前を歩く人への衝動

これは昨年(2023.10.23)スマートフォンのメモに殴り書きした
エッセイに憧れた文章です。
noteに移すにあたり特に推敲はせずその時のままの文章になっています。

以下です

前を歩く人への衝動

私は歩くのが早い。

電車の乗り換えの道や通勤の道でけっこうな人数をごぼう抜きにする。
早く歩いてしまうのはもはや癖のようなもので、
遅い方が足がしっくりこなくて落ち着かない。
とはいえ疲れているときは人並みの歩行スピードになったりもする。

ああ私今、アイシールド21みたいだな。と思いながら
人と人の間をすり抜けている。

周りからしたらそんなに急いでどこへゆく。と、不審に思うだろう。
こんな私のスピードをさらに抜かす人が時々おり、
そういう人が私を抜かし颯爽と歩いて行くたびに、歩くの早っ。と怖くなるので、私も大概怖い存在だろうと思う。

複数人が絶妙なパーソナルスペースを保ちながら前を歩いている時がある。
私としてはゆっくりに感じるので抜かしたい、
しかし通りぬけるには少し狭く、どうしたものかと思案する。
そういうとき私はすごく良からぬことを考えてしまう。

手を己の中心で叩き合わせ、
剣道の「メーン!」の要領で腕ごと激しく上下に振りながら、
人と人とのすきまを切り開いてやりたくなるのだ。
「ダッタン人の矢よりも早くー!」という北島マヤのセリフが頭をよぎる。走り抜けたくなる。

だがそんなことをしたら異常者だし、
もしそれをされたのが私だったらとても怖いから、しないのだ。
しかし衝動的にやりたくなってしまうのを、グッと堪えている。

その「ダッタン人の矢」を、やらないように!やらないように!と思っていたら、最近また新たな衝動が生まれた。

ゆっくりと前を歩く人の後ろに立ったときに、
人型のシルエットに合わせて腕をシュシュシュシュシュ!!!シュシュシュシュシュ!!!とやりたくなった。
背後でフンフンフンディフェンスをするようなイメージだ。
正面から見たらゆっくり歩く人が千手観音のようにみえることだろう。
前をゆく人のヒトガタを手で取ることで、背後にいます!という注意喚起を促したい気持ちになる。

(2023.10.23)

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