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未来と自分は変えられる。"学習する学校"の対話 【週刊新陽 #33】

新陽高校では月に一度、焚き火を囲むような雰囲気で教職員が対話する『中つ火を囲む会(通称:中つ火)』を開催しています。

今月の中つ火は、いつか新陽の組織づくりや変革の歩みを振り返ったとき「とても大事な局面だった」と思い出すであろう回となったので、記録しておきたいと思います。

ちなみに先日、「リアル中つ火やってますよー」と声をかけてくれた先生がいて校庭を覗いたら、焚き火を囲んでいる数名の生徒・保護者・先生がいました。とってもいい雰囲気で、やっぱり焚き火効果すごい!と思いました。

いつか、教職員でもリアル中つ火をやりたいです。

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経験から学び、未来に活かす

今回の中つ火のテーマは『経験から学ぶリフレクション』。

これは、変えられない過去を振り返り悔やんだり責任を追及したりするのではなく、過去の経験から学び、良い未来づくりに活かすためのリフレクションです。

熊平美香さん(今月のメインファシリテーター)によると、過去の経験は成功でも失敗でもどちらでもよくて、本当に大事なのは「経験したからこそ賢くなる!」という安心感や自信だそうです。

20211117-第7回札幌新陽高校WS-2.1

経験から学ぶリフレクションでは、経験学習サイクルに基づき以下のような項目で振り返りを行い、現状とありたい姿のギャップを埋めていきます。

1. どの経験について振り返るか決める
2. 「想定した結果」と「実際の結果」のギャップを見つける
3. 経験前の「行動計画」と「仮説」を挙げる
4. 「経験」と「感情」を振り返る
5. 「経験からの学び」「法則の定義」「新たな行動計画」を考える

そして、経験の振り返りにおいてその経験をどう意味付けるかが奥深くて難しい、と熊平さん。

経験や結果にまつわる様々な情報のうち、どこを抜き取って振り返るかがリフレクションの肝なのですが、人は自分の気持ちに左右されるもの。嬉しかった、楽しかった、悔しかった、腹が立った・・・経験に紐づく自分の感情によって、抜き取る部分が偏るのです。

そこで、他人と一緒にリフレクションすることで、視野が広がったり別の視点が持てたりします。それが対話する意義です。

なお経験から学ぶリフレクションについては、NHK for Schoolの『プロのプロセス』内の『アクティブ 10:振り返りのしかた』に詳しいので是非ご覧ください(熊平さんが監修・出演しています)!


「教務規定の策定プロセス」をリフレクション

このリフレクションのフレームを使って、今回の中つ火で扱ったトピックは『新しい教務規定の策定』です。

教務規定リニューアルのメイン担当をしている教務部の田渕先生に、この秋の経験を振り返ってもらいました。

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(教務部会はいつも白熱してます)

9月初旬に始まった教務規定の策定では、ゼロベースと言いながら結局既存の規定に捉われてしまった経験を踏まえて、目的を明確にし策定の方向性を決めてから着手すること、という学びが見えてきました。

そして、9月後半、すべての教職員が主体的に策定プロセスに関わることで、皆が当事者意識を持って規定を運用してくれると考えた田渕さん。

でも、コトはそんなに簡単ではなく、最初のやり方は大失敗・・・。案を全体に共有しコメント募集したところ、質問と批判ばかりで建設的な意見や代案は少なく、意気消沈したそうです。

そこで、各教科や各分掌のリーダーに一人ひとり趣旨を説明し議題を示し、話し合ってもらうように依頼したところ、各部で議論が白熱。

遠回りに見えることが実は近道であり、インフォーマルなコミュニケーションや段階的な共有、ヒアリングなどを丁寧に行うことで、結局はみんなを巻き込むことができる。これが、田渕さんが見つけた法則です。

自分の経験と感情と向き合うことも、さらにはそれを人に開示することも、なかなか勇気がいることです。でも、何もしないよりも振り返ること、一人で振り返るよりも誰かと一緒に対話しながら振り返ること、のほうが確実に学びは深まり、未来に活かすことができるようになります。


「規則・ルールの策定で大切なこと」の対話

教務規定のリニューアルでの田渕さんの学びは、新陽という組織の学びでもあると思っています。

新陽が目指す『学習する学校』とは、自律的で柔軟に変化しつづける組織と人のこと。今回の学びを皆で共有し、未来に活かそうと考えました。

学校には様々な規定やルールがあり、新たに策定したり見直したりする機会はこれからもあるでしょう。その時、どんな策定プロセスを踏むのが理想なのだろうか、それが今月の中つ火の対話における問いです。

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zoomのブレイクアウトルームで、グループでの話し合いを行いました。

新陽高校の規則・規定・ルール・マナー等の策定における理想の姿とは?
・理想の姿とはどのような状態でしょうか
・その姿を実現するために、策定プロセスで大事なことはなんでしょうか
・そもそも策定する必要があるのでしょうか
(参画するメンバー、参画の仕方、決め方、誰にとっての理想か、など、多角的に考えてみる。)

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各グループで、いろいろな意見やアイデアが出たようです。

・全員が関わるのが理想だが、関わり方(度合い)は色々あっていい。

・全員が納得するにはチャットやドキュメントではなく、話し合いが必要。でも時間がない・・・。

・働き方・生き方の多様性とは「揃う」ことではない。お互いを理解することが大切。

・皆で決める、の「皆」には、生徒や保護者も含まれるのでは。

・中学や高校には「〇〇はだめ」というルールが多いが、「こうしていこう」という理想や提案型のルールがあってもいい。

・定期的に規定やルールについて対話する学校になれたらいい。

・なぜそのルールがあるのかのWhy(目的)が明確だと、間違った解釈は起きづらいのではないか。

・皆が理解するためには、全員が分かる言葉で話をすることが大切(カタカナ語や難しい言葉は極力使わない)。

・ルールがなくても、自分を律することができる生徒が育つのがベスト。

また、あるグループから「教務規定をゼロから作る経験はなかなか無い。これを貴重な機会と捉えることもできる。それによって、参画の度合いや理解度も変わるのでは。」という、新陽の変化を前向きに受け止めようとする意見が出たことも、とても嬉しかったです。

今月の中つ火を振り返って・・・

最後に、校長である私が考える『新陽の規則・規定・ルール・マナー等の策定における理想の姿』とは?

先生たちの対話から見えたヒントや、あらためて感じたことを皆にも伝えました。

・なぜやるかというWhy(目的)が大事。そして同時に、そのWhyに合ったHow(どうやるか、手段など)の具体性が必要。

・共有、納得感、理解、というワードがどのグループからも出てきた。ビジョン『人物多様性』が目指すところは、多様な意見や価値観、そして多様な関わり方やスタンスを良しとすること。同時にそれは、誰かを置いてけぼりにしないということでもある。

・リーダーや担当責任者は、どういう行動を取ってほしいのか、どのくらいどんなふうに関わって欲しいのかをわかりやすく伝える必要がある(スクールリーダーとして自戒の念も込めて)。

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終了後、今回のメインファシリテーターで新陽の『学習する学校』の伴走者である熊平さん、同じく伴走者のリクルート・ヒトラボの福田さん、田渕さんと共に、今回の中つ火を振り返りました。

熊平さんからは、『学習する学校』として学んでいることをオープンにできることはとても大事!というアドバイスをいただきました。

そして福田さんは、「チームという意識を感じた。『私は』という主語で話す方がこの数ヶ月で増えたことや、『それって新陽っぽい?』という判断基準のようなものが出来つつある気がする。」と、仰っていました。

今回、田渕さんは、『変えられない過去と他人』ではなく『変えられる自分と未来』を考えながらリフレクションしていきたい、と強く思ったそうです。

【編集後記】
先日、東京・竹芝にあるダイアログ・ミュージアム『対話の森®️』の期間限定プログラム『会津漆器・イン・ザ・ダーク』を体験してきました。(見出し画像はそのミュージアムの写真です。)

『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』は、真っ暗闇の中での体験型ソーシャルエンターテイメント。全盲のアテンドに導かれ、100%の暗闇のなかで五感をフルに使って対話します。
今回、東京に出張中の新陽の先生2名と一緒に体験したのですが、お二人とも「参加する前は何がダイアログ(対話)なのだろう?と思っていたけど、本当に対話だった!」と、その意味を実感してくれたようでとても嬉しかったです。


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