かけた言葉を必死で我慢した瞬間も何度もあったと思う。されど矢野監督は、必死で若者に寄り添おうとしていたと思う。私は、そんな監督が甲子園の宙を舞う姿を見たかった。なので余計に、最後の試合でこの様な采配を結果的にしてしまったと云う事実が、悲しい。

密かに、来シーズンはタイガースが崩壊してしまわないかと心配している。次期監督は、プロ野球での指導歴も長く、非常に頭の冴える岡田彰布氏である。岡田氏は、勝てる采配をしっかりと振るうだろう。彼の研ぎ澄まされた采配があれば、通常であれば優勝争いは間違いないと踏んでいる。しかし、自信もあり、実績もある岡田氏と、若い選手ら信頼関係が上手く築けるであろうか、疑問である。矢野監督の元でのびのびと野球をやっていた若手が、萎縮してしまい成績が低下しないだろうかと、心配してしまうのである。今のタイガースは、矢野監督が築き上げたこのチームの雰囲気で選手を鼓舞しながら戦っている所があると思っている。その雰囲気の崩壊が、チームの崩壊を意味しないだろうか。

兎も角、今シーズンの公式戦は全て終了した。来年のタイガースは、読めない。上手く行けば優勝であろうが、でなければ最下位だろう。と云う心配はあれど、まずは直ぐ先のクライマックスシリーズに注目そたいとも思う。如何せん、矢野監督が本当に最後の采配を振るうのはクライマックスシリーズ、或いは日本シリーズなのである。もう少しだけ、矢野監督の野球を観たいと思う。一試合でも多く、2022年のタイガースを観られる事を願う。

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