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ストーリー16 ディズニーランドまで歩いたシズカちゃん

シズカちゃんは小学三年生の女の子です。社会の授業でマザー・テレサとインドにある「死を待つ人々の家」のことを学びました。助けの必要な人に何かしてあげたいと思うようになりました。

そのころ妹が入院することになりました。幸い数日の入院でした。シズカちゃんは、お父さんお母さんとお見舞いに行きました。でも病室の並ぶ廊下の入口までしか行けません。自動ドアのガラス越しに中の様子をうかがっていました。

するとガラスの向こうに、シズカちゃんと同じくらいの女の子が寄ってきました。ニコッと笑うのでシズカちゃんも笑顔で手を振りました。女の子も手を振って応えてくれます。ガラスにはーっと息を吹きかけて自分の名前を書きました。女の子も自分の名前を書いてくれました。なんだか新しい友だちができたみたいで嬉しくなりました。

次の日も妹のお見舞いに行きました。またあの子と会えるのを楽しみにしていましたが、姿を見ることができませんでした。

その後は妹が退院してしまって、もうあの子に会う機会はありませんでした。

ある日、お母さんが一枚の紙を持って帰ってきます。あの女の子の顔写真が載っています。心臓の移植手術を受けるための募金の呼びかけでした。まさかそんなに大変な病気で、お金もたくさん必要だなんて思ってもみませんでした。このことが分かって、何か自分もしてあげたい、と思いました。
シズカちゃんのおこづかいやお年玉からお金を出すぐらいしか思い付きません。

「他に何かできることはないかなあ」
「ユーチューブで氷水をかぶって何かするのがあったぞ」
お父さんが動画を見せてくれました。

「まさかシズカちゃんが氷水をかぶるわけにもいかないしなぁ」
「じゃぁ、私が遠くまで歩いて行ったら、少しでもお金を出してくれる人がいるかなぁ」
シズカちゃんは三十キロも離れた東京ディズニーランドまで歩いていく、そこで女の子のためにミッキーマウスのぬいぐるみを買ってくる、と決めました。

その話を聞いたおじいちゃんとおばあちゃんがお金を送ってくれました。お友だちがおこづかいの中から少しずつ募金をしてくれました。近所のおじさん、おばさんが呼びかけて募金箱を回してくれました。学校の先生たちも、習い事の先生たちもみんなあたたかくサポートしてくれました。

当日、お父さんとお母さんといっしょに朝早く家を出て、ディズニーランドに向かって歩きはじめました。途中で、お父さんの会社の人が、大きな車を公園のところに止めて待っていてくれました。その車の中でお昼ごはんを食べました。

「自分はひとりで歩いているんじゃない」
足は痛かったけれど、すごく心強くなりました。歩きながらお母さんは言いました。

「何もできないと思ったけど、たくさんの人に助けてもらうことができたね」
ディズニーランドに着くころには、あたりはすっかり暗くなっていました。ゲートの外にあるギフトショップで、ミッキーマウスのぬいぐるみをひとつ買いました。これはシズカちゃんのおこづかいを貯めたお金でした。

ぬいぐるみを大事にかかえて店を出ると、ちょうど夜の花火が上がりました。パーッと夜空が明るくなります。それをしばらく見上げながら
「いつかあの子といっしょにこの花火を見に来たいな」
「でも、今度は電車でね」

ほめられると調子に乗って、伸びるタイプです。サポートいただけたら、泣いて喜びます。もっともっとノートを書きます。