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雨がとても美しいウディ・アレンの新作『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』

ウディ・アレンの新作映画『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』"A Rainy Day in New York"は、香港では昨年(2019年)秋に公開となっていた。今般日本でも公開される運びになり、良かったと思う。(日本公開2020年7月3日)

香港へ来てよかったと思うことの一つに、ほぼ毎年必ずウディ・アレンの新作が公開されてきたこと。それもその辺の映画館で普通に上映していてくれたことだった。だが、MeToo運動の高まりでウディ・アレンの評価が大きく変わり、この『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』も香港での上映は諦めていたのだが、公開され嬉しく思ったのだった。

香港版予告編 Reference YouTube

ストーリー

アシュレー(エラ・ファニング)は、アリゾナの大学新聞の取材で、セレブな映画監督ローランド・ポラード(リーヴ・シュレイバー)とマンハッタンで会えることになり大興奮。ボーイフレンドのギャツビー(ティモシー・シャラメ)は、これは良い機会と彼女を自分の出身地NYで親に紹介しようと考える。
ギャツビーは色々なプランを立て、アシュレイを案内してあげようとマンハッタンへ行くが、彼女が監督にインタビュー後に、撮影現場へ行ったりと予定外の行動になったため、ギャツビーも偶然会った自分の元カノの妹であるチャン(セレーナ・ゴメス)と時間を過ごすことになる。
雨のマンハッタン、二人の運命はそれぞれ少しずつ変わっていくのだった…

【見どころとミニ解説】

この映画で特筆すべきは、エル・ファニングだ。彼女のチャーミングなことったらない。モノローグの場面が何度かあるが、それがものすごーく良い。もしウディ・アレン個人の問題がなければ、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされていたんじゃね?と残念に思うほどだ。
劇中、映画監督へのインタビュー中に「私はヨーロッパの映画が好きです。一番好きなのは黒澤明です」と言ったりして、そういうおっちょこちょいな感じの女の子をさらりと演じられるんだから、本当に実力があると思う。脚本家のテッド(ジュード・ロウ)に、セクシー俳優フランシスコ・ヴェガ(ディエゴ・ルナ)を紹介してもらい、有頂天になるところもかわいい(笑)

それからもう一つ特筆すべきは、カメラの“名匠“ヴィットリオ・ストラーロだ。ウディ・アレンとの仕事は、最近は『カフェ・ソサエティ』『女と男の観覧車』と続いていたが、題名の通り「雨」のニューヨークをこんなに自然に、美しく撮るか!?と唸ってしまう。
ヴィットリオ・ストラーロと云えば、ベルナルド・ベルトルッチの『ラスト・エンペラー』やフランシス・フォード・コッポラの『地獄の黙示録』などを思い出す人も多いだろう。
ウディの前作『女と男の観覧車』のラスト近く、ケイト・ウェンスレットの大熱演をワンカットで撮ったのもスゴかったなぁ。

映画は、同じ時間を雨のニューヨークで過ごす恋人同士が、別々に行動し、なかなか一緒に会えないという、すれ違いが生むドラマ。その偶然が重なるがために、ある登場人物の秘密が明かされる場面は心に滲みる。

いずれにせよ、コメディ要素もいっぱいある映画になっている。ウディ・アレン作品群の中では、傑作の部類には入らないかもであるが、ぼくのようなウディの映画ファンには、そのテイストがとても楽しめる出来であった。(笑い声がイヤで離婚する、というくだりは大笑いした。あ、ネタバレやね。すまぬ)

女性ファンは、ティモシー・シャラメが見たくて劇場に行く人も多いかも知れない。セレーナ・ゴメスとの博物館デートシーンは絵になってていいですよ。

てなことで。


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