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読書感想 「BRAIN 一流の頭脳」

新聞の下段に乱立する書籍の広告。私はここに目を通すのが結構好きだ。

いつものように広告欄を眺めていると目に飛び込んできたのが、本書を紹介する「脳の力を最大限引き出すプログラム」という文言である。私はもちろん、子供達にも何か活用できる情報があるのではないかと思い、手に取った。

この本を内容をひと言でいうと

脳の能力を引き出すのは「運動」だ。

このひと言に限る。これが読み終えた率直な感想だ。

本書について

と、このひと言でこのnote記事も終わってしまっては、元も子もないので説明を進める。

本書は精神科医である著者が、患者に試してもらい日々効果を確認できていることを「実践型の情報」としてまとめていると共に、『科学的根拠なき話は出来るだけ書かない』というスタンスで書き上げられているものになる。

医学的知見に乏しい私にとっては、理解するのが難しい部分もあったが、具体的事例の記載が多く、「じゃぁ、これをやればいいんだ。」というのが分かりやすかった点がありがたかった。

脳は委縮する

脳の大きさは25歳がピークで、毎年0.5%~1.0%ずつ縮んでいくそうだ。記憶中枢を呼ばれている海馬も1年で約1%ずつ小さくなっていくという。

またストレスを感じると人間はコルチゾールというストレスホルモンを放出するのだが、このコルチゾールが慢性的に分泌される状態であると海馬は委縮してしまうという。更に前頭葉もストレスによって委縮するそうで、事実、極度の心配性の人は前頭葉の各部位が小さいそうだ。

こうやって聞くと、脳はひたすら縮小していく部位であり、衰えは抗えないと、恐ろしい気持ちを抱かずにはいられない。

脳トレで頭はよくならない

脳トレ関連のゲームやアプリは年間100億ドル以上の巨大産業だそうだが、果たして宣伝通りの効果があるのだろうか。スタンフォード大学とマックス・プランク研究所の主催により集まった専門家たち(神経科学者・心理学者など)が「コンピューターゲームが本当に脳の認知能力を高めるのか」を科学的見地から調べたそうだ。

結果は否定的なものだった。ゲームそのものは上達しても、知能が高くなったり、集中力や創造性が改善されたり、記憶力が向上したりといった効果はなかったそうだ。「単にゲームがうまくなるだけ」で、脳の認知能力向上にはつながらないと。また、古くから脳を鍛えるといわれているクロスワードパズルや数独も結果は同じだったそうだ。

つまり、脳トレでは頭はよくならない、ということだ。

脳を鍛えるには運動

では、脳の衰えを抑えるにはどうしたらいいのか。本書では「持久系トレーニング」がポイントであると指摘している。アメリカの研究チームが120名の被験者を対象に調査を行ったところ、持久系のトレーニングを行った被験者たちの海馬は1年間で2%以上も大きくなっていたというのだ。

なお、効果はわりと早い段階で実感できるという。持久系トレーニングを定期的に3ヵ月続けた結果、単語を暗記する能力がかなり向上したという研究結果も出ている。

ただし、過度の運動はストレス反応が強く作用してしまい記憶力の低下を招いてしまうという(まだマウス実験段階で、人間にも当てはまるかは立証されていないそうだが)。脳の機能を向上させるには、少し長めに歩いたり、30分走ったりするだけで充分だという。

学力を伸ばすにも運動

大人だけではなく、子供の学力向上にも運動が効果を発揮するという。このことを表す事例として記載のある、スウェーデンのある地方の小学校で実施された調査結果が分かりやすい。

時間割に体育の授業を毎日取り入れたクラスと、通常通り週2回行ったクラスでの成績を調べたところ、毎日体育を行ったクラスの方が、算数、国語、英語、すべてにおいて成績が良かったという。しかもこれは短期的なものではなく、この効果は何年も続き、卒業時まで続いたという。これは驚くべき結果だと私は感じた。

また、フィンランドの小学2年生258名に行った調査結果も興味深い。高いストレスとなる時間制限つきの計算やプレゼンテーションを終えた子供のコルチゾール(ストレスホルモン)を調べたところ、活動量の多寡(歩数計をつけ活動量を調査)が、コルチゾール濃度とイコールとなったそうだ。ストレス耐性という点でも運動が効果を発揮しているのだ。

では、具体的にどの程度の運動が必要なのか。最大の効果は30分活動を続けること。ただし、12分間の活動で読解力や集中力が上昇、4分間でも物事への集中力が向上するという。先の「脳トレでは頭がよくならない」という事例から見ても、子供達には体を動かさせたい、そう感じた。

なぜ運動が脳に効果的なのか

脳は基本的に、移動する生物だけにある組織であり、脳の大切な仕事は「動きの制御」であるという。つまり、脳なくして身体は動かせない。そして、身体を動かさなければ、そのためにできている脳も機能しない、というのが本書の説である。事実、様々な動物の脳の容積を調べると、高い持久力を有する動物、つまり遠くまで走ることができる動物の脳は大きいそうだ。

そして、運動が集中力と記憶力が高める理由は、我々の祖先の行動から見出すことが出来るという。脳は1万年前からほとんど進化していないため、祖先の行動と進化のメカニズムが現在の我々にも残っているという。

祖先は獲物をしとめるために、精神力を集中し行動することが必要だった。そのため、我々が運動をすることが集中力向上に繋がるのは必然であると。また、祖先にとって動き回ることは新しい住処や環境を探すことでもある。故に我々は行動することにより記憶力向上に繋がる仕組みを持っていると。

また、脳は身体を活発に動かすとドーパミンを放出して気分が爽快になるようにプログラムされているとのこと。それは狩りが生存の可能性を増やすからだという。ランナーズハイではないが、運動が我々に多幸感をもたらす理由もこういった進化の経験が背景にあるのだ。

こういった視点は、私にとって、感覚的に「運動が脳に良い刺激を与える」ということに合点がいく内容であった。

おわりに

最後の章『第10章~「一流の頭脳」マニュアル~』の記述が、本書を読んで「脳のために運動をしなければ」と感じた人にとって、明確な文章な気がするので、抜粋させていただく。

より高い効果を望むなら、最低30分のウォーキングをしよう。
脳のための最高のコンディションを保つためには、ランニングを週に3回、45分以上行うことが望ましい。重要なポイントは、心拍数を増やすことだ。
そして、有酸素運動を中心に行おう。筋力トレーニングも脳によい影響をおよぼすが、どちらかといえば有酸素運動が望ましい。

私はこの文書を読んで、ランニングを始めようと心に誓った。効果が出ることを期待して。そういう行動を促すには充分な情報が本書にはあったと感じた。

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