イノベーション(2):ビジネスモデル

今回はビジネスモデルを軸としたイノベーション、新サービス開発についてです。

前回はR&Dや製品開発を中心した技術イノベーションの話でしたが、今回はフリーミアムやサブスクリションなど売り方や課金方法、また、マッチングサービスや広告モデルなど、主にサービス開発面の話が中心になります。

ビジネスモデル

ビジネスモデルの入門書としては「経営戦略全史」と並んで三谷宏治さん「ビジネスモデル全史」が読み物としても楽しめて、かつ、過去のモデルとの類似点や相違点がわかりやすくまとめられているので、まずはお薦めです。

note内でも「ビジネスモデル2.0図鑑」を執筆された近藤哲朗さんが全文公開!というチャレンジをされていますので、こちらを読まれてみると、様々なビジネスモデルの最新事例が一望に把握できるかと思います。

画期的と言われる100個のビジネスモデルについて、特にどの部分が新しい仕組み(モデル)なのか、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の4つのカテゴリーに分けて、わかりやすく図解されているのはこれまでに無かったアプローチです。

では、実際に大手企業やベンチャー企業において、ビジネスモデル開発をどう進めていくのかについて、理論的なフレームワークを提示したものとして「ビジネスモデル・ジェレーション」が有名です。

 特に本書の中で提示された「ビジネスモデルキャンバス」が有名です。
ビジネスモデルを検討・分析する上で、「顧客」「価値提案」「インフラ」「資金」の4つの領域をカバーする9つのブロックに分けて考えることを提言しています。
このフレームワークをすべての関係者が意識することで、新規事業開発にありがちなジャスト・アイデア的な机上の空論、リスク無視の前向き論者と何事にも保守的な否定論者との間における堂々巡りの議論を回避し、より具体的なビジネスプランに効率良くブレークダウンすることができるようになるでしょう。

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デザインシンキング

さて、こういったこれまでの革新的な事例やプロセスフレームワークがあっても、自社組織や新規事業開発メンバ、または起業家自ら実際に世の中で役立つ、市場や顧客に受け入れられる新たなビジネスモデルが具体的に浮かんでこなければ、イノベーションは生まれません。
 (海外のビジネスモデルの二番煎じでいく手も多いにありますが。。)

では、どうやって、これまでの世の中にない革新的なビジネスモデルを生み出していけば良いのか? 偉大な夢想家の出現を待たなければならないのか? 普通の企業人でも発想豊かにビジネスモデルを生み出すことができないのか?と考え、「デザイン思考」というアプローチが提唱されたのではないか?と推測しています。 

なかでも、スタンフォード大学デザイン研究所 d.school のハッソ・プラットナー教授が提唱した「デザイン思考の5段階」が有名です。
 (プラットナー教授はSAP社を創業したドイツ人の一人)

このデザイン思考のフレームワークは共感、問題定義、創造、試作、検証の5つのステップを繰り返し行うことで、顧客志向のビジネスモデルを自由なアイデアからより洗練されたものへと昇華させていきます。

国内の有名大学でも、このデザイン思考ワークショップが開催されていますし、社会人向けの講座も多くありますので、皆さんも一度、受講してみてはいかがでしょう?


私自身も以前、社内のデザインシンキング研修を横で見ていたことがあるのですが、アイデア出しの千本ノックに近い感じがしました。

イノベーションの成功確率が千3つであるなら、デザインシンキングの手法を使って、社内でいくつかのチームを作り、みんなで千のアイデアを出しあった中から最終的に事業化できそうなものを絞り込んでいけば、偉大な夢想家に任せなくても効率的に新規事業開発(or 課題解決)が出来るんじゃないか!?というのは、いかにもロジカルシンキングに長けたドイツや米国の教授陣が考え出しそうなことだとも感じました。

さて、最後にデザインシンキングでアイデア出しが出来たとしても、前回のR&Dの回に述べた3つの関門のうち、サービス化/製品化(魔の川)までは乗り越えられても、事業化(死の谷)や産業化(ダーウィンの海)を乗り越えられるかは未知数です。

そこでd.schoolの創設メンバを中心に書かれた「デザインシンキング・プレイブック」では、より効果的なデザインシンキングの進め方に合わせて、ビジネスモデルキャンパスやデータ分析・AI技術などシステムシンキングとハイブリットに結び付けることで、ビジネスアイデアの事業性をより深めて成功確率を上げていく手法が提唱されています。

私自身はこの書籍がビジネスモデルによるイノベーション・フレームワークの決定版と考えていますので、興味のある方はぜひ読まれて、実践してみてください。

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