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情報システム(2):戦略的側面

従来の(伝統的な)経営管理の枠組みでは投資対効果がわかりづらくマネジメントしづらかった「情報システム」。今回はその戦略的側面について過去を振り返りながら書いてみたいと思います。

議論をわかりやすくするために、企業経営に対する情報システムの戦略的側面として「バリューチェーン高度化」「ビジネスモデル変革」の大きく
2つに分けたいと思います。  
自社及び取引先・仕入れ先までの業務プロセスを情報システムによって効率化したり、データ分析により高度化する側面を「バリューチェーン高度化」
ネットワークを使った警備事業や宿泊予約事業への進出など従来ビジネスとは異なる事業を創造していく側面を「ビジネスモデル変革」とします。 

SIS(戦略的情報システム)

まず始めに80年代のSISブーム。社会人になった私がまだ「若手」と呼ばれていた頃です。

楠木健教授杉浦泰さんの下記、記事にあるように当時、様々な書籍や記事が出されました。(ちょうど、いまのDXブームと同じような状況です)

コンピュータやネットワークの飛躍的な発展に伴い、「戦略的」に情報システムを使いこなせば、自社事業を大きく成長させることが出来るというのがその主張です。

ここでは、セブンイレブン(POS)、花王(VAN)における戦略的側面は「バリューチェーン高度化」、家庭向け小口配送事業に進出したヤマト運輸やオンライン警備保障を始めたセコムは「ビジネスモデル変革」に属することになるでしょう。

一方、この記事内で紹介されている日経ビジネス1989年8月14日号 特集のリード文に、以下のように情報システムへの投資対効果がわかりづらい点を指摘していました。

合理化のためのコンピューター投資と違って、効果を金額で表せないだけに決断には勇気がいる。しかし、立ち止まってはいられない。経営トップであるあなたが明確な目標を定め、全社を引っ張る強力なリーダーシップを持つことが求められている。

その後、90年代後半にはERPブームが訪れます。
同じ杉浦泰さんらの連載記事にもこの話が載っていますが、こちらは企業内の業務プロセスをERPで支えていくということから「バリューチェーン高度化」の話となります。

この頃、ほぼ同時期に「リエンジニアリング革命」が日本で紹介され、
ERPを導入すれば抜本的な業務改革が可能になると謳われたことで、
ERPブームに拍車がかかったと考えています。

しかし、日本企業はERPを導入することが目的となり、現場の業務をそのままコンピュータに置き換え、抜本的な業務改革をして来なかったのが、いまも大きな反省点として上げられています。


ネット革命、eビジネス

その次にインターネットを使ったECサイトやマーケットプレイスが
BtoB向けにも数多く立ち上がり、注目されました。
大手IT企業も着目し、その筆頭がルイス・ガースナー率いるIBMでした。
彼らから発表された eビジネス という名前とコンセプトが一般企業に対してもイネット革命とも呼ばれたインターネットのインパクトを広く知らしめたのではないでしょうか?

eビジネスそのものは、自社の販売チャネルやサプライチェーンにインターネットを活用していこう(バリューチェーンの高度化)というものだったと思います。

その一方で、eマーケットプレイスやECサイトを主戦場とするドットコム企業が飛躍的に成長し、時価総額でも既存事業者(オールドエコノミー)に近づいてきたのがちょうどこの頃です。
以下のサイトの連載記事では、オールドエコノミーに対するeビジネスのインパクトを詳しく説明しています。

では成長著しいドットコム企業は、どこも楽勝で成果を上げられたかと言えば、そうではありません。
既存市場とは異なるマーケティング・ロジックで雨後の筍のように現れる競合ベンチャーとの闘いに勝って、独り勝ち(Winner Take All)し続けないとネット企業における圧倒的な「規模の経済性」「ネットワークの経済性」を得られなかったのです。(ビジネスモデル変革)

そして、勝組となったドットコム企業はさらに周辺に事業領域を矢継ぎ早に拡張・吸収してGAFA、中国ではBATH(バイドゥ・アリババ・テンセント・ファーウェイ)といったメガ・プラットフォーマーへと成長していきました。

プラットフォーマーの戦略については、ビジネス・ブレークスルー大学教授で数々のビジネス書を出されている平野敦士カールさんが2010年に出版された「プラットフォーム戦略」に、既存の業界とは異なる戦略的背景が詳しく書かれています。

個人的には平野さんが講演等でよく紹介されていた「プラットフォーマーは合コンの幹事なんです。」という話がわかりやすくて大好きです。

男女の飲み会である合同コンパ(合コン)で譬えれば、わかりやすいでしょう。 すなわち、男性グループと女性グループという二つのグループを、出会いの「場=プラットフォーム」によってマッチングすることで、双方のグループに付加価値を与える合コンの機能は、古典的なプラットフォームです。
 このとき、その場(プラットフォーム)の主宰者を「プラットフォーマー」と呼びますが、これは合コンの幹事をイメージするとわかりやすいと思います。
そして、合コンで最も多くの情報を手に入れることができるのは、いうまでもなく幹事です。なぜなら彼はその時間や場所はもちろん、誰を誘うかも自由に決められますし、参加者全員の連絡先という情報も入手できます。 さらにいえば、幹事はどの人とどの人の相性がよいのか、誰が誰を気に入っているのか、という情報すらも得ることができます。
合コンの幹事はまさにフリーマンのネットワーク中心性における「ハブ」になっている、ということができるでしょう。

さて、次回はいま注目のDX(デジタルトランスフォーメーション)について、私なりの考えを書きてみたいと思います。



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