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人材確保とは何ですか 岡目八目の意識

養鶏の仕事をするうえで必要な人材を確保するにはと伺うと、多くの方は作業員を潤沢に確保すると言います。

農場には作業員がいてそれを監督する立場にある管理者がいます。
これは例外はなく、どの農場にも必要になる配置です。

多くはこの作業をする作業員がいつも不足しており、とりあえず頭数を集めることに躍起になっているという感じです。
日本人であれば良いが、外国人技能実習生も確保数上限までいかに集めるのかという流れではないでしょうか。

そして監督立場の管理者は少し前までは経営者がこれを担う形でしたが、高齢化や複数農場を運営すると目が行き届きにくいことから、これを代行するため作業員から選抜しての確保になるはずです。

これも例外はなく、経営者から代行するときの多くは作業員から年数が長い、経営者と馬が合うといった基準で選抜されるような感じです。

さて、最近は技能水準が低いから家畜への接し方や、生産量の低下による課題、斃死による被害、寄生虫の発生といった少し前とは異なる課題に直面する農場も見るようになりました。

弊所を開設した目的も「時代は人が育てる畜産物より、より自動化され省力化した畜産物を作る時代になっているからこそ基本を忘れたことによる弊害を解決させよう」という目的がありました。

近年はその目的の通りの課題を見る農場が散見され口コミからご相談いただくというその先の予測がある程度的中しているという流れに見えます。

ですが、多くは課題を課題として見ることが出来ず、やれ鶏が悪い、設備が劣化しておりやむを得ない、人がいないから解決できないといった違う視点で解決を試みる農場も意外と多く、多くはいまだ解決までの道筋が遠いという感じにも見えます。

岡目八目という言葉があります。

これは囲碁からくる言葉ですが、当事者より第三者の方が情勢を正しく理解でき判断できるという意味でよく使われます。打ち手よりも先を見る冷静さがあるということです。
囲碁では、打ち手より8手先まで読むことが出来るという意味でつかわれるようです。

コンサルタントはここが肝になるといえます。

つまり、農場内での課題の多くは農場内の方々で解決を試みるのですが、具体的にどうするのかという視点がまだ定まらないため、時間がかかり「いつしか家畜や、時間や、人が原因」と幕引きを図り解決を断念してしまうことが多い理由の一つになると感じます。

本当はここに経験があるとされる管理者の判断があれば軌道修正もできるのだと思うのですが、最近の管理者への移管には技術や観察眼を基準にしている農場を見る機会はほとんどありません。

先ほどのように勤務歴が長いから、経営者と馬が合うからだけで選択されていることがほとんどのように見えます。

そのため、管理者も経験の浅い作業員と何ら変わらないことで、岡目八目的な発想もなく、ただ同じ結果だけを導き残念になるというのが実情に見えます。

そして、鶏卵価格が高いときほどこの失敗を、「経験を持たせるためには挑戦させるために有意義だった」といい、失敗をそれだけしか評価せず、なぜか満足してしまうという点です。

でも鶏卵相場が低いときは目くじらを立てて、どうしてなのかと要因を探しますが、先ほどのように8手先まで読むことが出来ず打ち手と同じしか発想力がないので、変わらないというのが長らく畜産を見てきたものの結論になると言えます。

そして解決できないから人を雇用して補助をしてもらうという流れに至る農場も散見されます。

以前は1名で作業ができ解決できたのに、解決ができないのは人に余裕がないと誤った判断をして人を雇用します。

一昔の仕事のシェアと呼ばれるもので、1名の作業を0.7まで引き下げて2名で1.4人分の仕事をすれば余裕が生まれ解決に目をむくという発想です。

これは本当に意味がなく、0.7とは0.7人分の仕事しかしない人材を2名確保しただけという現実に変わりがないのです。
では残り0.3で課題を見つけるのかと言えば、ほとんどは作業効率を下げて0.3という時間を食いつぶし作業性が楽になるという目的とは違う使い方をしてしまうのです。

経営者は優れた視野があるので経営能力があるのですが、他人や馬が合う人材も同じ視野があると誤認しがちです。

そのようなことはまずなく、経営者は農場を発展させるための視野を持ち課題を見つけ解決を導くと思いますが、馬が合うだけの人材は毎月の給与を1円でも多くもらうためにどうするのか、「そうですね!今そう考えていました。いやー勉強になります」といった胡麻をするではないですが、歩調を合わせることに意識を持ちます。

つまり視点が違うということまで気づかないのが、失敗の出発点になるのですが多くは気づくことはなく、人は増えていき何か変わるかと言うと人件費が高くなるだけという農場もあるのです。

最近ある養鶏団体は1キロ300円の相場値でなければ採算が合わないという陳情を農水にしたと記事にありました。
農水大臣も飼料価格の高騰からやむを得ないという理解を示したというものですが、本当の課題は何かという視野が欠けていると感じます。

確かに配合飼料価格は昨年が最高点に至りとてもご苦労されました。
1トン10万円といわれその前の年より2倍、2.5倍と高騰しています。

でも冷静考えると、1トン10万円でも補助があり実勢価格は9万円、今は8万円台前半まで下がります。

1キロ当たりの餌代は100円です。
飼養要求率は2.0ですから1キロの卵を作るための餌代は200円です。(今は1.8が普通で、2.1とか数値が大きくなることはありません)
あまりに大きい数値は何か改善点があると見えますが、そこに着目されていますでしょうか。

そして1パックは1キロで販売していないという点です。

多くの卵は重さミックス卵で販売します。Lサイズ規格でも
多くは1パックを最大650g程度で出荷しているはずです。
小玉ミックスはもっと少ないはずです。
では、1パックの餌代は200円の0.65になります。つまり130円程度です。
これに包装資材、エネルギー価格、設備代地代、税といった様々な諸費用が乗ります。

電気代はこの夏ほど高い物はないでしょう。
月数十万円というのも珍しいものではありません。
30日稼働で1日1万円とも試算できるでしょう。

そして人件費となりますが、これは農場によりさまざまになります。
でも今日の話になりますが、餌代の次にかかるコストはエネルギー価格、人件費となります。

このうち人件費に焦点を当てる農場は多くはありません。
それは削減するということは給与といった雇用者の収入を悪化させるから手を付けにくいという点です。

人件費を考えると1名のコストを考えるとどうでしょうか。
日本人を税込み25万円を支払うとします。
隔週2日勤務をさせるので1日当たりは10869.56円になります。
当然複数雇用しますので、10名であれば10万円となります。

必要数は農場によりますが、適正数は存在します。
そこに注目した雇用があればよいのですが、今日の話になりますが過剰になったり均衡がとれない雇用はこの人件費を圧迫させます。

今の時代安いとされた外国人技能実習生も安いとは言えなくなっています。最低時給で計算するからといっても今や最低930円程度多くはそれ以上になるはずです。

仮に1時間980円としても8時間であれば1日7840円は必要です。
月では181880円と監理団体への支払い数万円で20万円を超えるということも珍しいことではありません。
複数雇用すればこの数倍と計算できます。

そして技能実習生の在り方も議論されており、安いから必要数確保できる要員という程度の認識ではこの先最低時給は1000円と上昇していくことになり負担は増すことになります。

では、効率よく農場を動かすにはどうするのかという点になります。

今日の話になりますが人材確保とは何ですがという意識で見ると、先ほどのような農場では恐らく何人雇用しても1名の作業効率を下げるだけで、0.7が0.5に人によっては0.3にということにもなりかねません。

筆者の知る農場では明らかに0.5人材があちらこちらにいて慢性的に人が足りないという残念な農場もあります。

何を目的に人を雇用しているのかわからないという現場の声も聞きます。
でも経営者には進言しません。
それは自分自身の作業性をあげることになるからです。

それは馬が合う人材であっても同じです。
自分に不利になることは言いません。
そして残念な農場ほど、進言する人材を排除したがるという特徴を持ちます。

そして岡目八目の意識がないことで、では人を雇用しよういずれ農場を大きくするからという未来予想図に期待した人の雇用をするという悪循環に至ります。
試算するとゾッとする月のコストがわかるはずです。

今は鶏卵相場は高く支払いもできるのでしょうが、300円を切ると少し厳しいという視点なのかもしれません。

人は自身の立場で話をして正当化を求めます。

いけないことではなく、当然の話なのかもしれませんが、問題は根本には餌代も大変だが、本音に手を付けなければならない課題には話をしないということです。

本音に実情を加えて話すので、業界は皆そうであるという認識を持たせてしまうということです。
でも餌代は同じ大変でもそれ以外のコストは農場により大きく違うはずです。

実際伺う農場では今の鶏卵相場では大変という方もいますが、一部はありがたい時期が続いており衛生対策費を増やしてこの秋を迎えたいという農場もあるのです。

つまり赤字で大変というわけではなく、やっと昨年の急激な餌代上昇による赤字を補うことができ、やっと次への一手を打つことが出来るという農場も存在するのです。

そして鶏卵相場は売れ行きと供給のバランスで決まるということです。
供給が整い始めた夏だからこそ、需要の低下で鶏卵相場が下がり始め、鶏卵規準値は現在325円まで下がりこの先も季節要因で下がりますから懸念するのかもしれません。

恐らく300円を切っても200円、150円といった例年相場にはなりませんが、平穏な年末となれば右肩下がりの相場展開もあり年末に260円といったこともあり得ます。

人を雇用するということは、その人に最大限の能力を持たせて働いてもらうという意識がないと、1作業に1名では難しいから2名入れる程度のパズル感覚では農場自身も育ちません。

人が農場にいるということは、育てる仕事、課題を見つけ解決できる仕事がないとうまくはいきません。
それを見つけるのは岡目八目という意識が必要です。
そして経営者の意識です。
経営者自身と同等の人材はまず見つからないという現実と、農場は経営者以上の考えを持つ組織にはならないということです。
つまり経営者の意識が低ければ人材もそれより低く、農場も低くなり農場間の格差は大きくなります。

同じ視点で見れば同じ答えしかありません。
だから判断を間違え後々まで苦労するということもあります。

採用するには、経営者皆さんの能力と同じくらいの人材がいるというわけではありません。
そして馬が合うとは同じ高度の人材になっているとは限りません。

今皆さんの農場では管理者と作業員との違いを説明できるでしょうか。
給与が違うではあまりにもお粗末です。
そんな残念な農場もあります。

そしてその農場ほど人を欲しがり、足りないから日本人、外国人、そして最近ブームの派遣労働者とあらゆる人材確保に勤しみます。

そして「こんな人材いますよいかがですか」と紹介を受けるとすぐに採用という採用意識も薄れていく人もいます。

人材は皆さん経営者より優れる人はまずいません。
大事なのはその何割でも育てるという教育と知識が必須になります。
足りないからA作業に1名、B作業に1名とシェアしてしまうのです。

冷静になれば1名で用足りるのです。

それでも足りないから派遣労働者を入れてますます1作業のパイを奪い合います。そして暇になるので作業速度を下げて1日を過ごします。

人件費が圧迫し300円でないと農場維持ができないとなれば、このあり得ない相場が未来続くことに期待を寄せてしまいます。

養鶏は生産過剰になりやすい構造を持つ産業です。
だから減羽してくださいと業界内で通達が流れるのです。
今は過剰の状況から鳥インフルエンザの被害で減羽していてからの回復です。

つまり業界の本来の姿に戻りだしているのです。

それに300円は難しいことでしょう。
通常であれば年間平均でも300円は難しいのに通年300円はどうでしょうか。

総経済情勢や業界図から見てみると難しいからこそ皆さんの農場での運営はいかに無駄なくそして効率よく生産活動することが必要です。

そのうち増羽するという楽観図や未来予想図は本当に具現化できるのか、業界の本来の姿から見て本当に可能なのか。
販路は?そのためのコストに耐える農場なのか?

課題が見えてきませんか。

人は募集すれば来ます。
来るということは明日からコストが増えるということです。
そのコストは今は払えるけど、来年の通常相場では難しいでは話になりません。
では岡目八目の意識ではどのような考えになりますか?
そう問うことで違う視野が広がるはずです。

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