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猛暑も治まり秋への準備を始めましょう

今年は梅雨明けが早く猛暑日もありました。
6月に梅雨明けし、すぐの猛暑は私たちだけでなく鶏達も苦労しました。
一気に個卵重2g程度まで下がるという農場もあったことでしょう。

その後、夏日や猛暑日が続き8月10日までの8月猛暑日になった地域のうち、
東京は5日間で昨年2日より3日多い、福岡市は9日で昨年4日より5日多い、大阪市は5日で昨年7日より2日少ないとなっています。
10日までに集計ですから、この先次第では、多くの地域は昨年を超える日数になるかもしれません。

降水量も多い地域もあります。8月だけの雨量を見ますと北日本は249ミリで昨年147ミリより多くなっているものの、それ以外の地域は乾燥気味です。
東日本は125ミリ昨年は213ミリで、沖縄奄美は47ミリ昨年は121ミリと少ない状況です。
近年の夏は大変暑い時期で、雨量も少なく降る場合は猛烈な雨という感じで、熱帯地域のような気象に感じます。

秋は、涼しく虫の声が聞こえ冬も近いという印象からだいぶ変わりつつあります。
この先の最高気温は、
西日本ではこの先10日間も最高気温は30℃程度まであり、暑くまだまだご苦労が続きそうです。
東日本では都心部は30℃程度ですが、東北では27℃前後の夏日が多く、北海道は20℃程度と秋を感じさせるようです。

そのような中、秋は食欲の秋とも言われ、私たちも美味しい新米や秋野菜、秋の果物等美味しい物が店頭に並び疲れた体を癒します。
鶏達も猛暑から解放され食欲を回復し体調管理を始めていくことでしょう。

この時期は、体重コントロールを意識する秋とも言われ、回復期だから無制限に餌を与えるという時期でもありません。
数年前は、配合飼料も安く体重コントロールできずに餌を多く食べても季節だからと言えたでしょうが、今年はそうもいきません。
できるだけ無駄をなくし、体調を管理してほしいと考えると思います。

体重をコントロールし、卵重の回復以外にも体重過多に意識を向けて健康を維持していきたいと思います。

今日は、餌の無駄を考えるというテーマでお話しします。

餌の無駄とは何でしょうか。
こぼすこと、カビが生える等で廃棄すること。
それもありますが、それは管理者の意識の問題です。

今餌は9万円台が多く、1キロあたり90円です。
10キロの餌を無駄にしたら900円捨てたことになります。
通路に餌をこぼし1日10キロ程度捨てていたら、10日で9000円、30日27000円捨てていることになります。そのような意識を持つと無駄は恐ろしいと感じるでしょう。

餌は、鶏達の生命や産卵維持のために毎日与えます。
餌を食べて明日に体重が増えていくということはありません。

よく言われます「今日の餌は2週間先の仕事をする」という言葉です。
正しくは、10日程度かそれよりも少し短いと感じますが、要は餌で何かをするときはそれくらいの視点で見なさいということです。

産卵を持続するには餌が必要です。
餌を食べ、吸収し明日のためのエネルギーに使うということですが、不足をするとどうなるのでしょうか。
多くは、数日の餌不足は影響を受けないが正解です。

強制換羽を開始して翌日卵は1個もなく鶏舎が静かになるということはありません。
断餌は強いストレスを与えますので、明日より明後日その先で強い産卵制限をかけていきますが、不足は少しづつ影響を与えます。

そして、生産量が下げ止まるかどうかを予測することも困難です。
ここが一番怖いところです。
管理責任者であれば一番の恐怖を感じるものです。

何しろ、回復の処置をしているのに、夕方の本社報告書作成にヘンデー産卵を集計すると、昨日より下がっている、又は下げ止まっているだけという先が見えない怖さです。本音は次回経営会議での審問が恐怖なのかもしれませんが。

下げる要因に影響するのは、ストレス、鶏舎環境や気温といった要因があり鶏にしかわかりません。

多くの農場で見られる、秋だから餌を与えすぎない方策の失敗例ですが、大事なのは見る力を持つ人材の有無が成否を分けているということです。
変化に気づきいち早く修正できる人材がいることで被害を無くしたり、最小限に食い止めることも可能です。

逆にどんどん食べろというところも失敗することがあります。
回復期だから鶏が欲するまで与えるべきということですが、日齢により成否を分けていることが一般的です。
昔の鶏は餌を与えて産ませるという意識が強いと感じます。
与えなければ産まない。だからじゃぶじゃぶ与えて制限給餌をしないという考え方です。
鶏が必要量を食べるので過剰にはならないという考えのもと行うのですが、今は鶏が選ぶというより好きなだけだべるというのが答えになります。
それにより過剰になり体重・個卵重増加に発展してしまうのが実情です。
鶏は制限をかけたのち、餌を与えると短時間で食べるという習性が強くなる傾向が少し前より強く感じます。
つまり我先に早く食べてしまうという習性を強く見せてしまうのです。
早い・うまい・安くはないというフレーズになるのでしょう。

ですが、産卵ピーク前やピーク差し掛かりでの回復配餌は産卵を押し上げる効果が期待できます。
多くの場合、連産するために餌を与えてエネルギーを補給するのですが暑さ等で十分で摂取できず押し上げ出来ないという事例で、食下量が上昇すると産卵も数日後から上昇していく典型的な例です。

では、300日、400日齢ではどうでしょうか。
多くは、下がってからの回復配餌は連産のためのエネルギーにはならず体重増加になりそれが個卵重の増加に至ると考えると思います。
ですが、鶏の性能が変わり100日連産が基本になりつつある現在では、400日令程度までの回復見込み放棄は少しもったいないと感じます。

一般的に夏減少した産卵個数は秋に回復するといわれます。
これは、産卵する能力が衰えているということではないことが分かります。
夏で産むべき卵胞がまだ残っているわけであり、押し上げることで生産が回復するわけです。

一昔前の鶏と違い、鶏の内部を見ますと、卵胞が退化している鶏は多くないように感じます。
逆に農場内の問題(農場内の鶏病や強すぎる制限管理等)により卵胞が少ない又はないという状況が見られますので、これに拍車がかかるというのが私自身の感想です。

少し前の常識をそのまま当てはめることは今の性能からするともったいないと感じます。
ですが、400日を超える場合は個卵重の増加に至ることも散見されますので、やはり適正卵重を求める場合には必要以上のものを与えないという選択肢もあります。
多くは、一昔前と比べ個卵重が5g7g増えていくという事例は見なくなりました。(個卵重60gまで減少して配餌したら冬に67gになったという事例ですが)
せいぜい5g程度ではないでしょうか。

これは皆さんの飼養管理によるものもあるでしょうが、性能から以前に比べ上昇度が低くなったことが多いかもしれません。
これも昔の基準で物を見てしまうと7gも上昇したら2Lが多く混ざり採算が合わないという意識が働いてしまうのかもしれません。

ですが、今の鶏はジュリアライトであればやはり60~63gの範囲で収まり、ジュリアでも61~65g程度が多くみられ冬でも大きく上昇するという感じではありません。
どちらもライトはMサイズ中心の生産、ジュリアもLが多い生産といえます。
目的により鶏種を選び鶏舎性能を駆使して上手な管理があれば昔のようにライトでも67g、ジュリアで70gという10年、15年前の水準にはなりません。

もし、今もそうなると感じるならば、鶏舎状況(温度、換気、配餌)を見てください。どこかに課題があるかもしれません。

特に鶏舎温度と摂取量は関連性がありますから、オープン鶏舎であれば、隙間風対策を意識すると1羽1gの餌削減や温度の2℃上昇もできるかもしれません。

9月までは配合飼料も高く何らかの対策を講じたいところです。
10月以降はまだよく先行きは見えませんが、配合飼料の原料には追い風は吹いていますが仕入れ現金(通貨)が変動激しく見通しにくい現状です。

ただ一つ言えることは、昔の安い餌代の時代と違い漠然とした管理は生産量を下げるということは確かです。

生産量を下げるということは収入を下げます。
それに応じて出費の減少になることはありません。

そうなるときは、鶏が食べないとき(多くは斃死したとき、又は廃鶏して空舎のとき)になります。その時は収入もなく負の連鎖になっているだけです。

ある養鶏家は言います。
コストを削減するなら鶏を入れないに限ると。

ですが、それは出費がないだけのメリットで収入もないというデメリットもあります。
それがメリットなのだというのであれば、生産活動をしないことが最もコストダウンになります。
収入も出費もなくプラマイゼロになるからです。

ですが、意味はありません。

大事なのは、無駄をなくすという視点とその実行です。
そのためには、無駄をなくすという意気込みと無くすための方法と、今の飼養管理の見直しです。

食欲の秋だから、餌を削減するは昔の言葉になるかもしれません。

今は、鶏達のどのステージ(生産上昇期・安定期・下降期)にいて餌で押し上げるのか、そうでないのか。
そうでないのであれば、どこに視点を持って管理していくのか。
そうご自身に問うてみてください。

皆さんはプロです。
答えは経験を知っている心に中にあるのです。

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