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『Marvel's Spider-Man』で辛くも正義のヒーローになった話

 「スパイダーマン」。多くの人に認知されている、世界的にも有名なキャラクター。私はトビー・マグワイアが演じていた、2002年公開の映画『スパイダーマン』くらいでしかまともにスパイダーマンを観ておらず、あとは『MARVEL VS. CAPCOM』シリーズで見かけたくらいしかスパイダーマンとの接点がない。そんな私が「スパイダーマン」になることができる『Marvel's Spider-Man』をプレイして、私自身が完全に「スパイダーマン」になってしまった話をしようと思う。
 前提として、原作や映画の知識がほぼない状態でのプレイであることをご了承くださいネタバレは極力避けるように書いています。あと、少し長いです

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タイムズスクエアで記念撮影

『Marvel's Spider-Man』とは

 2018年9月7日にPS4用ソフトとして発売されたオープンワールドアクションアドベンチャーゲーム。これを書いている2020年7月現在では他機種ではプレイできないので、PS4でしかプレイできない作品
 近年ではかなり評価の高い一作になっており、PlayStation Awards 2018では「ユーザーズチョイス賞」及び「ゴールドプライズ(Gold Prize)」を受賞。翌年の日本ゲーム大賞2019では、年間作品部門の「優秀賞」、PlayStation Awards 2019では「プレイステーション 25周年記念ユーザーズチョイス賞」及び「Platinum Prize(プラチナプライズ)」を受賞。それ以外にも、多くのレビューサイトで軒並み高評価となっており、単純に大作だから受賞したわけではなく、多くのプレイヤーのハートをしっかりと掴んでいることがわかる

百聞は一見にしかず。
まずは極上のアクションを見てもらいたい。

行った気分になれる、作り上げられた「ニューヨーク」

 『Marvel's Spider-Man』の舞台となるのはアメリカのニューヨーク。正確に言うとニューヨーク市のマンハッタンでしょうか。私は海外旅行というものをあまりしたことがなく、どれほど再現されているかはハッキリわかっているわけではないのですが、本当に1つの街がしっかりと作り込まれているので、移動するだけでも楽しい
 建物はもちろん、看板や車通り、話しかけてくる一般人にも特徴がある。全員がスパイダーマンを支持しているわけではなく、悪態をついてくる人も結構いるのがまた良い。一般人のファンと握手やハグ、ハイタッチなどの簡単な交流ができるのも遊び心があって面白い
 調べてみると、どれだけ再現されているかを検証している記事があるようです。記事はこちら。ニューヨーク、実際に行ってみたいなぁ。

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夢のタイムズスクエア

ボリューム不足感もある? 100%クリアまで20〜30時間程度

 本作には、大きく分けると2つのミッションが存在する。ストーリーの本筋となる「メインミッション」とその他の「サブミッション」だ。「メインミッション」はストーリーが10〜20ほどの細かいミッションで区切られ、1つのミッションが終わると、次のミッションを始めるまでは自由に行動ができ、その間に「サブミッション」を楽しむ、というスタイルになっている。正直、メインストーリーは意外と短いため、サブミッションを無視してメインミッションだけを進め続けると、あっさりとクリアできてしまう。そのため、人によっては物足りないと感じてしまうかもしれない
 私としては、個々のミッションはあまり長くなく、サクサクと進んでいくため、1時間程度のプレイでもストーリーが進行していく手応えを感じることができるのが嬉しい点である。どっしりと腰を据えて長時間プレイすることがあまりないので、長時間のミッションが数個という形式ではなく、短いミッションが複数個連なる形式というのはとても好印象だった

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夜のニューヨーク。美しい。

スパイダーマンらしい、爽快で身軽なアクションと移動

 精巧に作られた街を駆け抜けるのは夢がある。そんな夢を叶えてくれるのが『Marvel's Spider-Man』。R2ボタンを押しながら左スティックを倒してるだけでニューヨークの街中をスイスイと移動できてしまう。良いタイミングで✕ボタンを押してジャンプすればもうスタイリッシュな移動の完成。
 最初のミッションでは、操作説明をしながら実際にアクションをさせる方式なので、自然と操作が身につくようになっている。操作に慣れるのは時間がかかるので、最初は上手くできなくても大丈夫。いろんなミッションをクリアしていくうちにスマートにスパイダーマンを動かすことができるようになる。
 本作は大きな1つのマップになっており、最初は「うわ、マップ広すぎ……」と若干移動に不安を感じていましたが、スピーディーでスムーズな移動のおかげでマップの広さが全然気になりませんでした。あっぱれ。端から端までは流石に遠いので、マップ上で特定の場所に一気に移動できるファストトラベルも完備されている。その場合は「電車に乗って移動するスパイダーマン」というコミカルな映像が差し込まれるのもユニークで良い。目的地まで2000mを超える場合に使うと良いと思う。
 高いところから落ちてもダメージは一切受けず、再びR2押しながらジャンプをすれば軽快に復帰できる点も良い

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移動中、肩を貸すスパイダーマン

ゲーム初心者でもわかりやすい親切な表示

 「○○しろ」というミッションが発生した際に「で、結局どこに行けばいいの?」という疑問が出てくる人も少なくないでしょう。スパイダーマンはそんな疑問を極力少なくするようなシステムが実装されている。マップ上や画面に目的地のマーカーが常に表示され、マーカーへの距離も「○m」と表示してくれる親切さ。戦闘中にも一撃必殺のような技を出せるようになったら「○+△」とボタンが表示されるので、そのとおりに押せばいいだけ。
 ゲーム中のマップ上には様々なイベントの進行具合が簡単にわかるようになっており、サブミッションがどれだけ残っているのかが把握しやすくてとても良い。各サブミッションにはクリアまでの期限はないので、本編クリア後にまとめて終わらせるようにしても良いのが嬉しい。個人的には目的地の近くにあるサブミッションをついでにクリアしておく、という進め方がおすすめだ。
 「メインミッション」の一部には、あえてすぐに次の目的地を表示せず、スパイダーマンが「少しパトロールするか……」とサブミッションを進めるような時間を作ってくれる配慮もされている。どのタイミングでサブミッションを進めればいいかがわからないプレイヤーも多いと思うので、「パトロール」という理由付けもあった上で隙を用意するという仕掛けはお見事

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物語が進んでいくと、ロックされたものがどんどん解除されていく。

 進め方がわかりやすく、丁寧に作られているおかげか、メインストーリークリアのトロフィー取得率は50%を超えている。素晴らしい。

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他のゲームでは意外とストーリークリアのトロフィー取得率は低いものなので、ギリギリでも50%超えは素晴らしい数字だと思う

ユーザーに優しすぎるほどのありがたい設定

 ゲーム中、時折挟まれるパズルや演出中にボタンを押す必要があるQTE(クイックタイムイベント)といった要素が出てくる。QTEは気分を盛り上げるため、ということで割り切れるのですが、パズルは邪魔と感じるほどでした
 こういった意見を予期していたのか、オプションには「パズルスキップ」や「QTEを自動化」するという項目が用意されている。これでボタン連打に失敗して自動車の下敷きになるスパイダーマンを見なくて済む……。
 パズルはそこまで難しいものではないですが、ゲームプレイのテンポを損なう面もあります。また、QTEがあるシーンは少なくはないので、苦手な人は各設定を変えてからプレイするとアクションや映像に集中できると思われる。
 また、ゲーム中に難易度を変更できる点も地味にありがたい。真ん中くらいの難易度でも意外と戦闘で死んでしまうことが多いため、気軽に変更できるのは良い。

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「遊びやすさ」という項目が用意されている。素晴らしい。

手軽にスタイリッシュな戦闘! でも、ちょっと難しめ?

 悪者がいたら懲らしめてやるのがヒーローの役目。メインストーリーではもちろんのことですが、移動中にも奴らはそこら中にいる。颯爽と登場して、ボコボコにしたらあとは警察におまかせ、というスタイルがスパイダーマンだが、毎回そう簡単に勝てるわけではない。私の場合、颯爽と登場して、ボコボコにされてゲームオーバーという、なんともかっこ悪いヒーローの姿を何度も見せられることがしばしばあった。
 戦闘はそこまで複雑ではないものの、ガジェットやら技やらを上手く使いこなそうとすると結構忙しい。攻撃ばかりではなく、回避を上手くできるようになると受けるダメージが減り、余裕で勝てるようになるはず
 私がプレイしたゲームの難易度はAMAGING。いわゆるノーマルの難易度だが、結構負けることも多い。スパイダーマンは特殊な能力を持つものの、打たれ弱い部分も多くあるキャラクター。銃で撃たれたり、棒で殴られたり、爆弾で吹っ飛ばされたりしたら、あっさりとやられる。体格差のある相手には簡単に攻撃は通らず、糸で自由を奪った状態にしてから殴らないといけない。ゴッ!
 敵勢力の拠点のような、敵の数が多い場所での戦闘はボス戦なんかよりも難易度が高く、慣れないとゲームオーバーの嵐となる。『Marvel's Spider-Man』で一番難しいと思う
 後半は嫌でも戦闘が増えてくるため、辛くなったら素直に難易度を下げると良いと思う。いや、マジで。
 敵を倒す瞬間や回避する直前に画面がスローになる演出は映画的で良かった

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アジトを潰して、ハイチーズ

好き嫌いが分かれるかもしれない、ピーター・パーカーの軽口

 最初に書いたとおり、私はあまりスパイダーマンというキャラクターを知らない。映画は随分と昔に見たので、スパイダーマンの性格をよく知りませんでした。なので、本作での口調はイメージとは少し違っていたかもしれない。
 以下は、ゲーム中にスパイダーマンであるピーター・パーカーが戦闘中に発するセリフの一部です。記憶を頼りに書いているので、正確でなくても雰囲気が伝わればと思います。

 「あれ〜? 鍵屋さんじゃないよね?」
 「地下って家賃いくらなの? 友達が気になっててさ」
 「小さい頃の僕に、
  将来ロケットランチャーで撃たれるよって言ったら興奮するだろうなぁ」

 ……軽い。ストーリー上でもジョークを連発するため、シリアスな作品が好みという方には本作は向いていないかもしれない。

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ジョークと煽りの二刀流

軽いスパイダーマンと打って変わって、ストーリーは若干重め

 本作では主人公であるピーター・パーカーがスパイダーマンの能力を手に入れてから8年が経ったある日、ニューヨークを拠点として活動していた悪の親玉である「フィスク」を倒すシナリオからストーリーは始まる。これで平和が訪れる……と思いきや、また新たな悪が蔓延ることに。そんな世界で戦うスパイダーマンの悪との戦いが描かれる。
 しかし、『Marvel's Spider-Man』では「正義のヒーローであるスパイダーマンが悪者を懲らしめてハッピーエンド」という単純明快なストーリーだけ描いているわけではありません。スパイダーマンであるピーター・パーカーも1人の青年なので、苦悩や葛藤もあり、そういったものを乗り越えて敵と戦っていきます。
 個人的には終盤のストーリーはちょっと心苦しいというか、胸を締め付けられるような感覚になりました。なので、終始明るいストーリーといったものを期待していると、割としんどくなってしまうかもしれないので注意。
 完全にイメージですが、「アメコミって感じ」って思いました。
 本作は完全オリジナルストーリーとなっていますが、原作に登場するキャラクターや敵が多く登場するため、スパイダーマンファンだとより一層楽しめるかもしれない。私のように詳しくない人でも楽しめたので、知らなくても問題はない

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全ては平和のために

一部ミッションの難易度は比較高め

 その「一部ミッション」はメインストーリーではなく、中盤からプレイができる「チャレンジミッション」というもの。4種類のチャレンジがあり、スコアに応じてチャレンジトークンというアイテムが獲得できるというもの。クリア自体の難易度はそんなに高くはないのですが、最高ランクである「アルティメット」を目指すとなかなかに難しい。シビアなラインに設定されたスコアなので、操作ミスがほぼ許されない設計になっている。「これをクリアしないとエンディングが見られない」というわけではないので身構える必要はないのだが、トロフィーを狙うなら多少は覚悟しておくと良い
 チャレンジミッションの中でも、「ドローンチャレンジ」というドローンを追いかけて捕まえる、というチャレンジは精密な操作が要求されるため、移動時に大雑把な操作で移動していると細やかな操作を求められる本チャレンジはストレスフルになってしまうかもしれない。ダメだと思ったらキッパリと諦めよう

三部作となるDLC「摩天楼は眠らない」

 DLC(ダウンロードコンテンツ)では『Marvel's Spider-Man』のエンディング後のストーリーが描かれており、『摩天楼は眠らない』という表題の3つのシナリオが存在しています。「三部作」と書いたように3つで1つのストーリーになっており、本編をクリア後に3つを通してプレイするのをおすすめします。あまりいないと思いますが、2つ目からやったりすると、前回までのあらすじみたいなのでネタバレをくらうので注意。
 DLCでは新しいスーツが手に入ることと、新しい敵と戦うことができる。新しい敵は厄介で強めなので、本編で鍛え上げたスパイダーマンで挑もう。ストーリーは結構暗めで、恨みや憎しみといった負の感情が強く描かれているため、あまり爽快な感じはしない。本編のとあるキャラクターを見る目が変わってしまうかもしれない。
 1つのシナリオのクリア時間は、すべてのトロフィーを取得して4〜5時間程度。3つ合計で15時間程度で終わる。スパイダーマンの世界にもっと浸りたいという方は是非とも味わってみて欲しい。
 3つ目の「白銀の系譜」の最後には、ちょっとしたおまけもあるので、プレイするなら最後までクリアすることを強くおすすめする。

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DLCは全部パンツ一丁でクリアしてた。

その他、気になることを雑にまとめる

 『ワンダと巨像』で感動した「フォトモード」だが、『Marvel's Spider-Man』では思った以上に映えるポイントが見つけられず、上手く活用ができなかったのが残念。夕日や夜景はキレイなんだけどなぁ……。
 音楽についてはゲームというよりも映画のようなBGMで、良くも悪くも印象に残るものは少なかった。スパイダーマンが止まると音楽も止まり、スパイダーマンがウェブスイングで華麗に移動し始めると音楽も始まるといった連動がしており、まさに「動かせる映画」といっても過言ではない空気感があった。作曲はJohn Paesanoさん。映画では『メイズ・ランナー』、ゲームでは『Mass Effect』『Detroit:Become Human』なんかを担当していたらしい。
 単純な「アクションゲーム」ではなく、「アドベンチャー」という要素も含まれているため、スパイダーマンだけを操作して悪者をやっつける、というものではなく、戦闘能力のない他のキャラクターを操作し、敵に見つからないように進んでいくステルスアクションっぽいシーンや、ちょっとした謎解きパートなんかもある。好きな人は嬉しいだろうけど、個人的にはガッツリとアクション特化で、スパイダーマン無双をしたかった気持ちがあったので、少し面倒だなと感じる場面もあった
 ミッションで失敗しても、リトライして再開するところが失敗する直前のようなケースが非常に多く、リトライによる繰り返しプレイのストレスは少なかった
 スタッフロールがクソ長い。ゲームを作った方に対する敬意を払うために、スタッフロールは飛ばさずに全部流すというこだわりを見せたら、40分くらいスタッフロールがあってたまげた

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やはり夕日は映える

最高クラスに作り込まれた街でカッコいいヒーローになれる名作

 いろいろな賞を受賞していることが納得できる高品質な作品。ありとあらゆる場所に開発者の親切心が散りばめられており、最後まで迷うことなく快適に進めることができた。多くの人にプレイしてもらえると思う。
 原作や映画にも登場する敵も出てくるが、ファンでなくても楽しめるから安心して欲しい
 最近では、セールの際にDLCがすべて同梱されているGOTY(Game Of The Year)エディション2000円ほどで買うことができるので、アクションゲームが好きであるならば必ずプレイしておきたい一作となっている。

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ぜひ、体験してもらいたい

PS5『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』のお披露目

 先日行われたPlaystation5の発表会で流れた映像の中にスパイダーマンもいた。物語は『Marvel's Spider-Man』から1年後。主人公がピーターからマイルズに変わり、新たな『Marvel's Spider-Man』の世界を見せてくれることは間違いない。マイルズは、2018年に公開されたスパイダーマンのCGアニメ映画『スパイダーバース』の主人公でもあったらしい。『スパイダーバース』を観つつ、楽しみにしておこう。

期待しかない

 それでは。

 おわり。


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プラチナトロフィーだけ狙うなら難易度は不問であるため、時間をかければ多くの人が取得できるかと思います。

あなたが私をサポートすると、私はあなたからサポートされることができます。