定年後のキャリアはドリフト(漂流)で楽しもう!
キャリア・ドリフトという言葉を聞いたことがあるでしょうか?ドリフトとは漂流という意味ですが、キャリア・ドリフトを一言で言えば「キャリアの方向性だけをデザインし、流れに身を任せてキャリアを築く」という考え方です。
これは私の母校神戸大学の現名誉教授である金井壽宏氏(専門:経営管理・経営行動科学)が提唱した概念ですが、私の定年前後のキャリアの道のりは、このキャリア・ドリフトを実践していると感じるようになりましたので、今回はそのことを書きたいと思います。
キャリア・ドリフトとは?
では、まずキャリア・ドリフトのポイントを説明します。
その考え方は、個人のキャリアが必ずしも立てたプラン通りに進むわけではないという現実に基づいています。キャリア形成においてプランニングすることが全く無駄ではありませんが、プラン通りにすべてが進むとは限りません。
例えば自分の意に反して仕事の内容が変わる、あるいは新たな技術が登場する、また組織の方針が変わるなど、常に環境は変化しますので、そういう変化にも柔軟に適応しながら、自らのキャリアを形成していくことが、キャリア・ドリフトの特徴です。
そして、このキャリア・ドリフトにとって、キャリア・アンカーと計画的偶発性は欠かせない概念です。
キャリア・アンカーのアンカーとは船の錨(いかり)をメタファー(隠喩)としていますが、「個人が最も大切にしている価値観や、どのような働き方をしたいのかを示すキャリアの軸」のことです。
また、計画的偶発性とは「キャリアの約80%が偶発的な出来事によって形成される」というキャリア理論で、全てをプラン通りに進めるのは難しくても、偶発的な出来事やチャンスを上手く活用することで、自らのキャリアをより豊かにすることができるという概念です。
キャリアのデザインとドリフト
詳しくは後述しますが、節目にキャリアをデザインすれば、あとはドリフトしていくというのが基本的な流れですが、キャリアのデザインとは、自分の人生や仕事の将来の方向性、そして目標などを自分自身で主体的に設計する、つまりデザインすることです。
そして、キャリア・ドリフトは冒頭にも書きましたように、今後のキャリアをデザインすれば、流れに身を任せて、途中の変化も楽しみながらキャリアを形成していくという考え方です。
その流れの中では、計画的偶発性の理論で挙げられている、5つのスキルとしての①好奇心、②持続性、③柔軟性、④楽観性、⑤冒険心、も大切です。
キャリア・ドリフトの実践方法
そのキャリア・ドリフトを実践するには、まずは今後のキャリアをデザインすることから始めますが、そのためには自分のキャリア・アンカーを知ることが大切で、それはその概念の提唱者であるエドガー・シャイン(組織心理学の創始者でキャリア論の権威)による以下3つの問い
① 自分は何が得意か?
② 自分はいったい何をやりたいのか?
③ どのようなことをやっている自分なら意味を感じ、社会に役立っていると感じることができるのか?
について自問自答し、自分がどのような「能力」「欲求」「価値観」を持っているかを含め、自己理解を深めることでキャリアの方向性がデザインしやすくなります。
そして、異動や昇進、結婚や出産、転職、定年など、キャリア論でトランジション(転機)と言われる人生の節目や変化のタイミングがあります。
その時に精神的に不安定になることもありますが、そういう転機という節目にこそ、改めて3つの問いについて自問自答しつつ、それまでの周囲からのアドバイスやフィードバックなども参考にしながら、今後のキャリアの方向性を見直す機会とします。
このように節目・節目にキャリアの方向性をデザインするだけで良く、逆に節目以外には、むしろ忘れていても良いということです。
そのように節目にキャリアをデザインした後の行動は、その方向に必要なスキルや資格を習得したり、既存のスキルをアップデートさせたりしながら、思わぬ出会いや縁が次のキャリアのきっかけになることもあるので、人とのつながりを広げていくことも大切で、それらも意識しながら、流れに身を任せてキャリアを形成していきます。
おおまかにはそのような流れがキャリア・ドリフトの実践方法です。
私のキャリア・デザインは?
では、ここからは体験談としての私のキャリア・ドリフトについてお話をしていきたいと思います。
私は新卒で1981年に就職した会社で、管理職として働いていた40代のころから、定年後にやりたいことは何か?ということをよく考えていました。管理職としてはやりがいを感じることがある一方で、時には強いストレスを感じることもあり、定年後のことを考えることでストレス解消をしていたのかもしれません(汗)
そして、もともと営業として関わりがあった飲食店に興味・関心が強く、プライベートではワイン会によく参加していたこともあり、50歳過ぎ頃には、定年後は会員制ワインバーをやりたいと思うようになりました。
ところが、50代半ばのある時、テレビで「BARレモン・ハート」などの漫画を描いていた古谷三敏さん(故人)が、その題名通りのオーセンティックバーを経営していて、ご本人は一人の客としてカウンターの隅に座ってお酒を飲んでいるという姿を見たとたんに、会員制ワインバーではなく、そんなお店を会員制サロンバーという形で経営しながら、自分も同じようにカウンターで飲んでいたい!というふうに想いが変化しました(笑)
それは今から考えると、その時点での私の定年後のキャリア・デザインだったと言えるかもしれません。
そのために考えたことや取組んだことは?
とは言え、お得意先としての飲食店の浮き沈みに接してきましたので、そう簡単なものではなく、下手をすると財産を失うリスクがあることはわかっていました。でも、古谷三敏さんのように別の安定した収入源を持っていれば、お店の開業費や固定費などもそれで賄うことができるので、何とかやっていけるのでは?と考えました。
そして、定年後に自分が確保できそうな安定的な収入源をあれこれ考えましたが、営業職や管理職として人の話を聞く機会が多かったこともあり、それを活かせそうなものとして、産業カウンセラーやキャリアコンサルタント、コーチングなどの資格をとって、有料のセッション業務ならその収入源になるのではないかと考えました。
そのために役職定年後の56歳ぐらいから63歳となる2020年頃にかけて、ゆっくりと時間をかけながらその3つの資格をとりましたが、わかったことは資格を取ったからと言って簡単に収入になるものではない!ということでした(涙)
しかし、それでも何とか安定的な収入源を確保したいという想いの中で、2021年に半ばに出会ったのがプロティアン・キャリアでした。そこで学んだことはアイデンティティとアダプタビリティをベースに、キャリア資本を蓄積しながら目指すキャリアに向かっていくというものでした。
定年後の展開は?
そして、2022年11月末に65歳の定年を迎えた後、公的年金を生活費にあてる一方で、「働きに行かないなら小遣い無し」と妻から言われていましたので(汗)、再雇用で引き続き会社で働かせてもらうことにしました。
一方でプロティアン・キャリア協会の認定者として、いくつかの研究会(ラボ)に入り、研修コンテンツなどを作成しながら、現代版プロティアン・キャリア論のビジネス資本を蓄積することや、おじさんLCCなどにも参加して社会関係資本蓄積にも取り組んできました。
そのうち2023年5月頃に、それまで10年近く通っていたカウンセリング関係の勉強会を主催している人から、その会場として借りているワンルームマンションを使わない日が結構あるので、夜に会員制サロンバーに似たようなことをやってみては?と言われて、最初はえっと思ったのですが、使う時だけの使用料負担でいいということなので、とりあえずやってみようと思い、会員制交流サロンという形式でやることにし、そのスタート前に個人事業主の届け出もしました。
そして、ほかにも収入源になりそうなものとして構想していたことを個人事業メニューとして加えましたが、現状はほとんど稼働できておらず、収入源になっているものはほぼありません(涙)
それでも定年後のキャリアはドリフトで楽しもう!
そして、2024年5月末の再雇用契約終了直前に、前回のブログでも書きましたように、樽ものがたり直営店勤務のオファーをもらいましたので、小遣いが途絶えないようにと思い、引き受けることにしました(笑)
さらに思いもよらず、この9月はじめに卒業した社内向けの、創業の地を巡るツアー研修のガイド役のオファーがあったうえに、グループ会社の役職定年者向けの研修講師の依頼も受け、その2つも引き受けることにしましたが、特にその2つ目は、プロティアン協会のシニアラボでその研修コンテンツを仲間と作成してきましたので、計画的偶発性と言っていいのかもしれません。
とは言うものの、樽ものがたり勤務の収入は自分が自由に使えるものではなく、新たなオファーの2つの仕事も頻繁にあるわけでは無さそうなので、今は極秘ですが(笑)他に安定的な収入源になりそうなことにも取り組み始めています。
そして、今年5月末の再雇用終了後をひとつの節目として、シャインの3つの問いに自問自答しながら、キャリアの方向性を見直してきましたが、ある程度の安定的な収入源が確保できるようになった段階で、会員制サロンバーではなく、昼間はキャリア相談や人生相談なども含めて対話を楽しんでいただく昼スナックで、夜はカラオケスナックに切替える店を経営し、毎晩自分自身が酒を飲みながらカラオケを歌っていたい!と思うようになってきましたので、それを数年先のキャリア・デザインに修正しました(笑)
私が尊敬するTSUTAYA創業者の増田宗昭さんが「夢しか実現しない」と言ってますが、そのような店を経営することが現時点での私の夢で、その夢実現に向けて、漂流しながら自分独自のキャリアの歩みを楽しんでいきます!
以上最後までお読みいただき、ありがとうございました。