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◆信楽焼 藤原純さんを訪ねて Vol.③

作家と窯元

純さん
作家と窯元の差が分かんない時期があって…。だから陶芸始めて「作家っているんや」って思って。で、友達のお父さん(が)作家とか、(陶芸を)やり始めるまで知らなくて、みんな窯元やと思ってたんで。でも「この壷が1個何百万やで」っていうのが分かんなくて…。だんだんそういうのも覚えながらって感じですね。

のぶちか&こーすけ
へ~~~。

のぶちか
産地ごとに個性(主産物、作家、窯元、職人に対する考え方やあり方)がありますもんね。

純さん
そうですねぇ。信楽は特に火鉢とか植木鉢とかで産業として成り立っている場所やったんで、だから作家の力がどっちかって言うと弱い産地なんで…。

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⇧素焼きを待つ植木鉢達。

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のぶちか
面白いですね、萩とは逆の構造ですね。

純さん
でも少ないですよね、産業でもってる(※産業として経済的に機能している)所って。だから穴窯やってる作家さんとかすごい扱い悪かったって聞いてましたね。

のぶちか
えっ!?何でですか?

純さん
だからたぶん火鉢とか作ってる人とかの方が儲けてるんで、圧倒的に経済的な格差が…。(窯元から見ると)なんでそういう壷焼いてんのか理解できない…。

のぶちか
あー、仕事として捉えられにくい…。趣味の様な感覚で(捉えられてしまう)…。

純さん
あっ、そうです。だからちょっと遊びで作ってやってんのかなぁ、みたいな…。

のぶちか
いやぁ面白いなぁ~!

こーすけ
すごいねぇ。

純さん
だからあのぅ、今で言う穴窯で焼いてる作品、(例えば)焦げが付いたり、ビードロが灰が掛かってっていうのを、火鉢の時はだめなもんやったんで…。

のぶちか
ほぉ(驚いた様に)!

純さん
わざと下、上げて焼いてたんでぇ…。

のぶちか
分からないです。どういう状態ですか?下を上げる?

(工房から外に移動)

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⇧火鉢を置く台。

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純さん
これ(高さ90㎝位の円筒状の焼物を指して)、火鉢を焼く時に乗せてた台なんですけど、ここにこう火鉢を乗せて焼くんでぇ…。(台の焼けを見ながら)今、こういいう風合いが作品では良いじゃないですか。でも火鉢では駄目なんですよ。だからわざと(台に乗せて)上げて焼いて…。で、作家さんとかはこの下(台周辺の窯の空間)、空いてるんで、そこに「焼くの手伝うんで(自分の作品を)詰めさして下さい」って言って焼かしてもらってはったんで。

のぶちか
なるほど~!

純さん
昔って窯作るお金と焼くお金を稼ぐのが大変やったみたいで、で作家さんとか基本的に売れないんで、で窯元の大きい所行ってこいういう下に入れさしてもらって…

のぶちか
凄い!なんかまるっきりあれだね!萩から来るとなんか全然違う(←と、こーすけに言ってます)!薪が燃料の時代の頃ですよね?

純さん
そうです。

のぶちか
だから灰被り(燃料の薪が灰になった時に直接付着して景色となったもの)とかにならない様に…

純さん
上げてた

のぶちか
へ~!

純さん
この下の奴(台)がすごい良い色が今、付いてて(笑)、

のぶちか
これじゃあもう何十回って(焼かれて)、

純さん
そうですそうです。で、割れて来ると詰めて直してたんで…。すごい分厚いんですよ。

割れに粘土を詰めた跡

のぶちか
あ、ほんとだ。やっぱり分厚くしとかないと何十回も(焼成に)耐えられないんですかねぇ?

純さん
そうですそうです。で、重いの乗せるんでぇ。

のぶちか
へ~、面白いな~!

純さん
だから、信楽はどっちかって言うとそうやって…、お城があるとか殿様がいる訳でもないんで、茶陶とかを焼いてた産地じゃないんで…、水瓶作ってたりとか、種入れる壷だったり…。で、たまたま火鉢っていうのがあって信楽自体がなんかこう景気がその頃は良かったみたいで…。で、それが終わってからすごい景気が悪くなって…、いっぱいつぶれたらしいです。

のぶちか
火鉢が売れるって言うと時代的には…

純さん
戦前です。灯油が一般家庭に出回るまでです。

のぶちか
は~、戦前…。昭和初期ですかねぇ?

純さん
そうです。で、戦後位までは作ってたんですけどね。戦争中はなんかそういう違うもん作ってたみたいですけど。でも火鉢は普通に作って…、一般家庭に必要だったんで。

トンネル窯

のぶちか
火鉢が売れなくなってつぶれる所がつぶれて、次のフェーズでこの大きい産地が火鉢に変わる何を武器にしていったんですか?

純さん
植木鉢です。ちょうどたぶん、一般の家庭にもそうやって趣味だったりができる様に余裕が出てきたところに植木鉢っていうのがちょうどハマったらしくって…。

のぶちか
じゃあ戦後でちょっとずつ豊かになっていく過程で…

純さん
そうです、そうです!
そのタイミングにちょうど植木鉢作って。で、その頃(信楽の)ピークはトンネル窯で焼いたり…、あの50メートル位ある窯です。ずうっとベルトコンベアで進んでいく、あの量産する為の窯です。あの琺瑯とかそういう窯で焼いてたりとか。

純さん 横顔

のぶちか
えっ、50メートルを…?(焼成は)ゆっくり(温度を)上げてゆっくり(温度を)落とすイメージがあるんですけど、どれ位の時間を掛けてそのトンネルを通過するんですか?

純さん
いやでも結構な時間掛けて進んで行ってる。で、だからタイルとかもそうやって焼いてたり…。で、もうトンネル窯、信楽だとあるとこ無いかも知れない…。

のぶちか
ほぉ~…

純さん
トンネル窯ってずうっと焼いてるので、ずうっと作ってずうっと焼いとかないとコストが合わないんでぇ…、で、それがもう合わなくなってそういうとこはみんなやめちゃって…。で、段々量産で何万個も売ってた植木鉢が売れなくなって、手作りの植木鉢とかが逆に小さい感じで(売れてて)…。

のぶちか
じゃあ日本の植木鉢文化は信楽が?

純さん
いや、常滑が先みたいですよ。だから常滑は植木鉢屋さん多いですね。あの盆栽の四角いあぁいう良い(高級な)植木鉢、あぁいう作家さんが多いみたいです。

のぶちか
へ~、泥の関係ですかねぇ?

純さん
も、あると思う。

のぶちか
あれは朱泥なんですかねぇ?

純さん
いや、朱泥まではいかない。表面に朱泥やってるかもしれないですけどね…。常滑は(植木鉢)多いですね。元々は土管作って、その跡すごい駄目になっちゃった産地なんで…。
でも古いのは古いらしくって、産地として。九州と常滑は韓国の人が船で来て…。だから海岸沿いに結構古い窯跡とかがあるらしくって、韓国式の。で、信楽の古い窯も韓国方式のなので、常滑から人が(窯作りに)来たんじゃないか?みたいな。

のぶちか
なるほど、なるほど~。

純さん
なんか陶芸の森(信楽)に金山窯(かなやまがま)っていう復元した窯があって、それ韓国式の窯で、レンガを積むんじゃなくて山の斜面を穴掘っていく感じです。だからトンネルみたい。で、横にこう分かれて、一番上におっきい穴作ってそっから火が出る様に。

金山窯

⇧参考: 滋賀県立陶芸の森

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のぶちか
半地下の穴窯みたいな…、

純さん
そうです、それのデカいやつです。たぶん全然焼けないです。やっぱそのぅ、横そのまま土なんで、熱そっちが持ってっちゃうんです。

のぶちか
はぁ、そういう事か~。

純さん
で、レンガをすると耐熱なんで保温してくれるんです。横が土のままだと全部(熱を)吸っちゃうんで。だから全然焼けない。炊いてる火の前だけすごい焼ける。そっから進化してだんだんレンガを組んで、とか、そういう感じです。

器作り

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のぶちか
どっちかっていうと信楽は職人さんだとかそういう風土の中で、(一方、純さんは)作家性が出てらっしゃるというか…、他所から入ってきて作家性出してるってパターンは割とありそうですけど、地場からなんで…、なんか稀有な存在ですね。

純さん
あぁあぁ、なんかそう言われますねぇ結構…。
で、陶芸始めた頃からあぁいう馬場(勝文)君とかちょっと窯業試験場っていう所が一緒で、でしゃべっててすごい楽しくて、「あ、こういう世界もあるんや!」って。考え方って言うか。

馬場君、その頃ミルクパン作ってて、「それ何するん?」って聞いたら、「朝、牛乳あっためる」って言って(笑)。僕はそんな文化が無いから
「そんなん、あんねんな」って(笑)。そんなら「フランスでやってた」って言って(笑)。んでそんなんとか聞いてたら、すごい面白いなぁって思って。

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のぶちか&こーすけ
ふ~ん(←『そうなんだあ~』という感じで)。

純さん
だから他所から来てる人の方が、そやって「こうしよう」とか明確に見えてたんで、それを聞いたりするのが楽しくて。で、「じゃあ僕もやりたい」って。だから、器始めたのは遅い。

純さんにとっての信楽らしさ

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のぶちか
僕なりに思った純さんの信楽らしさってこうかな?ってのはあるんですけど、純さんのお口から純さんの作品の中に見せる信楽らしさってちょっと聞いてみたいなって思って…。

純さん
さっき言った…、やっぱおじいちゃんに言われたのがきっかけやなって。やっぱ抜け感って言うか…、なんか作り過ぎてなくてなんかカッコつけ過ぎてないみたいな…。なんか素朴な感じですね。なんかこう、この街の雰囲気に似てるかもしれない。あのう、人が素朴なんで(笑)。まぁ素朴って言うとまたちょっと違うんですけど…、なんか癖ある人が多いんで(笑)。だから(僕の信楽らしさは)抜け感だったり、力強い土の感じだったり…。

                           2020年8月某日

のぶちかのひとり言

今回はのぶちか史上初めて、信楽という産地で100年以上の歴史を持つ窯元に育った作家さんにお話を伺ったんですが、聞けば聞くほど産地ごとに色々な歴史や特色があってとても面白いなぁと感じました。

例えば、

萩焼の場合は「作家」という立場、名称を重んじる傾向が強くありますし、信楽はその逆だったという点。

現在ではまたそれぞれの産地でもう少し違った観点も生まれているでしょうが、そういう歴史があったという点はとても興味深かったです。

また、

純さんの独創的な器の形はなぜできたのか?

という点に言及できたのもとても有意義でした。

純さんにはとらわれない「自由」さを感じます。

もの作りのデザインにおいてたまに聞く「もう出尽くした」という台詞は、もしかすると色んなものにとらわれず「自由」になる事さえできれば生まれてくるのかもしれない。

今回の訪問はそんな希望を感じさせてくれる素敵な時間でした。

一方、

フォルムの独創性とは別に、信楽近辺の「素材」を使い、「独自の信楽らしさ」を追求される姿勢には正直驚きました。

なぜなら、

パッと見だけでは純さんの器のフォルムや色から一般的な「信楽らしさ」を感じる事ができなかったから(もちろん良い意味で)。

しかし、

もしもの作りの上で伝統工芸や産地の古典性堅持と、一方でそのあり方に対する不安とのジレンマに苦しむ方々がおられるとするならば、純さんの「信楽らしさ」の追求に見るアプローチの様に、広義に各ジャンルの「らしさ」を再考すると活路が見えてくる様な気がします。
(※古典が悪い訳では一切ありません。むしろ好きです。)

各ジャンルにおけるそれまでのイメージの枠を超え、作り手それぞれの中に思う自由で何にもおもねらない「らしさ」。

それを堂々と創作し続けられれば良いのでは、と。

また、こんな余計なお世話を言うのはのぶちかが「萩焼」という産地に身を置くからでもあるからなのですが、これを機にのぶちか自身も「萩焼」という存在が次代に向けてどんな役割を果たせるか?そんな視点も含めつつ「萩焼らしさ」について、じっくり見つめ直してみる事にします。

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◆「藤原純 陶展」in JIBITA

会期:2021年2月27日(土)~3月7日(日)
平日 13時OPEN/土日 10時OPEN
※会期中の金曜日はお休みです。
作家在廊日:2月27日、28日

WEB販売
2021年内を想定し、現在スケジューリング中です。
もうしばらくお待ち下さい汗。
⇩JIBITA  ONLINE SHOP⇩


⇩藤原 純 Instagram⇩

https://www.instagram.com/jin0815/?hl=ja


⇩JIBITA Instagram⇩

https://www.instagram.com/gallery_jibita/?hl=ja

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Gallery JIBITAの のぶちか と こーすけ(妻のあだ名)です。 山口県萩市で陶芸作品や器、アートを販売しています。 趣味は「家族」です。