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FCバルセロナの価値は「意志の光」   サッカークラブのビジョンの描き方   (マーケティング目線で)

初めまして
note初投稿します。

青森市を中心に活動するブラインドサッカークラブ
ガルハ青森の代表をしております。上原です。

あまり知られていませんがサッカークラブのビジョンには
ビジネスにおける「マーケティング要素」が沢山散りばめられており
この記事は何か事業を起こそうと考えている方、商品開発部門にいきなり抜擢された方、もっと目的意識を持って生きたい方など、サッカーファンやビジネスパーソンだけではなく、色んな方に楽しんで読んでいただけるような内容になっています。

みなさんは「マーケティング」をご存知ですか?
商品の売り方などを想像する方が多いかなと思います。実際、検索してみると色んな解釈の仕方がありますが、マーケティングの考え方は至ってシンプルです。

「マーケティング」とは
「誰に」「何を」売るのかを決めることです。

ここで僕が伝えるのは小手先のマーケティング術ではなく、もっと大枠で捉えるマーケティングです。まだマーケティングという言葉に馴染みの薄い方が殆どだと思いますが、この記事を読み終わった頃にはマーケティングのことを少し理解はできるようになっているのではないでしょうか。

それでは見てみましょう。

この記事はサッカークラブのビジョンを描くことを通してお話が進みます。何度も言いますが「マーケティング」とは
「誰に」「何を」売るのかを決めること。
さて、サッカークラブは一体「誰に」「何を」売るのでしょうか。
考えてみましょう。

分からない場合は一度、何かに置き換えて考えてもいいかも知れません。
好きなマンガやおうちの近くの繁盛店で考えてみてももいいでしょう。考えてみると結構難しいですよね。ほとんどの方はきっとこう思うのではないでしょうか。

「誰に」はその商品の「ファン」
「何を」は大雑把な枠で捉えた商品名
サッカーなら「サッカー」
マンガなら「マンガ」
繁盛店なら人気の「料理」

この答えにたどり着いた皆さん
そこまで間違っておりません。
そもそもこの短時間で答えを出すのはとても難しいことです。

しかしハッキリ言わせていただきますと
間違っています
ハッキリ言ってセンスの欠片もない
0点

もし間違っていないのだとしたら
「ファン」に「サッカー」を売ることだけなのだとしたら
なぜ、FCバルセロナは「クラブ以上の存在」という一見サッカーとは関係ない不変のスローガンを持つのでしょう。
ファンにサッカーを届けるだけで足りるはずです。
なぜ、アスレチック・ビルバオはバスク人で選手を構成するのでしょう(スペインのクラブ、アスレチック・ビルバオは全員、バスク地方出身の選手で構成しています)
「なぜ」と問うても分からないと答える人が殆どです。なぜなら答えのない問題に取り組むことはとても難しいことだからです。この記事で僕は答えのない問題に取り組むお手伝いをさせていただきます。
少しずつ僕と一緒に紐解いて行きましょう。

まずはサッカークラブの収益構造から見ていきます。
1つ目は入場料収入。スタジアム観戦のチケット収入ですね。試合を見るためにチケットを買いに来る人とはどんな人なのでしょうか。

2つ目は広告収入です。要はスポンサー収入ですね。ユニフォームスポンサーやスタジアムに貼っているバナー広告、オフィシャルHPの下部にある広告もそうです。

3つ目は放映権収入。Jリーグは放映権を持つDAZNから平均5億円弱(J1)が各クラブに入ります。ちなみにこれは2018年のデータです。

4つ目は物販収入です。グッズですね。ユニフォームからぬいぐるみ、ハンディ扇風機まで沢山。クラブカラーをまとったグッズは皆さん買ってしまうのではないでしょうか。

全体収益から各収益の割合としてはそれぞれ
「入場料収入」30%
「広告収入」30%
「放映権収入」30%
「物販収入」10%
とこんなカンジで簡単に考えてください。もっと細かく分かれていますが、今はさほど重要ではないです。

もう少し細かく見ていきましょう。
まずは「入場料収入」です。
サッカーだけではありません。チームスポーツの球技には切っても切り離せない試合形式があります。皆さんも聞いたことあると思いますが「ホーム&アウェイ方式」です。AチームとBチームが試合する時は必ずお互いのホームで1試合ずつ試合をしようね。という試合形式です。

ではそのホームゲームを見に来る人とはどういう人なのでしょうか。
結論から申し上げると「その地域に住む人」がほとんどです。街クラブは特にそうでしょう。車で2、3時間飛ばして隣の県のサッカークラブに応援に行く人たちはごく稀です。そのようなクラブは特別なクラブです。Jリーグだと鹿島アントラーズはそうでしょう。その他のクラブはやはり地域の人たちに愛されてナンボです。各クラブが地域密着を掲げる理由を紐解くとここにたどり着きます。結構単純で明快ですね。サッカーと地域は切っても切り離せない関係になっています。

その次は「広告収入」です。
これも地域と関わってきます。
FC東京の東京ガス、アルビレックス新潟の亀田製菓、ロアッソ熊本の白岳、V・ファーレン長崎のジャパネット、ラインメール青森の東和電材など
そもそも親会社なんですという例も含めて、Jリーグ・JFLは特にスポンサー収入と地域の関わり合いは深いと感じています。ユニフォームを見るだけでその地域の想いを背負っているのがひしひしと伝わって来る。これはJリーグの素晴らしいところだと感じています。

「放映権収入」は外資DAZNの影響でグッと盛り上がりましたね。
用事があって会場にいけない。そもそも遠くに住んでいて試合を生で見ることができない。それでも安価でスマホから見ることができるのがDAZN。地域との関わりは他の収益源と違って一番薄いですが、ここを通してファンになってくれれば物販収入も伸びてインパクトは大きくなります。

そして最後の「物販収入」
試合当日に会場でユニフォームを着て気持ちをあげたい人もいるでしょう。クラブの公式HPやサッカーショップ、会場で手に入ります。

以上の観点から各収益源に及ぼす「地域」の影響度はこんなカンジと推測。
「入場料収入」>「広告収入」>>「物販収入」>「放映権収入」
観客の応援が試合結果に影響するサッカーにおいて、入場料収入における「地域」の要素はとても大きいです。

話を最初に戻しましょう。
「マーケティング」とは「誰に」「何を」売るのかを決めることです。
サッカークラブの「誰に」とは何なのか。
そろそろわかった方もいるのではないでしょうか。
そうです「地域」「地域の人」です。
ここではあえて「地域のサッカーファン」とは言いません。
物事の立ち上げ時、殆どの場合「ファン」という存在はいないからです。

この「地域」とは
FCバルセロナであれば「バルセロナ」
アルビレックス新潟であれば「新潟」
ラインメール青森であれば「青森」になります。

試合形式がホーム&アウェイから変わらない限り、サッカークラブの「誰に」とは「地域」であることに間違いありませんが、

記事の後半で出てくるある方法を使うと、この「地域」があなたのビジネスの「ファン」に変わりインパクトが劇的に大きくなります。

少しおさらいをしましょう。

「マーケティング」とは「誰に」「何を」売るのかを決めること。
サッカークラブの「誰に」とは何なのか。
それは「地域」です。
とお話したのがここまでですね。

次は「誰に何を」の「何を」の部分ですね。
サッカークラブで考えます。
また少しずつ見ていきましょう。

「何を」を考える前に、この何をの「提供者」とは一体誰でしょうか。
「誰が誰に何を」の「誰が」の部分です。
こちらは割りと簡単なので、皆さん一緒に考えてみましょう。

サッカークラブに馴染みのない方はラーメン店さんやファッションブランドなどで考えてもいいかも知れません。

そろそろ導き出せましたかね。

サッカークラブの「誰が」は
「サッカークラブ」です。
はい、そのままです。
ラーメン店ならその「ラーメン店」
ファッションブランドならその「ファッションブランド」

少し簡単でしたかね。
当たり前かも知れませんが、改めて問われると一度「うーん」と考える人もいたのではないでしょうか。もしかたら提供者を「自分」と捉えた方もいるかも知れません。どちらにしてもそれは「ビジョン」を描くことに自分が関わっている一つの証拠ではないでしょうか。「うーん」と考えている方はとても優秀な方ですよ。自信を持ってください。

ここまで「誰が」「誰に」「何を」と考えてきましたが、
ビジネスの場合、もっと掘り下げる必要があるかも知れません。
その場合は5W1H
「Whenいつ」
「Whereどこで」
「Who誰が」
「What何を」
「Whyなぜ」
「Howどうやって」
を用いてさらに見えない要素を分解・洗い出し、その本質を見抜いてみましょう。

それでは次に進みます。
「サッカークラブ」が「地域(のため)に」「何を」提供するのか。

一つ例に出しましょう。

僕が約1年間のあいだ住んでいた街、バルセロナにある「FCバルセロナ」が掲げるスローガン「més que un club(クラブ以上の存在)」

これをマーケティングの枠
「誰」が「誰」に「何を」に当てはめてみましょう。
語尾などは伝わりやすいように変えても構いません。

まず最初にこれまでに出てきた「誰が」に「誰」を当てはめます。
次に「誰に」に「誰」も当てはめます。
最後、「何に」に「més que un club(クラブ以上の存在)」を当てはめます。

「FCバルセロナ」が「バルセロナのために」「més que un club(クラブ以上の存在)」になる。
とてもキレイに当てはめることができたのではないでしょうか。
皆さんできましたか?

そうです。FCバルセロナはバルセロナのために「més que un club(クラブ以上の存在)」になることを売っているんです。
と言ってもなんかイマイチ馴染まないですね。この言葉だと腑に落ちないという人が多いかも知れません。
大丈夫です。この言葉は表の顔。
もっと簡単な言葉になります。それでは見ていきましょう。

実はバルセロナがあるカタルーニャ州は内戦により長いあいだ弾圧されていました。その弾圧に負けず存在していたFCバルセロナはまさにバルセロナの人たちのアイデンティティー、生きる糧ですね。独立運動も盛んに行われているのも肯けます。サッカークラブがその地域の人たちのアイデンティティーをスローガン・ビジョンで全肯定してあげるというのは、本当に美しいことですね。

「マーケティング」とは「誰に」「何を」売るのかを決めること。
実はこの「més que un club(クラブ以上の存在)」には表には見えない価値が存在します。

ここからさらに「本質」を見ていきます。
それでは皆さん僕に付いてきてください。

「FCバルセロナ」は「バルセロナのために」「més que un club(クラブ以上の存在)」になることを提供している。

では果たしてFCバルセロナはバルセロナの人々のために
「més que un club(クラブ以上の存在)」になることができるのか。

これはとてもとても難しい問題です。

これを理解するためには「自分自身の存在」にしっかりと向き合わなければいけません。

「自分の役割」というのは少しずつ変わります。
一般社員からリーダーに昇格することもあります。
子供が産まれて親になることもあるでしょう。
もしかしたら避けられない理由によって、今と違う環境に身を置かなければいけないこともあるかも知れません。

過去の「自分」を思い浮かべてください。
あなたのターニングポイントを一つピックアップしてみましょう。
そのターニングポイント「過去の自分」に今の自分を重ね合わせます。

そして大きく手を「パン」と叩いてみましょう。

「パン」と叩いたこの瞬間、あなたの役割は変わりました。
変わったとしましょう。
そこであなたに質問です。
「自分自身」は変わりましたか?

役割と自分自身の存在は別です。
「自分自身」である「あなた」「人」から大きな変化はありましたか?

もしかしたらアップデートされました。という方はいるかも知れません。
しかし変わっていないと答える人が殆どではないでしょうか。

サッカークラブも変わりません。
何一つ変わっておりません。
サッカークラブのまま。
FCバルセロナはこれからもサッカークラブとしてFCバルセロナであり続けます。

ではFCバルセロナが「més que un club(クラブ以上の存在)」を目指すことはどういうことなのでしょうか。

それはFCバルセロナがバルセロナのためにクラブ以上の存在を目指し続けるという「意志」であり、それはとても強く、輝いています。

FCバルセロナが提供している価値というのは
スローガン「més que un club(クラブ以上の存在)」に隠れている
「意志」なのです。それは僕には光輝いて見えます。

それは弾圧されたカタルーニャの人を照らす光であり、今も盛んに行われる独立運動や街の人々の生活を支える希少なエネルギーです。

そして「més que un club(クラブ以上の存在)」というこのスローガンに「バルセロナのために」という文字は入っておりません。

視覚的に「バルセロナのため」という言葉を消しています。
前述した「後半で出てくるある方法」というのはこの方法です。
提供する「何か」が決まったら「誰に」を消す。
シンプルになったスローガン「més que un club(クラブ以上の存在)」
このスローガンが支えるバルセロナのアイデンティティーは
ユニフォームやポスター、何よりもサッカーの試合からビンビンに伝わり、このFCバルセロナと共通項を持つ人たちが、遠く離れても自己とサッカークラブを重ね合わせ「地域を通り越したファンになる」原動力になるのです。

他にも素晴らしい例をあげると
アルビレックス新潟の是永大輔さんがアルビレックス新潟シンガポール(日本人クラブでシンガポール国内で2年連続3冠)というクラブで作った「The Reason」というスローガン。これは植民地時代を持ち、多様な文化が存在するシンガポールという国に住む人たちの様々な「理由」をアイデンティティーとして捉え、「The Reason」というスローガンで全肯定できたということが成功の要因だったと予測しています。

もう一つ日本ブラインドサッカー協会の松崎英吾さんが考えた「ブラインドサッカーを通じて、視覚障がい者と健常者が、当たり前に混ざり合う社会を実現すること」
このビジョンは障がい者スポーツの本質的な価値に気づかせてくれます。それは今まで障がい者と関わりが薄かった人たちを振り向かせ、障がい者スポーツをマイナースポーツからベンチャースポーツへと押し上げました。

幸運なことに僕はサッカー業界で確かな「ビジョン」を作り上げたお二人と短いですが時間を過ごすことができました(こんなことを言うとまだ結果は出していないとお二人は謙遜するかも知れません。もっと大きな花が咲きます。時間の問題です。あなたが大成功することを皆が待ち望んでいます)

もしあなたの大切な「誰か」や
あなたの作るビジネスの「地域」が
切っても切り離せないのであれば、是非その「誰か」「地域」のアイデンティティーを肯定してあげてください。肯定したあなたを「誰か」もしくは「地域」は受入れ、そこに新たな命、環境、多様性が生まれます。

なんか人がついてこないと感じている方。

ビジョンを描きなさい。

あなたのビジョンに人がついてきて、自然とあなたに人がついてきます。

FCバルセロナの価値は「意志の光」
サッカークラブのビジョンの描き方(マーケティング目線で)
の記事はこれで以上になります。

この記事を見てくれかた方、少しはお役に立つことができたでしょうか。
もし問題を抱えているのであれば一度休んで、腰を据えてその問題に向き合ってみてはいかがでしょう。

是非あなたの生き方やビジネスの分析をし、大切な「誰か」「何か」を見つけてください。あなたの役割も存在も素晴らしい軌道にのるでしょう。

次回は言語とサッカーの関係についても述べればと思います。

お時間いただきありがとうございました。