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アンナチュラル倉庫

アンナチュラル
2018年1月期、TBS金曜ドラマにて放送したオリジナルドラマ。UDIラボ=不自然死究明研究所(Unnatural Death Investigation Laboratory)を舞台とした法医学ミステリー。全10話。第44回 放送文化基金賞テレビドラマ最優秀賞・脚本賞、第7回 市川森一脚本賞、コンフィデンスアワード、ドラマアカデミーほか受賞。
公式サイト 公式Twitter 非公式ウィキ  

地上波の再放送は時間の都合上、大事なシーンまでカットされてしまうのが常なので、ぜひオリジナルもご覧ください。

配信
U-NEXTや各種配信サイトで時期によって配信したりしなかったりしています。(※ 8話ディレクターズカット版はBOXのみの特典です。)

DVD&Blu-ray BOX特典

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新井P渾身の特典盛り盛りBOXです。最終話のオーディオコメンタリーは、松重さんの役者視点からの演技話が興味深いのと、野木が塚原演出について熱く語っていたりします。特典映像もぶっちゃけトークやら何やら面白いので見て損はありません。2話のトラック水没シーンのメイキングもあるよ。NG集が無いのは、探してみたらNG自体ほとんどなかったからだそうです。みんなすごい。ブックレットの nogi note(新井P命名)では、各話をどういう発想で作っていったのか、どの話が一番お金がかかったのか、5話の雪は本物か……などなど入る限りの裏話を書きました。最終ページには公式ツイッターにあげていた豊富なオフショットから抜粋した写真を細々と掲載。こちらも新井Pチョイス。TBS ishopで買うとやや高いけれど、UDIマグカップが付いているのはここだけ。

放送時のTwitterモーメント(ネタバレあり)

知らなくていい豆知識まとめは、主に法医学の小咄です。予告ツイまとめは、毎週放送前に投下していた台詞による寸劇をフォロワーさんが漫画化してくれたもの。

※元のリンクが切れてしまったので下記リンクからご覧ください

https://twitter.com/i/events/971412502624940032

※元のリンクが切れてしまったので下記リンクからご覧ください

https://twitter.com/i/events/969398453448015872

アンナチュラルは2018年1月期の放送ですが、執筆と撮影はすべて2017年内に終えていたためつぶやく余裕があったんですねー。A-KAさんの感想絵のほか、フラジャイルの恵三朗先生もファンアートを書いてくださりプロの筆致が美しい。#アンナチュラルイラスト企画 のアンナチュラル×Lemon絵も素敵な作品ばかりでいつかまとめたい。その中で 楠桂先生を発見した時は腰抜かしそうになりました(妖魔が大好き)。このイラスト企画とは、ツイッター上にファンアートが溢れたのを受けて公式アカウントが呼びかけたものです。Twitterはこういうところが楽しいですね。 ちなみに2019年12月31日現在の私のツイッターTOP画は、前述のA-KAさんが書いてくれた アンナチュラル × 獣になれない私たち コラボアートです。
(追記:TOP画は変えてしまったので置いておきます)



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■脚本など
ノベライズについてよく聞かれますが、書く時間がないので出さない主義です。シナリオブックは出せる時に出せば良かったと後になって少々後悔しましたが、現在のところ出ていません。代わりにBOX特典のライナーノートをお楽しみください。第一話と最終話は月刊ドラマのバックナンバーで読めます。

■雑記
トップ画像にしているキービジュアル、隠し絵に気づいていない人が意外といたようなので改めて書いておくと骸骨になっている。いま見ると中堂さんの白衣姿が新鮮。劇中で使ったUDIオリジナルの白衣やつなぎは凝ったデザインで、さとみちゃんの意見も盛り込んで作られた。放送当時、白衣とつなぎのレプリカが販売され、一万越えの価格だったのだが飛ぶように売れて驚いた。私にもくれと言ったら受注生産だから無理と言われ、TBSショップでポチった。白衣は白と、つなぎは紺。ドラマ内でもみんなそれぞれ、日によって紺だったり白だったりを着ているが、神倉所長は最後まで小豆色ジャンパーだけだった。松重さんは違う色も着たかったらしいが「新井さんがねー、他の色着せてくれないの」とぼやいていた。完成披露試写会のとき、中堂@井浦さんはつなぎと白衣の重ね着を命じられ、登壇前に「上脱いじゃダメ?」と聞いていたが「ダメです」と新井Pに一刀両断されていた。作品とキャラクターのイメージを死守する女・新井順子の鉄壁ガードつよい。

多くのインタビューで答えているが、元は「女主人公の法医学ドラマ。あとは好きにつくっていい」とお題をもらったところからはじまりました。法医学ドラマといえば20年前に『きらきらひかる』という金字塔があり、それから定期的に何作もつくられている。今さら新しいものがつくれるのか?と疑問を口にすると、編成(当時)の磯山さんは軽い調子で「野木さんがつくれば野木さんにしか書けないものになるってーフフフ」と微笑んだ。なんだそれ!言う方は簡単だな!だが以前から一緒に仕事をしたかった『Nのために』チーム(塚原Dと新井P)とやらせてくれるという人参を鼻先にぶら下げられ、困難な道ではあるが走ってみるか、とトライしたのだった。

企画書をつくり始めた当初は二人が『リバース』の撮影と放送真っ最中で、ひとりでどうすんべと思いながらもやるしかないのでとにかくいろいろ調べ、法医学の現状について勉強するなかで、舞台設定を考えたりキャラクターを作ったり全体構成を考えたり。アンナチュラルというタイトルもそのころ見つけた論文にあった「Unnatural death」という言葉から発想したもの。通常、監察医は事件性のある遺体を解剖せず、かといって事件性のある遺体を扱う法医学教室は大学機関のため一つの案件に深入りすることはない。そこでUDIラボという架空の研究所を設定し、司法解剖・調査法解剖・依頼解剖の全てを扱うことにした。日本を舞台にした法医学もので、リアリティラインを保ちつつ行動の自由度を上げるにはこれしかないと考えた。このUDIラボの発想は実際にあった内閣府の構想(2012年の死因究明等推進会議)を元にしており、過去のインタビューでもそのへんのことを語っているので興味がある方は このへんとかこのへん をどうぞ。ちなみに監察医というのは本来、監察医務院で働く医師だけを指す呼称なので、本作では「法医解剖医」という呼称を採用している。

やがて塚原新井が合流し、サブPとしてケイゾクやSPEC(両方大好き)の植田Pも参加してくれ、わーいとなりながら、相談しながら、ケンカしながら、助けられながら、最終話まで書くことができました。植田さんはとても個性的なプロデューサーですがとてもいい人で今回はサブPに徹してくれ、やかましい女三人であーだこーだと散々言い合いました。対等な関係で言い合えることは幸せなことです。雑多な言い合いの中で落とし所を見出して、いかに主軸を見失わずに決定稿までもっていくかも脚本家の仕事だったりします(※チームによっても違う。Pがすべて決めてしまうチームも世の中には存在する)。あとはとにかく調べ物が多く、はじめの1話を書くだけでもあらゆることを調べねばならず、この調子で撮影期間内に10話まで書き終わるのか?間に合う?私大丈夫??と不安になったりしたものの、途中からは助監督さんもP陣も調べ物を手伝ってくれてありがたかった。監修の先生たちにも大変お世話になりました。この頃は法医学の教科書6冊くらいを常に持ち歩いており、よく読むと同じ死因に関してもそれぞれ書いてある事例が違うので、その違いもフックやミスリードを思いつくヒントになりました。

冒頭に出る「アンナチュラる」は塚原Dのアイデア。他にも随所気の利いた演出がほどこされ、編集や音楽の使い方に至るまで塚原ワールド全開。塚原演出を端的にいうと『スタイリッシュかつエモい』なのだが、一瞬の感情を切り取ったり、空間のリアリティをつくるのも秀逸。情報量が多いながらもスピーディに進む展開を少しでもわかりやすく見せるべく、ディレクター三人ともがたくさんの演出的工夫をしてくれた。石原のさとみちゃんをはじめとするキャスト陣はゲストに至るまで素晴らしいお芝居でしたね。このシーンのこの芝居が好きだと一つ一つ語りたいくらいだが、言い始めると永遠に終わらないし見ればわかる。撮影と照明も美しく、完パケを見て毎回「わー!みんなすごい!」と一視聴者として見てしまいました。米津さんのLemonはアンナチュラルより有名になってしまったので私が語るまでもない。最終回前に描いてくれた絵。

得田さんの劇伴も素晴らしく、アンナチュラル オリジナル・サウンドトラックを聴きながら街を歩くと日常がドラマチックになるのでおすすめ。本作ではトラックを池に落としたり無茶な撮影にトライしてもらいスタッフのみなさんも大変でしたねすみませんありがとう。チーム塚原の恐ろしいところは、普通は「いやこれ無謀でしょドラマなんだし予算ないんだし」と止められるようなシーンでも決して「できない」とは言わず、「なにかしらできるはず」「方法を考える」と言って本当に成立させてしまうところ。脚本は設計図でしかなく、その上に建つ家は演出と役者によって形づくられるものです。

余談ですがさとみちゃんのミコト、あれほぼすっぴんなんですよ信じられますか。毎回メイクはコンシーラーでちょっと隠すくらいで5分だって。ご本人の写真集&ビジュアルブック encourage特別版 にはドラマごとのメイクなども載っていて面白い。この特別版の冊子に各界人からのコメントも載っていて私も書いたのだが、井浦さんからのコメントがズバッと的を射た簡潔さで笑った。

せっかくなので当時書いた企画書の冒頭4ページも置いておきます。いつだったか見たいとリプをもらっていた。もう2年経ったしいいだろう。かつてWordオペレーターをしていたせいで関係図をオートシェイプでちまちま作図してしまうのはいつものこと。タイトルに付いているキャッチコピー『死因の見えないこの国で、絶望してる暇はない。』は新井Pに「むずかしい。わからない」と却下され(笑)実際の宣伝では『不自然な死は許さない。』に変更された。幻のコピーになったものの、前述のサントラで得田さんが2曲目のタイトルにしてくれて密かに喜んだ。

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お気づきでしょうか。企画書では三澄ミコトが「南ミコト」になっている!「ミコト」という名前が先にあり、同じ音で始まる名字がいいなと「南」とつけたものの、どうしてもタッチの南ちゃんあるいはロンバケ南のイメージが強いので腑に落ちず、人物設定を更新するたびに名字を変え、脚本を書き始めるぎりぎりに「三澄」に落ち着いたのでした。今ではもう「三澄ミコト」しかありえないので変な感じ。改めて読むと、変わっている箇所はあるものの大体の設定はこの段階で出揃ってますね。この他に各人物の長い履歴書も書きましたが、あくまでスタッフの共有用で外に出すためには書いていないので恥ずかしくて出せない。企画書で勘弁してください。

もう一つ。変更点というか、企画書を書いた時点では存在しなかった人がいる。そう、ムーミン大好き坂本さんです。オーディオコメンタリーでも話してますが、いざ第一話の初稿を書き始め、書いているうちに「なんだか人物が足りないな」と急遽投入したのだった。そのころメインキャストは固まっていたので、急な新キャラに「誰?いつ増えた?この人レギュラー?どんなイメージ?」と戸惑うP陣。ちょうど数日前に塚原Dが唐突に「私、飯尾さんって役者としてイイと思うんだよね」と話していたことを思い出し、「ここで飯尾さんどうよ」と言ってみたのでした。今では坂本さんがいないアンナチュラルは考えられない。大抵の創作物は、計画的な構築と突発的な閃きでできている。

何が計画で何が閃きだったのか、どこが演出でどれが誰のアイデアだったのか。さらなるお話はDVD&Blu-ray BOXのオーディオコメンタリーや特典冊子でお楽しみください。そちらではテーマに関わるもう少し真面目な話も書いています。最後はダイレクトマーケティングかよクソが!(by.中堂系)

この作品は多くの人に見ていただき、長らく尊敬していた監督にお会いできたり、名探偵図鑑にミコトが登場したり、新しい出会いももらいました。ミステリ系の人が考察記事というか分析記事を書いてくれていたのもあとで教えてもらって読んで、面白かった…というか脚本の作りをあまりにも細かく理解してくれていたので驚嘆しました(このへんとかこのへんとか。バレてるわ〜と笑いながら読んだ。「中堂さん、肉じゃがで落ちないで!」にも爆笑)。アンナチュラルは『法医学ミステリー』と銘打ってはいたものの、いわゆる謎解きドラマとは違う方向を目指して書いており、正直なところミステリ層に受け入れられると思っていなかったので嬉しかったです。早いもので放送から2年、企画から3年が経ってしまいました。このところエンタメから少し離れていたのでそろそろエンタメ書かないとなーと思っています。アンナチュラルが好きな皆さまのお眼鏡に叶うかはわかりませんが、今しばらくお待ちくださいませ。

2/13追記
アンナチュラルスタッフによる新ドラマ発表されました!
TBS金曜ドラマ『MIU404』ご期待ください!