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子どもの発達・健康に対するモバイル機器の影響と対応

この文章は、NPO法人こどもとメディア理事の古野陽一氏の作成した資料を武田信子が整理してまとめたものです。
メディアは、私たちの社会を便利にしています。しかし子どもの発達や健康に対する影響を査定する以前に、急速な利用が促進されており、そのリスクマネジメントが不十分です。今は、アクセルとブレーキの使い方をまだ身につけないうちに急発進している状態ですので、これまでの研究で明らかになっていることをまとめてみました。必ず、子どもたちが使うからこそ、しっかりと正面から取り組むのが大人の責任ではないでしょうか。子どもたちにリスクも伝えて、どうするか、どう使うか、一緒に考える必要があるのではないでしょうか。どうぞご検討下さい。

1.スマホ、インターネット、ゲームが子どもに与える影響
1-1.脳の発達への影響 
~仙台市教育委員会協力7万人対象東北大学調査
●「頻繁なインターネット習慣が小児の広汎な脳領域の発達や言語性知能に及ぼす悪影響を発見」
・インターネットを頻繁に使うほど、脳の高度で深い思考をする領域や言語知能の領域など多数の領域で灰白質、白質とも発達が顕著に悪化     ※東北大学加齢医学研究所2018年6月発表
 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20180710_04web_internet.pdf  
  http://www.city.sendai.jp/manabi/kurashi/manabu/kyoiku/inkai/kanren/kyoiku/project.html

●スマホ利用時間・学習時間と成績の関係
・スマホは1時間以上、LINEは1時間未満でも顕著に成績が低下。
 国語より数学により強く影響。
・家庭学習が2時間以上でスマホ・LINEを4時間以上している生徒より、
 家庭学習が30分未満でスマホ1時間未満・LINEはやってない生徒のほうが   顕著に成績がよい。
  参考資料「スマホが学力を破壊する」川島隆太監著集英社
・複数アプリを同時に使う「脳のマルチタスク」は、さらに脳にダメージが  蓄積される

・言語知能への影響「長時間のビデオゲームが小児の広汎な脳領域の発達や
 言語性知能に及ぼす悪影響を発見」東北大学加齢研究所 竹内光准教授
 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2016/01/press20160105-01.html https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2016/01/press20160105-01.html

1-2.生活習慣と健康への影響
●睡眠障害
・慢性的な睡眠時間の不足 光刺激による浅い眠り・自律神経失調・成長ホルモンの分泌異常 
●視覚障害
・青色光(ブルーライト)による網膜へのダメージ蓄積
・平面画面の長時間視聴、立体空間の体験不足
      ⇒左右の視力差・立体視力の未成熟
・眼球運動・視力調整の異常 
   ⇒距離感が測れない、動体視力が落ちる
      ⇒高校生調査ではスマホ利用1日30分以上の使用で影響が出始め4時間 
  以上の利用で7割に眼球運動の異常が認められた。3Dは6歳未満、V
   Rは13歳未満使用すべきでない。
    参考資料 『スマホ長時間利用による両眼視異常~空振りが増えた野球少年~』ネットリスク研究会
・急性内斜視の増加 参考資料 https://www.m3.com/open/clinical/news/article/684966/

●聴覚障害
・音響外傷、難聴  参考資料 「スマホ耳鳴り」に注意! 聴きすぎると難聴に https://wotopi.jp/archives/73078

●ロコモーティブシンドローム
・運動器機能不全  腰痛等 参考資料 全国ストップ・ザ・ロコモ協議会 https://sloc.or.jp/?page_id=149

●ストレートネック
・本来30〜40度の湾曲がある頸椎が、長時間のうつむき姿勢でストレートになる状態 
・慢性的な首の痛みや肩こり、首の神経の損傷、頭痛・片頭痛、手足のしびれ、めまいなど 
    参考資料 増えるストレートネック 明神館クリニック         
                      http://www.myojin-kan.jp/ill_straight/

●腱鞘炎(ドケルバン病)
・親指の使い過ぎ  
    参考資料 「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)」日本整形外科学会
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/de_quervain_disease.html

1-3.自律神経・前頭葉の発達不足  
●小学生の暴力行為が6年前から急増 (←入学以前の幼児からの変化か)
    H30年度  小学生36,536件(前年度28,315件)  中学生29,320 件(前年度28,702件)  小学生が7,261件上回る
・小学校低学年の発生率が特に高い。
      加害児数H28⇒H30で小学1年生94%増加 
・乳幼児期の興奮体験・外遊びの不足 
      ⇒高次神経活動の変化(不活性型、抑制型の継続) 
●小中学生の体調不良・不登校
・血圧、体温調節の困難・低体温 
      ⇒ 夜型生活サイクル ⇒ 昼間の活動への悪影響
   参考資料 文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」
      https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302902.htm

2.幼児期への影響
2-1.幼児は我慢できない
●依存傾向は、使用頻度が多くなるほど多くなる「脳に何が起きるか不明」
     参考資料 NPO法人子どもとメディア 2015年「乳幼児のメディア接触状況について調査」

●2歳児の1割強がスマホ依存の傾向(母親2000人調査) 東京大学橋元良明教授(2018)    https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/net/17630/?fbclid=IwAR2MDXMboYryGgyyiwpf_sRq4hFTeRYSNuJ2ubCWbK8v0-tzyDjjCjKwugs    

2-2.コミュニケーションの発達
●長時間のメディア接触がアタッチメント障害類似症状を発生させている
●言語発達の遅れ 1日2時間以上の電子メディア(TV画面)接触で発達に影響 参考資料 https://www.youtube.com/watch?v=vVTjcJhLOiE 小児科医 片岡直樹 

2-3.運動能力獲得・五感発達・学習意欲の発達

3.ネット、ゲーム依存の実際と対応 
       ※厚労省研究班 ネット病的使用2017年93万人過剰使用160万人 
3-1.ゲーム障害 2018年世界保健機関WHOが国際疾病分類11版(ICD11)に疾病認定 

3-2.薬物依存と同等のネット、ゲーム依存  中国科学院武漢物理・数理研究所 レイ・ハオ教授(2012)
・前頭前野の機能低下、依存対象に対する脳の過剰反応(衝動性)、報酬の欠乏(より強い刺激を求める)等
・ネットやゲームの時間が長いほど、脳の灰白質の破壊と情報伝達を担う白質の破壊が増加
・脳の性能低下や機能障害で行動・性格が変化 
     遂行能力、記憶力、注意力低下、うつ状態、無気力、対人関係能力の低下    ⇒対人恐怖、不安、 表情が読めなくなる、神経過敏(幻聴・幻覚)、攻撃性の増大、極端な思考(敵か味方か)
  参考資料 インターネット・ゲーム依存症 岡田尊司著 文春新書
3-3.メディア依存の治療と相談窓口         
 国立久里浜医療センターネット専門外来(TIAR)   
  参考資料 スマホゲーム依存症 樋口 進著 内外出版社
 
3-4.依存からの脱出      
●より健康的なものへの依存     
●体験型合宿(自然体験、外遊びなどの効果が出ている)
●子どもの居場所(友達、遊び、やりたいこと、達成感、自由、親の監視のない場等)の確保
●参考 韓国行政安全部韓国情報化振興院ネット中毒対応センターACTION 
     
今後の課題
・関係者に対する専門家による勉強会の開催
・文科省、厚労省、内閣府などによる研究推進
・ICT教育推進のシステムの中には、アクセルとブレーキの両方が必要・依存は特殊な子どもにのみ起きるわけではない
・学校教育へのICT導入は家庭でのメディア利用を後押しする可能性がある。
 子どもの一日の生活をトータルに捉えて対応することが必要だろう。
・また、幼児期のメディア使用を促進する可能性もある。
 より大きな影響を与える早期のメディア接触への対応が必要。
・メディア使用開始年齢の国家的な検討による法制化。

    【資料作成 NPO法人こどもとメディア 古野陽一 武田信子】

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