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虐待による悪影響は自己責任じゃない

親に虐待されて育てられると、幼い時から理不尽な目にばかり遭います。何も悪いことをしていないのに罵倒されたり、こちらの人格や存在や言動等を否定され続けたり、暴力を振るわれたり、異常な生活の仕方(具体的な内容はケースバイケース)を強いられたり。親の機嫌が特別に悪い時だけそうなるのではなく、日常的にそういったことが繰り返されます。

親と普通に会話したり、一緒に仲良く何かをしたりする機会は非常に少ないか、ほぼ無かったりします。親に言われることといったら罵倒、批判、愚痴、理不尽な命令等ばかり。親が子供に言うべきでない言葉はシャワーのように浴びせられるのに対し、生きていくのに必要なことはろくに教えてもらえなかったりします。

当然、子供の人格、コミュニケーション能力、行動の仕方等には悪い影響が出ます。家の外で親の考え方や言動を真似して怒られたり、嫌われたり。家で普通に会話をしたことがないから、まともな家庭の子に比べて会話の仕方、人との接し方がおかしかったり。その為家の外でもたくさん傷つくし健全な人間関係を経験しづらいので、ますます人格が歪み易くなるし、多くの子供が経験することを経験せずに育つことにもなりがちです。

でも、そうなっている子供を見て「家庭環境が悪いんだな」と気づく人は非常に少ないと思います。多くの場合、育った家庭から受けた悪影響は全て子供本人の責任にされます。「成人したら自己責任」と言う人も多いですが、成人どころか幼少期から容赦なく全て自己責任にされるのが実情だと思います。(私が育ったのは虐待問題について理解がある人が非常に少ない時代でしたので、今もそうなのかはよく分からないのですが、今も状況はあまり変わっていない印象があります)

子供が幼稚園に入園する等して家庭外での集団生活がスタートしたら、家庭で受けた影響は全て子供本人の問題にされがちです。家庭環境がどんなに悪くてもです。そもそも家庭環境が悪いことに周りの人が気づいていないことが多いですから。子供だけが周りから怒られ責められ、元凶である虐待親には「あんなお子さんがいて大変ですね」と同情が集まることすらあります。

大抵の場合周りの人達は親の側の味方をしますので、子供は自分の親がおかしいことに気付けず、悪影響を受け続けてしまうことが多いと思います。仮に気づいても、周りの人達の「親でなくあなたが悪い」という圧力により「そうか、自分が悪いんだ」と洗脳されるので、気づいたことにより救われる可能性は低いのではないでしょうか。この「親でなくあなたが悪い」という圧力に関しては、虐待親が情報操作をして、周囲が子供に悪い印象を抱き子供を攻撃するよう仕向けていることもあります。

子供が自ら助けを求めて動こうとしても、低年齢のうちはSOSの出し方が下手で余計周囲から攻撃される羽目になったり、言葉でうまくSOSを出せる年齢になっても結局「親を悪く言うな」「あなたが悪いから親もあなたに厳しいんだ」と責められるだけだったりします。

こういった周囲の無理解による二次加害が、虐待家庭の子供の人格の歪みを加速させる場合も多いと思います。

親や周囲から受けた悪影響を減らしていくためには助けてくれる人や情報が必要になりますが、そういった人や物に出会うのは容易ではありません。私はネットがない時代に育ったので現在は多少事情が違うかもしれませんが、ネットがあっても、助けてくれる人や情報に出会えるのはある程度子供が大きくなってからの場合が多いでしょう(大人になってからようやく出会う場合も多い筈です)。ですので、多くの場合、出会った時には既に虐待による悪影響をしっかり受けてしまっていると思います。そしてその影響を治療していくには、年単位の時間がかかります。

でも、周囲はそんな事情は理解してくれません。単なる当事者の人格の問題であり自己責任だとみなして、当事者に対して批判したり冷たくしたりする人が多いです。

本当に当事者の自己責任なのでしょうか。私にはそうは思えません。幼い時から毎日、身近にいる異常な人間に異常な言動をされ続けて育って、更に場合によってはたくさんの二次加害にも遭って、悪影響を受けずにいるのは不可能に近いと思います。人には適応力がありますから、そういった悪い環境に「適応」した結果、人格は歪みます。歪ませざるを得ないのです、そんな環境で生きて行く為には。

本人のせいじゃないから当事者は何をしても許されるとか、自分と向き合わなくていいと言っているのではありません。自分と向き合い傷から回復していく為の情報があったり助けようとしてくれる人がいたりするのであれば、そういったものを利用したり頼ったりして、周りをなるべく傷つけない努力や回復の為の努力をすべきだと思います(そういうものなしに回復するのは非常に難しいのが現実だと、私は思っています…)。

ですが、親からの悪影響を受けたこと自体は断じて本人の責任ではありません。先ほども書きましたが、劣悪な家庭環境で育ち、助けてくれる人が少ないかほとんどいなければ、悪影響を受けずにいるのは不可能に近いと思います。

虐待育ちは普通に育った人から見れば厄介且つ不可解な存在だと思うので、敬遠されることがあるのはある程度仕方がないのかも知れません。悲しいけど、誰だって厄介な奴とは関わりたくないですもんね。敬遠する人達を責める気にはなれません。

でも、そうなった原因は本人ではなく育った環境にあります。全部本人の落ち度だと捉える人が多いのは(しかも本人が幼い時から、早ければ物心ついた時から、そう捉えられてしまうのは)悔しいし、遣り切れないなあというのが正直な気持ちです。

最後までお読みくださりありがとうございました。

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