飼料価格の高騰とヒナ価格の上昇が始まっています

全農は配合飼料価格を7月より9月までの価格を現行と比べ1トン当たり11400円の値上げとすることを発表しました。
大きな要因として、コーン相場が現行期と比べ1ブッシェル1ドルの上昇がみられ、為替も急激な円安に振れました。

3月にはおよそ115円台から6月の現在値135円まで進み円安は20数年ぶりの安値が更新されており、米国と日本との金利差が広がり、金利のない円を売り、金利が見込めるドルを買うという流れが続いていますし、投機筋が円売りをして更なる円安を期待しているとも言い為替の動きが読みずらい状況が続いています。

ウクライナ産のコーンが輸出されるという観測から、一時的でしたがコーン価格が低下しました。7.3ドル程度まで低下したものの、6月16日には7.9ドルと反発し、現在は7.0ドルと乱高下しています。
要因には黒海からの船便での輸送が困難を極めており、陸路を使い輸出を試みると報じられると買いが進み、また売られてと安定していません。
この先は、主要産地の生育状況により需要との駆け引きが続き相場は高く推移する可能性もあり安心できない状況です。

配合飼料価格の高騰という話題が多く聞かれますが、養鶏農場の皆さんにはそれ以外にも不安要素があると思います。

燃料費の値上げもそうです。
育雛期は鶏の体温を維持させるために加温しますから、燃料代がかかります。
暖房燃料に軽油を使用する場合、2021年1月の全国平均軽油価格は119.4円でしたが、2022年1月で150.0円、7月5日時点で153.6円と右肩上がりとなります。
軽油は輸送にも活用されますので、農場以外にも影響を与えます。
例えば、餌の配送も燃料費が上昇し価格転嫁が進んでいると思います。
多くは、地域の餌工場から陸送し農場へ運ばれると思います。
その他にも大びなや中びなといったヒナを輸送して購入されるところもあるでしょう。

現在の経済情勢は円安ともいいますが、よく見ますと燃料の原料になる原油価格の上昇から外貨建てで支払うため為替による影響を受けてこの値段になっているということです。
燃料価格は原料となる原油を将来の買い入れ価格を決めて仕入れるため原油相場で値段を決めています。
7月限原油相場は116.9ドルと高い状況です。
8月限は現在値104.7ドルと需要の減少を見込む先物取引が継続していますが期限が近くなると需要と比較して大きく動く可能性もあり安いともいえません。

このような影響もあり、大びな、中びな販売価格の見直しが聞かれています。
ある大手育成業者は、7月より1羽35円の値上げを行うと需要家に通知しています。

現在の配合飼料価格上昇や移動コストを考えるとこの値段ではまだ採算が合いませんが、急激な値上げを避けているようにも見えます。

実際その先10月に35円、年始に25円と合計100円程度の値上げを段階的に進めていくようです。

今回の配合飼料価格の更なる高騰から来年早々はもう少し値上げになると考えられ、農場経営に大きく影響を与えることでしょう。

初生ヒナから仕入れる農場では、ふ化の過程での電力等の費用や配送コストが上昇していますので、この先数円程度の値上げ通知があるかもしれません。

なお、ヒナメーカーが種鶏を仕入れる場合の価格変更は今のところ大きな話題はありませんが、流通過程での上昇から最低でも輸送コスト分は負担しなければならないかもしれません。

需要家である農場は価格交渉を行うでしょうが、ヒナ販売先も価格転嫁を目指しますので難しいかもしれません。
特に1000羽、3000羽程度の取引では、運送コストからみても合いませんから譲歩は必要でしょう。

1万、5万羽程度まであれば上昇幅は低減できると思いますが、購入頻度を確約してみると仕入れまでの逆算めどが立ちますから相手としても譲歩できる余地があります。

くれぐれも無理な交渉はしないほうが得策です。
無理を強いると仕入れ数が少ない場合コスト吸収ができないことから、今回の交渉で契約終了まで発展してしまうこともあります。
昔と違い、仕入れを渋ることが交渉材料にはなりません。
今は仕入れ状況で優良顧客か一般顧客か、ただの付き合い程度かと仕訳されています。

ですから新規先を見つけても、その先で同じことをし最終的にB級ヒナの購入まで落ちぶれ、安いから斃死が多い、ばらつきが大きいから生産量が少ないという安かろう悪かろう農場になっていきます。

今は、需要家だけが力関係優位になっているわけではありません。

需要家でも大口が優遇されていて、それ以外は一般顧客でしかないのです。
更に1000羽、3000羽では付き合い客程度で切るならどうぞというスタンスになっているはずです。(注文をもらうので用意するだけ程度客)
この点を踏まえて恐らく1羽100円程度の値上げは飼料コストからみても避けられません。
もしかするとこれで収まるとも見えません。

1000羽仕入れすれば10万円上昇になりますが、幼雛餌付けから大びなの仕上がりまで餌は4キロかそれ以上ともいわれます。
幼雛の餌はメーカーによりますが、コーンは全体の6割、大豆かす等油脂は3割仕様の配合物で構成されているでしょう。
育成後半の餌は、コーンが6.5割、大豆かすやコメかす等油脂に3割、その他カルシウム0.1割とその他添加物になる構成が多いと感じます。
1年前より飼料価格は1.5倍の上昇といわれます、これをどこかで吸収しなければなりませんから避けることはできません。

鶏卵相場ですが、収入面の鶏卵相場は、7月は例年より早い梅雨明けから気温上昇とともに消費が減退しやすくなり、下落基調になると思われますが、比較的堅調に推移しています。
西日本地域は、すでにこの夏特有のLサイズの上昇と、それ以下クラスの下落が発生しています。

現在210円(東京M規準値)で月平均値は213円となっています。
例年月平均値は6円以上の減少が多いことから、7月の月平均208円(月末の相場値200円)となると予想しています。
気温上昇次第ではさらに下落し8月も続落とも考えられます。
すでに全国で夏日、猛暑日と報道され消費減退に拍車をかけている地域もあります。
これが全国や主要消費地関東でも見られますと、値下がりに動き注意が必要です。

このことから採算割れを起こす農場が多くなると思われます。
現状からみても採算ラインよりわずかに高いというところもありましょうが、生産量が少ないところほど赤字に転落しているようにも見えます。

北海道を除き、昨年の鳥インフルエンザによる影響はだいぶ解消されており昨年のような供給不安は生じにくいともいえます。
ですが、消費は昨年と違い観光需要が増え始めていくと予想されます。
牛肉等は、観光需要の買いが見られることから消費は堅調に動くと予想できます。

これにより本年は昨年以上の鶏卵需要があると思われますが、これも消費者の懐事情に大きく左右されます。
旅行割も始まる見込みでしたが、新型コロナウイルスの感染が再拡大している傾向がみられることで、夏の適用は見送りになる可能性が高まっています。
消費者が動くことを期待したいところですが、感染状況や旅行割の適用可否、収入面と相談しての行動になります。
この先、宿泊に関する意識調査等が発表されますので、次回はもう少し深堀できると思います。

まずは、生産量の改善とコストバランスの確認、そして導入時期を見直しされる方は、それまでの飼養計画の策定も必要です。
例年夏は廃鶏依頼が全国的に増える傾向があります。
ですが昨年は鳥インフルエンザの影響もありましたし、相場高(7月月平均245円)から遅らせる農場も多くみられました。
7月相場はおそらく200円前後の値になるとみており、例年以上の高相場は続きます。
この中で、廃鶏に動くかどうかは微妙でしょう。

8月は更なる下落が予想され採算から見てロット調整を行う農場が発生するでしょう。
廃鶏予約が取りにくくなると思われます。
ロット別採算は早めに行い必要であれば手配をしておくとよいでしょう。

大びなが秋に編入できるようご準備を進めていただき、例年通りの相場上昇が秋にはあるとみられます。
昨年は200円以上で推移しましたが、実態は12月に向けて下げていくだけでした。
今年は2017年の秋相場のような展開で進んでいくのではないかとみていますが、新型コロナウイルス状況で行動制限が発出されると大きく変わります。
経済制約を設けない傾向ではありますが、感染数や訪日観光客次第で大きく変わります。
年平均額は予測変更なく200円程度の相場になるとみています。

皆さんの農場が安定した経営ができるよう、養鶏技術や最新情報のご提供をいたします。
秋に向けてできることを皆さんと従業員の皆様、そして弊所アドバイザーが一丸になり頑張ってまいりましょう。

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