見出し画像

台風19号で被災したりんご農家へのボランティアレポート

こんにちは。
農業企画の細越(ほそごえ)です。
台風19号で被災した友人のりんご農家へのボランティアを2泊3日でしてきたので、まとめました。

画像1

はじめに

画像2

長野県に入るまでは、本当に台風の被害が酷いのかにわかには信じられなかった。やはり、現場に行かないとわからないことはたくさんある。

長野県を流れる千曲川。今回の台風19号で一気に知名度を上げたが、千曲川は別名、信濃川。信濃川は、小学生のときに社会の授業で習った日本最長の河川のことだ。

そう、今回決壊が起きた川は、日本最長の川である。

決壊したエリアは、新幹線かがやきが浸水した車両センターが多くのメディアでも報じられていた長野市。その車両センターの目と鼻の先に友人のりんご畑があった。

友人のりんご畑は最大で3m以上浸水して、壊滅的だ。

画像3

現状

現地に来てわかったことは、ニュースで報道されている内容は氷山の一角であるということ。被害が甚大過ぎて、全容はまだまだわかっていないと感じた。

現場感としては下記の通り。

・台風19号が上陸する1週間前はアップルライン*1の直売所はバスや観光客で賑わっていたが、今回通ったときはとてもりんごを売れる状態ではなく、片付けに追われていた。
・りんごの畑に出ている人など1人もおらず、まずは人命の確保、住処の確保に必死な人々の姿が見えた。
・道路はもちろん、家の中にまで汚泥が入り込んでいた。
・公園などのスペースには浸水した家財道具などの大量に積まれていた。
・ボランティア活動現場で水洗トイレはない。
なるべく済ませてからボランティアに向かってほしい。
※仮設トイレはあるが長蛇の列。特に女性。
・被災地以外は想像以上に普通の生活を送っている。なので、観光はキャンセルせず積極的に来てほしい。
*1:アップルラインとは、りんごの生産量全国第2位を誇る長野県の中でも特に生産が盛んな地域で、20件以上のりんごの直場所が並ぶ長野を象徴する国道である。

画像4

農業の目線では下記の通り。


・これから収穫を迎える予定だったりんご畑が浸水した場合は、全滅。
大腸菌をはじめとする雑菌が内部に入り込んでしまっているので、例え洗って見た目が綺麗だとしても販売が出来ない。写真にはまだ木に成っているが、あと数日したら内部から腐って、自然と落ちてしまう。

・ニュースでも同じ景色は見ていたが、目の前で見るとりんごの葉っぱ1枚1枚が汚泥での汚れが確認出来る。遠目ではまだギリギリ耐えたように見えたりんごも、本当はもう絶望的なことを知る。

画像5

農機具
りんご農家が消毒に使う農機具の多くは浸水していた。
台風19号の事前情報では「風」に着目して報道されていた。台風が上陸してみると風ではなく凄まじい降水量。そのため風対策として、倉庫内に閉まってしまっていたのが仇となって農機具を避難させるのが遅れてしまった。
※写真は土手に避難させてあった農機具

画像6

農産物
収穫後の農産物は出荷までのあいだ貯蔵庫に保管される。
住宅街であっても2m以上の浸水跡が確認出来たので、貯蔵庫の中は当然浸水した。
結果として、梱包まで済ませ送り状も貼った状態のシャインマスカットやりんごは全て廃棄となった。

画像7

画像8

画像9

作業をしてみて感じたこと

農業について
ここの地域の人がまったく水害や台風のことを軽視していたかというとそうではない。りんごの木には支柱を立てて風対策を施し、早めに採れるものは台風前に早採りしているのが見受けた。玄関を1段高くしている家も多く、大昔にあった教訓を語り継いで来たのかもしれない。それでも今回の水害は突然のことでなす術がなかった。氾濫ではなく決壊だったからだ。早採りして貯蔵庫で保存していたものは全て浸水し、流され、売り物にならなくなってしまった。
ボランティアとして
これからボランティアに行くことを検討している人、そしてボランティアの受け入れを検討している人にどうしても伝えたいことがある。それは作業に取り掛かる前に、お互いの自己紹介の時間を作ることだ。「そんな悠長なことを…」と思うかもしれないが、瓦礫撤去などの重労働は協力して作業しないといけないことが多々ある。名前を知っているだけでも、声を掛けやすくなったりするので余計な気苦労が少なくなると考える。自己紹介の時間を取るだけで、作業効率は劇的に変わる。
住んでいる地域民との繋がりの重要性
・被災地の当事者は、近隣住民との繋がりも非常に重要だと感じた。なにかあったときに頼れるのはお金でも、高級車でもなく、人と人との繋がりである。友人の農家の元には、多くの人が作業の手伝いに来ていた。普段から付き合いがあり、なにかあったときにはお互いに助けに行ける関係が有事の際にはとても大切になる。

・東京では、隣に住んでいる人とのコミュニケーションが希薄であることは周知の事実であるが、仮に都心部に住む人が被災をした場合、お互いに誰を信用し、信頼できるのだろうか。
1人でも良いので、困ったときにお互いが助け合えるような関係性を作ってほしい。

必要なもの

今回、瓦礫撤去や汚泥の運搬を行った経験から必要なものを下記に列挙する。基本的には多くの記事でも出ているこちらこちらを参考にして貰えばと思う。

もちろん、支援に行くタイミングによって必要なものは変わってくるので、これ限りではないがボランティアの初期段階のイメージとして受け取ってもらえると良い。
ちなみに、ワークマンに行けばだいたい揃うので、ワークマンは最強。

画像10

服装
・マスク(防塵性抜群のやつ)
・長靴(絶対に必須)
・カッパ上下(汚泥などでめちゃくちゃ汚れる)
・防水の手袋(滑り止めが付いているやつ)
・汚れてもいい服(捨てても良いやつが良い)
その他
・着替え(作業後に必要)
・お昼ご飯(自分で用意するべき)
・飲み物(同上)
・貴重品袋(車上荒らしが発生する場合があるので持ち歩こう)
・スコップ(あると良い)
・一輪車(あると良い)
・ほうき(あると良い)
いくらあってもいいもの
・タオル(自分でも使うし、余剰分は現地に寄付可能)
・薄いゴム手袋(あると良い)


支援の仕方

なにかしたいけど、何をしたらいいかわからない人に、現地で聞いた支援の仕方を伝えたい。

1,現地に行き、ボランティアをする
まず現地に行くことが支援になる。現地の人手はまだまだ足りない。家の瓦礫撤去、農業倉庫の整理、畑の整備、やることが山積みだ。一人で黙々とやっていると参ってしまうような作業なので、やれることがないと思っている人も顔を出してやれることがないか聞くだけでも意味がある。現地に行くこと、それだけで支援になる。※ボランティア保険は必ず入りましょう。

2,情報を知り、シェアする
被災地で何が起こっているかを知ってほしい。何を困っていて、何を求めているのかを時間が経っても忘れないでほしい。そして、その知った情報を多くの知人友人にシェアをしてほしい。多くの人に忘れられないことが被災地
では勇気になる。

3,農家から、直接購入する
基本的に、農家はいくつも畑を持っているもので、被害にあっていない畑の農産物が少し残っていたりする。それらを直接購入することで応援になる。
ポケットマルシェでは来年の収穫分を予約購入できる特別プランが始まっている。「来年以降も頑張ろう」そう思えるような支援をしてほしい。
https://poke-m.com/producers/15073

4,被災地の産品を、積極的に買う
被災した農家の産品が残っていなかったとしたら、近隣の販売可能な農家から購入してほしい。スーパーで商品を見つけた時も積極的に買ってほしい。売上は被災地に戻り、間接的であったとしても被災した農家にも届く。その地域のブランドや売上を維持することがいずれ復興した時の支援となる。

5,募金をする
シンプルに募金は彼らの支援となる。災害募金が全国各地で始まっているのでおやつを1つ買うつもりで募金箱にその分を入れてほしい。思い入れのある市町村がある場合は市町村へのふるさと納税という手もある。また、農家さんの助けになりたいという募金は農業企画で立ち上げたクラウドファンディングに支援をお願いしたい。(アプリをダウンロードする必要あり)
https://polca.jp/projects/t3cKfkinrsK

6,物資を送る
物資で支援するという手もある。
それぞれの地域や状況によって欲しい異なるので注意が必要であるが、物資が不足しがちな被災地には物で送るのが支援になる。

重要:「泥付きりんごを購入したい!」という方へ

りんごを買いたいと言っていただくことは、1年間丹精込めて作ってきた生産者にとって何よりも嬉しいこと。今回の災害の後で多くの方からそのような声をもらっているらしい。
農業企画の元にもたくさん「購入したい」との声が届いている。

画像11

しかし、今回はどうしても売れない事情がある。

それを生産者から聞いてきた。

売れない理由1 品質保証ができない
・水没したりんご、泥がついたりんごには、水の中に含まれていた菌が付着してしまっている。外側がきれいに見えても、ヘタの部分から侵入して中がダメになっていることもある。1%でもその可能性があるりんごは売れない。「火を通せば大丈夫なのではないか」という声も聞くが、菌には耐熱性のものあるので、火を通したから安全であるとはいえない。
喜んで欲しくて作ったりんごで誰かに迷惑がかかるような事態は避けたい。
それが今回の水没りんごが売れない一番大きな理由である。

・ジュースや加工品も同じで、王冠部分に泥が挟まっていたり、浸透圧で中に水分が入っていない可能性が0ではないので販売ができない。
売れない理由2 手間になってしまう
みなさんが考えている以上に収穫〜選別〜箱詰め〜出荷という一連の作業は手間がかかる。普段と違うオペレーションの注文をいただくことで、逆に手間になってしまい生産者を苦しめることもある。ありがたい声なので無下にすることもできず受けてしまうことも多い。
しかし今回は災害規模が大きいので、家の修復や来期のための畑整備に時間を使わなくてはいけない。その中で細かい発送業務をすることができないのである。

それでも売っているところを見かけた場合は、自己責任で購入をしてほしい。浸水をまぬがれたりんごを販売しているところはある。しかし、水しぶきがかかってしまっている可能性は否定できない。当初、農業企画でもそういったりんごの販売をしようかと思ったが、安全性を考慮してやめた。

台風の影響で傷が付いたりんごは今後出てくる。
なにか訳ありの商品を購入したい場合はそちらを検討して貰いたい。

温泉情報

長野県は言わずとしれた温泉が有名な地域である。
ぜひ、ボランティア作業のあとには温泉に入って長野県にお金を落としてほしい。

あけびの湯
6:00〜22:00

 ・ぽんぽこの湯
10:00~21:00

 ・湯っ蔵んど
10:00~22:00

 ・まめじま湯ったり苑
10:00~24:00

 ・うるおい館
6:00~9:00
10:00〜23:00

 ・りんごの湯
復活待ち

終わりに

今回、台風19号にて被災された生産者の皆様におかれましては心よりお見舞い申し上げます。2泊3日という短い時間ではありましたが、現地の甚大な被害を目の当たりにし、大変に心が痛み、己の無力さを実感しました。この現状を伝えないといけないと思い、このように発信をさせていただきました。

1日でも早く復興するように、少しでも多くの人にこの情報が届きますように願います。


最後までお読みいただきありがとうございます! ご縁野菜@農業企画とLINEで友達になって貰えば不定期ながらも規格外野菜の情報を流させていただきます。ぜひとも友達追加お願いします! ▼LINE友達追加先リンク http://nav.cx/tmoKrj1