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いい加減キャッシュバック中毒から脱却しよう


久しぶりにプリンターを買った。機能てんこ盛りで15000円。安いっ!印刷品質も素晴らしく超満足、10年ぶりだからなおさら。実はこれ2018年モデルで、2019年モデルは25000円。危うくポチってしまうところだったけど、微妙なマイチェンなので旧モデルがお買い得であることはすぐわかる。誰よりもメーカー自身が百も承知だ。

価格下落を戻すために新製品を投入する。それだと旧製品に食われて新製品が売れないので、新製品をキャッシュバックキャンペーンで実質価格差を数千円に縮めておく。旧製品の市中在庫がなくなる頃にはキャンペーンも終了する。こんな繰り返しを、競合同士で足並み揃えるように繰り返している。他社の2019年モデルに、自社2018年モデルでは戦えないという現場の声もあるだろう。とにかく最新モデル買っておけば間違いないと考える人もいるだろう。でも、こういう旧来型の不毛なスパイラルから抜け出す勇気が必要だと思う。

例えば、10万円で月5000台売れているガジェットで、1台あたり利益が3万円の商品があったとする。売れ行きが鈍って3000台まで落ち込んでしまったので、1ヶ月間限定の1万円キャッシュバックキャンペーンをやって、販売数が5000台に戻った。粗利9千万が1億になるので1千万の利益増だ。

しかし、キャンペーンの事務局立て、WEBページ作り、告知、場合によってはチラシや店頭POP作り、さらにここ重要だが企画、提案、調整などの社内プロセスに何人も関わる隠れたコストまで考えたら、販売数が1.6倍になったと喜べない。むしろROI的には悪手。(それにしても外に払う費用だけをコストとする癖が染み付いてる人は本当に多い。会社員は会議はタダだと思ってしまう)

さらに、担当者はキャンペーンで3割売上がアップしたと得意げに報告して仕事が終わるが(実際に上がることは間違いない)、実はそこが完了ではない。そのあとの数か月の売上変化も含めてみる必要がある。大抵キャンペーン終了後に一旦落ち込む。

キャッシュバックキャンペーンは聞こえの良い値引き。値引き自体が悪いことではなく、必要であれば堂々とやればいい。恥ずかしいのは、新製品発売記念キャッシュバックキャンペーン。最初からそういうプライシングすれば良い。キャンペーンなら終わって価格が戻せるからという反論もあるだろうけど、それも一時的なこと。そもそも、税法上の問題などがあってキャンペーン応募の手続きが結構面倒で、その手間は購入した人の負担だ。

キャッシュバックは麻薬。手詰まりで苦しくなって手を出したら、なかなか止められなくなる。そんなキャンペーンをやる手間とコストを、すでに使ってくれている人たちに向けてみて欲しい。必ず成果がある。そのコツはまたの機会に。(というような話を、来月、経営者の集まりで話しすることになった)

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