羽衣の家 天女の巻 1-4 (修正版)
第一章 乙鶴
応安元年(1368年) 世阿弥(鬼丸)5歳
四、大和川
垣内{がいち}の庭での稽古を終えた鬼丸を含む七人の子供たちは、「川へ行く」と言って、結崎大明神の四社のひとつ、糸井宮の裏を抜けて北に進んだ。細いけれどしっかりした踏み跡が、子供たちの背丈より高い荻の原の間に続いている。
「この道からはずれると、はまると抜けられない底無し沼があるから、絶対荻の原に入ってはいけないよ。」
十歳のステが鬼丸に教える。
「大丈夫だよ。私たち手をつないで行くもん。」
と五歳のオユと