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LOVE & SPACE vol.6 Knights


side~晃牙~

「のう、わんこ。明日の夜なんじゃが、時間あるかのう?」
「ああん?朔間先輩から俺様を誘うなんて、珍しいじゃねぇか。レオンの散歩があるけど、それだけだぜ、どうしたんだよ。」
「…実はのう。明日の夜、凛月の所属してるKnightsが校外でライブをするそうなんじゃが、その、知り合いからチケットを譲ってもらってのう。丁度2枚あるもんじゃから、わんこは凛月とも同じクラスのようじゃし…一緒にいかんかや?」
「あん?朔間先輩ならリッチーと兄弟なんだしよ、UNDEADでもあんだから、関係者で入れるだろ?なんでわざわざチケットを譲ってもらったんだよ。」
「…じゃって…。絶対凛月に断られるんじゃもん!来ないで気持ち悪いって言われちゃうんじゃもん…!我輩、最近凛月が、一生懸命何かに取り組んでいるのが、嬉しくての。日本にいる間に一度、その勇姿を見てみたいんじゃよ…ぐすん。」
「あーわかったわかった!…俺も、Knightsはちょっと気になってたんだよ。仕方ねぇからついてってやんよ、…だから、嘘泣きやめろ!」
「わんこ〜!楽しみじゃのう〜♪」



「お、わんこ。もう来てたのかや?まだ時間より早いと思ったんじゃが。」
「待たせるよりは待ったほうがいいだろうがよ。…朔間先輩との待ち合わせだしよ。それで場所は、そこのライブハウスであってんのか?」
「…どうやらそのようじゃのう。ライブハウスと言っても、少し大きめのホールのような場所じゃな。もうこんなに、Knightsのファンが集まっておるのう。」
「そうみてぇだな。この前校内で、ジャッジメントだか、そんなようなライブをして目立ってたしな。」
「月永くんが帰還したようじゃからのう。ファンも待ち望んでいるのじゃろう。はぁ…なんだか、我輩が緊張してきちゃったぞい。」
「なんで朔間先輩が緊張すんだよ。…そろそろ開場だな、人気が引いたら入ろうぜ、朔間先輩。」



「…結局関係者席に通されちゃったのう。」
「そりゃあ、朔間先輩はオーラがあるしな。一般客に混ざろうとしすぎて、逆に不審がられてたぜ。」
「上手く行ったと思ったんじゃがのう。…そういえばわんこ、Knightsが気になるって言っておったのう。なにか、理由があるのかや?」
「…そりゃ、同い年のメンバーもいて、俺らUNDEADと競い合うライバルみてぇなユニットだしよ。ただ、…それだけだぜ。」
「…そうかや。確かにのう。凛月以外にも、鳴上くんも同じクラスだったようじゃの。仲良くしてるのかえ?」
「…お、俺様は孤高の一匹狼なんだよ!あいつらとは、そんなんじゃねえ!」
「くく…実にわんこらしいのう。じゃが、我輩はわんこのことを信頼しておる。凛月も、凛月と同じユニットの鳴上くんも、我輩に代わり、宜しく頼むぞい。」
「…朔間先輩に頼まれちゃ嫌とはいえねえだろうが。ケッ、仕方ねぇな。」
「お、はじまるぞい。」

正直、この前の体育の時に足首を痛めちまったときから。オカマ野郎が、俺様のことを抱き抱えて保健室まで連れてってくれた時から、
照れ臭くてアイツの顔をまともに見れてねえ。
アイツは当たり前みてえな顔してたけどよ。
多分そのせいで、アイツは俺に避けられてるって思っちまってるみてぇで。
ちょっとだけ、申し訳ねぇ気持ちがあったりする。



響き渡る透き通った歌声。
洗練されたダンス。
丁寧なファンサービス。

最近気づいた、歌やダンスの最中にアドリブを加えたり、ファンサービスを入れられるのは、ボーカルやダンスにある程度余裕ができるくらい、練習して、場数を踏んでいる証拠だってこと。

…あ、この曲、この前オカマ野郎がひとりで自主練してたやつか。
手先までキレがあって、繊細で、自信に満ち溢れているのが伝わってくる。
今この瞬間、アイツから、目が離せねえ。

「…すげぇ。」



「おーいおいおい…ぐすん。」
「…おい朔間先輩、いい加減泣き止めよ、変な目で見られてるだろーが。」
「凛月や…あんなにかっこよく…立派になって…ぐすん。」
「あぁ、そうだな。リッチーのやつ、いつもあんなでも、やっぱ朔間先輩の弟なんだなって思ったぜ。」
「…凛月は我輩と比べられる事をとても嫌うからのう…。わんこ、どうか、朔間凛月として、讃えてやっておくれ。」
「そうなのかよ…わかったぜ。」
「わんこや。随分と熱心に、鳴上くんのパフォーマンスを見ていたようじゃの。確かに彼は、自らの細部まで、魅せ方をよく知っているようじゃ。我輩も年下だと甘く見ていると、追い抜かれてしまうかもしれんのう。」
「俺様、そんなにオカマ野郎のことみてたのか…?でも、朔間先輩がそういうなら、アイツ、やっぱすげえんだよな。多分だけどよ、アイツ、色んなこと悩みながら、すげえ、頑張ってるんだと思うんだよ。」
「…そうかえ。」
「俺様も、負けてらんねぇ。」
「そうじゃの、UNDEADも、負けてられないのう。」
「おう!朔間先輩、今日はその…誘ってくれて、
有難うな…!」



「あら晃牙ちゃん!おはよ。」
「…おう。」
「もしかしてだけど…晃牙ちゃん、昨日のKnightsのライブ、見に来てくれてたかしら…?」
「…あぁ。見てたぜ。」
「やっぱり。照れちゃうわぁ!来るって言ってくれれば良かったのに!」
「別に、わざわざ言うことじゃねえだろ。」
「んもう、晃牙ちゃんったら…。
…ねぇ、晃牙ちゃん。昨日は楽しんでもらえたかしら?」
オカマ野郎のやつが、心配そうに眉毛を困らせて、こちらを見つめてくる。
「良かったぜ。」
分かりやすく、パァッと顔が明るくなった。
百面相みたいに、表情がコロコロ変わるやつだな。
「嬉しいわァ…!晃牙ちゃんは、嘘やおせじは言わなそうだもの。是非、また遊びにきて欲しいわァ。それにアタシも、UNDEADのライブ、是非今度遊びにいかせてちょうだい!」
「良いけどよ。俺らはロックがテーマだからよ、お前らんとことは毛色が違うぜ?」
「あら!オトコらしくてカッコいいじゃない!その時は、凛月ちゃんも、連れて行くわねェ。」
「…分かってたのか。
あぁ、そうしてやってくれよ。」

コイツとすごく久しぶりに、話したような気がする。
なんだか胸の奥が暖かい気がするのは、
コイツが、楽しそうに話してるせいだろうか。