マガジンのカバー画像

【連載小説】教えて!アヤノさん〜青葉大学バスケ部の日常〜

12
大学三年の秋、青葉大学体育会男子バスケットボール部の主将になった菅野タケルはコーチの人選に悩んでいた。そんなある日。 「私が教えてあげる」 そう言い放ち、コーチに志願したのはタケ…
運営しているクリエイター

#創作大賞2024

【連載#3】教えて!アヤノさん〜青葉大学バスケ部の日常〜

第三話 どういうご関係で?  青葉大学北キャンパスにある体育館。水曜日は二面あるバスケットボールコートそれぞれで男子バスケ部と女子バスケ部の練習が行われる。チーム練習が始まる前、男子部の練習が行われるコートのゴール下で、男女二人が一対一で練習をしていた。 「ボールを受けたら一度体を押し込んで、スペースを作るんだ」  ディフェンスをしながらアドバイスをしているのは、三年生で男子部副主将の古川トモミだ。オフェンスは二年生で女子部副主将の上野ナギサ。遠くから見ると小柄に見える

【連載#2】教えて!アヤノさん〜青葉大学バスケ部の日常〜

第二話 契約をしましょう  青葉大学経済学部ゼミ棟。毎週水曜日の午後は、経済学部のゼミが行われる。この日、青葉大学体育会男子バスケットボール部主将の菅野タケルはゼミの開始時間よりもだいぶ早くゼミ室に到着し、ロの字型に組まれた長机に一人、頬杖をついてボーッとしている。しばらくすると、タケルのゼミの友人である中嶋が入室する。 「おや、タケルどの。お早いですね。その様子では、まだお悩みですか? バスケ部コーチの件」 「いや、コーチは決まったのだよ」  タケルの返事を聞いた中嶋

【連載#1】教えて!アヤノさん〜青葉大学バスケ部の日常〜

 第一話 私が教えてあげる    夏の陽射しが翳りを見せ、高い空が秋の気配を感じさせる十月初旬。杜の都・仙台市青葉区にある青葉大学文系キャンパスの隅に建てられたニ階建てのプレハブでは、経済学部三年生以上が所属するゼミが行われていた。学生の本分は学業。経済学部経営学科三年の菅野タケルはそのことを十分に理解しているつもりだ。その証拠に、タケルは真面目にゼミに参加し、研究テーマであるマズローの五段階欲求論の分厚い本を眺めている。そう、眺めているだけで読んではいない。文字の羅列をボ