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【連載小説】教えて!アヤノさん〜青葉大学バスケ部の日常〜

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大学三年の秋、青葉大学体育会男子バスケットボール部の主将になった菅野タケルはコーチの人選に悩んでいた。そんなある日。 「私が教えてあげる」 そう言い放ち、コーチに志願したのはタケ…
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#連載小説

【連載#11】教えて!アヤノさん〜青葉大学バスケ部の日常〜

第十一話 お姉さんですか?  十二月も中旬を迎え、西公園の地面は色づいたイチョウの落葉で黄色に染まっていた。  薄暗く、吐く息も白い早朝。巨大なこけしがそびえ立つ広場に背の高い二人の女性が向かい合っている。一人は金髪の髪をヘアバンドで留め、もう一人は真っ黒な長い髪を後ろで一つに束ねてランニング用のキャップを被っていた。二人は準備運動をしながら言葉を交わす。 「アヤ、なんだそのレトロな恰好は?」  金髪の日下部ニコルが話しかける。 「え、ダメですか?」  黒髪の中村ア

【連載#7】教えて!アヤノさん〜青葉大学バスケ部の日常〜

第七話 素敵なことじゃないですか  杜の都仙台の老舗デパート『藤崎』は、仙台駅ら東西に続くアーケードと、仙台市役所から南北にのびるアーケードの交わるところにある。青葉大学の大学祭が開催されている週末の日曜日、青葉大学男子バスケ部主将の菅野タケルは、同じく男子バスケ部のコーチである中村アヤノと藤崎のエントランスで待ち合わせをしていた。  予定が決まったのは二日前の金曜日。文系キャンパスの食堂でのちょっとした事件のあと、アヤノからの「付き合って欲しいんです」発言に耳を赤くしたタ

【連載#5】教えて!アヤノさん〜青葉大学バスケ部の日常〜

第五話 伊達の悪魔    杜の都仙台市の中心部から西に位置する青葉山。その麓に広がる青葉大学文系キャンパス。経済学部経営学科三年で青葉大学男子バスケットボール部主将の菅野タケルは、文系キャンパスにある経済学部講義棟で行われている統計学の講義を抜け出し、生協の外にあるベンチでホットの缶コーヒーを飲んでいた。夏から秋へと移ろう季節の爽やかな風を受けながら寛いでいたタケルの隣に、何者かがスッと腰を下ろす。 「おいタケル。また授業サボってんだろ」  声の主は、法学部三年で青葉大

【連載#4】教えて!アヤノさん〜青葉大学バスケ部の日常〜

第四話 そんなんじゃないですから    その日の全体練習終了後、練習開始前に言い争いをしていた男子バスケ部三年生の高橋ツムグと女子バスケ部三年生の小笠原ノアは、女子バスケ部が練習していたコートで一対一の勝負を始めるところだった。 「ツム、喜べ。今日もあたしがお前を完膚なきまで叩きのめしてやるぞ。三つ指ついてお願いしますって言え」 「ふざけんな。毎回負けて夜な夜な枕を濡らしているのは誰でしたか? お前だよ!」  高橋とノアの一対一は練習後の恒例行事として部内に浸透しており