「無農薬」の表記で騒いでいるけど、消費者に考えて貰う機会と捉えればよくない?

【3/10追記】
 "無農薬"という言葉について考えるプロジェクトに回答した369名分のアンケート結果が公開された。読むべし。

こんにちは。
農業企画の細越です。

ポケットマルシェが行っていた "無農薬"という言葉について考えるプロジェクトが農家を中心にTwitter上で(一部)話題になっていた。

この取り組みは、普段食べている食べものについて消費者に考えてもらう機会を作っただけでも大変な価値があると個人的には思う。

ぼくは東京農業大学在学中に全国各地の農家さんにお世話になり、アメリカ農業留学を経て、ベトナム、タンザニア、フランスへ短期の農業留学の経験をしている。※学生時代の詳細は下記よりご覧いただきたい。


また、ぼく自身はポケットマルシェで業務委託で働いているが、このnoteはポケットマルシェは関係なく個人的な見解である。

無農薬表記問題の概要

今回の無農薬表記問題の発端であるポケットマルシェの "無農薬"という言葉について考えるプロジェクトを下記にまとめる。

・「農林水産省が公表しているガイドラインには「無農薬」の表記は禁止と書いてあるが、実際に「無農薬」を表記している生産者さんがいる
・ガイドラインは法律とは別で「無農薬」の表記をしても罰則はない
・生産者さん中にも無農薬表記「許容派」と「反対派」がいる
・消費者のみなさんの意見も聞きたいのでアンケートのご協力をnoteで発信 
・生産者さんを始め、農業関係者を中心にTwitter上で(一部)話題になる

詳細はポケットマルシェのnoteを読んで欲しい。

消費者の無知が原因

「無農薬表記」の問題の根本は消費者の無知である。

「無農薬表記は禁止されている」

このことを全ての消費者が知っていればよいのだ。
無農薬表記の農産物が買われなければ(需要がなければ)こんな話題/問題にならない。

そう言うとこんな声が聞こえてきそうだ。

「無農薬表記は禁止されているのだから、使っている事業者が悪いだろ!!」

ごもっともな意見だ。

しかしながら、日常生活において食べるものに対してどのくらいの人が気を遣っているのだろうか。

根本的な問題はそこなのではないだろうか?

事業者も「消費者が知らないことをいいことに」無農薬表記を使う。
理由は売れやすいから。ただそれだけのことである。

「無農薬って書いてあるから安心」

これが今日の日本の現状なのではないだろうか。
だからメル●リなどで、どこのだれが作ったかわからない野菜が飛ぶように売れている。

自分の身体は自分が食べたものから出来ていることくらいは知っているにも関わらず。

農薬は悪なのか

いい機会なので農薬についても見解を述べる。

そもそも農薬は悪ではない。

農薬には使用基準が農薬取締法で定められている。
また、食品においては残留農薬の基準が食品衛生法で定められている。

万が一、出荷した農産物から残留農薬が検出された場合、生産者さんは農薬取締法違反と食品衛生法違反の2つの処罰を受け得る。

また、農薬には厳しい規制がある。
農薬取締法で定められた登録制度で、国(農林水産省)に登録された農薬のみが製造、輸入、販売、使用できるものになっている。

農薬を登録するためには、品質や安全性に関する様々な試験を行う。
その試験データを整えた後に農林水産大臣に申請し、下記のステップを踏む。
①農水省の検査機関で農薬の効果や毒性や作物・土壌に対する残留性などを総合的に検査する。
②安全性などが確認された後に、登録に至る。

当たり前だが、国は相当厳しい検査を行った後に農薬の使用を認めている。
それを「農薬は悪」と決めつけて議論してくるのはダサいから辞めた方がよい。
※ネオニコチノイドなどによるミツバチ群数減少は理解しているが、長くなるので割愛する。
※言うまでもなく、すべての生産者さんが農薬の使用量、使用回数を厳守している前提である。

日本の農家が農薬を使用する理由

日本は農薬の使用量が多く、有機農家の数も諸外国に比べると少ない。
その理由は2つある。

①JAの存在
詳細は省くが、一説によるとJAが販売する肥料等の売上が減るため有機農業者が村八分にあったという歴史があるという。
※詳細は農協解体を読んでください。

②日本の気候が高温多湿なため病害虫が発生しやすい
高温多湿な環境は、害虫にとって過ごしやすく増殖するのに適した環境であるため農薬の力を頼らざるを得ない。

ちなみに、一般社団法人日本植物防疫協会による「農薬を使用しないで栽培した場合の病害虫等の被害に関する調査報(水稲のみ抜粋)は下記の通りだ。

スクリーンショット 2020-03-02 1.03.29

調査法からわかるように、いもち病に対する農薬を使用しなかった場合の結果は以下の通りだ。

収量:36%減
生産額:80,000円以上の減額

この結果を見ても、農産物を育てて売ることで収入を得ている生産者さんに対して「農薬を使うな!」と軽々しく言えるのだろうか。

無農薬表記について

すでに多くの有識者が述べている通り、無農薬表記は農林水産省が定める「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」において、「無農薬」は表示禁止事項とされている。その代わり、下記画像のように記載の仕方が明記されている。

スクリーンショット 2020-03-01 23.49.01

特別栽培農産物に係る表示ガイドラインより抜粋

禁止なので、使ってはいけない。
至極当然な意見だ。

しかし、禁止なのに使われ続けている。
その理由は2つあると考える。

①特別栽培農産物に係る表示ガイドラインにおいて「無農薬」の表示を表示禁止事項とされたのが平成15年5月の改正以降からだったためである。つまり、平成15年5月に改正されるまでは「無農薬」と表示して良かったことになる。

②禁止されているだけで、罰則が無いからである。

15年前は使って良かったものが禁止になったが、その禁止されている文言を使用しても罰則が無い。

いままでは使って良かったけどこれからは禁止です。
……が、破ってもお咎めは無いです。

これでは破っている人がいたとしても、ぼくは責められない。
みんながみんな、そんなに強くない。

参考事例として、都内では路上タバコを見る機会が滅法減った。
その理由は「『成人の良心やモラルを信頼』する前提の条例でしかないため、それにも限度が出てきた。」ので「罰金」や「過料」を定めたからではないだろうか。

東京都千代田区が、ポイ捨てに対する罰則規定を設けた『安全で快適な千代田区の生活環境の整備に関する条例』を2002年(平成14年)に制定し、かつ当該行為の取締を実施した。

強制力のない努力義務としての条例はそれまでにもあったが、『成人の良心やモラルを信頼』する前提の条例でしかないため、それにも限度が出てきた。

千代田区の場合は過料として2,000円(条例による上限は2万円)を徴収している。

しかし、「安全で快適な千代田区の生活環境の整備に関する条例」にて過料処分を導入した千代田区は、過料徴収はあくまでモラル向上の「手段」であり、これを罰則などいらない「マナー」への回帰を目指す、としている。
※参考:Wikipedia路上喫煙禁止条例

有機農産物や特別栽培農産物の表記について

無農薬表記以外に、有機〇〇やオーガニック〇〇、特別栽培農産物、エコファーマー、G-GAPなど色々な認証制度があるが、これらは無農薬表記の問題とは一線を画している。

有機/オーガニック
堆肥等による土作りを行い、播種・植付け前2年以上
及び栽培中に(多年生作物の場合は収穫前3年以上)、原則として化学的肥料及び農薬は使用しないこと。 遺伝子組換え種苗は使用しないこと。

特別栽培農産物
その農産物が生産された地域の慣行レベル(各地域の慣行的に行われている節減対象農薬及び化学肥料の使用状況)に比べて、節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下、で栽培された農産物。

エコファーマー
農業者が、都道府県の作成した導入指針に基づき、
① 土づくり技術(たい肥等の有機質資材の施用)
② 化学肥料の使用低減技術(局所施肥、有機質肥料の施用等)
③ 化学合成農薬の使用低減技術(機械除草、生物農薬の利用、マル
チ栽培等)
の3技術すべてに取り組むことを内容とする持続性の高い農業生産方式
の導入計画を作成し、認定されること。

G-GAP(グローバルギャップ)
GLOBALG.A.P.認証は、食品安全、労働環境、環境保全に配慮した「持続的な生産活動」を実践する優良企業に与えられる世界共通ブランド。世界120か国以上に普及し、事実上の国際標準となっている。

ここでは有機/オーガニックに限って言及するが、一線を画している理由は「該当する認証を取得していないと謳えないと農林水産省が明確に法律で明言している。」からである。※下記画像を参照

スクリーンショット 2020-03-01 23.57.49


冒頭に記載したが、ぼくはアメリカ農業研修に参加した経験がある。
約1年間、アメリカのMair-Farm-Takiという有機農家で働いていた。

そこでいまでも記憶に残っているエピソードがある。

Mair-Farm-Takiの販路の1つがファーマーズマーケットであったので、毎週末はファーマーズマーケットで販売をしていた。

ある日、いつも出店しているいるはずの有機農家が出店していなかった。
理由を聞くと「オーガニックと嘘をついて、オーガニックではないものを販売していたために罰金とオーガニック認証の剥奪、ファーマーズマーケットへの出禁」となったとのこと。

Mair-Farm-Takiの農場主はこう言っていた。
「アメリカには化学物質過敏症のためにオーガニック食品しか購入出来ない人がいる。そういった人たちにとって、オーガニック以外の食品を食べることは死活問題だ。それを偽って販売していたなんて、残念だよ。」

これはアメリカに限った話ではない。
日本でも化学物質過敏症はテレビなどでも取り上げられている。
有機〇〇やオーガニック〇〇の表記は儲かるから、売れるからといった安易な観点ではなく、法律で禁止されている以上に本当に必要としている人達のことを考えた上で表記を使って欲しいと切に願う。

まとめ

ここまでお読みいただきありがとうございます。
無農薬、農薬、有機など色々なことを書きましたが一言でまとめると

「もっと普段食べているものに関心持とう!」

ということだ。

アメリカ、フランスで痛感したのは、消費者の食のリテラシーの高さだ。
それは有機農産物や無農薬についての理解、規格外品の理解など多岐に渡り感じた。

あと、農家として1年以上現場で働いた経験から、生産者さんに完璧を求めるのは感情論的に難しい。(これはロジックではなく、ぼくの勝手な感想です。)

今回のポケットマルシェが行った "無農薬"という言葉について考えるプロジェクトが日本人の食のリテラシーを更に高くなるためのものになると良いな、と切に願う。



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