庭文庫の本

庭文庫で選んでもらった6つの夏の物語


今年の夏も、岐阜県恵那市の山の中にある古本屋「庭文庫」に行ってきました。

縁側からは明るい緑とゆるやかな川を眺めながら、風鈴とレコードから流れるジャズは心地よく、風はそよぎ森の香りを吸い込み、思い思いの時間を過ごす..。

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そんな庭文庫のおふたりに「夏にぴったりな物語」を選書していただきました。やまとちゃんにぜひ読んでほしいという本もあって自分のために選んでもらった本の愛着ぶりはすごいものです。

せっかく思い入れのある本たちなので感想を残しておきたいと思います。

<目次>
・『GO』金城一紀
・『カラフル』森 絵都
・『モモ』時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな話 ミヒャエル・エンデ作 大島かおり訳
・『ストリートの精霊たち』川瀬 慈
・『沼地のある森を抜けて』梨木香歩
・『抱擁、あるいはライスには塩を』江國香織

『GO』金城一紀

朝鮮籍を持つ少年の物語。何か(良くも悪くも)起こるんじゃないかというソワソワした気持ちと主人公の性格に抱く安心感は、夏の夜に蒸し暑い地元の道路を自転車で走り抜けるのと同じ気持ちがした。あっという間に読み終わってたのでこれが爽快感ある読み応えってやつか!と思った。主人公のオヤジがとても好き。

『カラフル』森 絵都

主人公の行動やセリフに何でこんなことするの!と終始歯がゆかった。特に母親に吐き捨てるセリフには全く共感ができなかった。本当にこんな事言う中学生がいたら結構悲しい。でも主人公の一人称が「俺」なのは印象からは不釣り合い感と違和感が絶妙で、中学生の頃に男の子の友達に感じたそれと同じだったのでとてもリアルだなと感じた。母親の言葉と境遇には同情してしまうところが多かった。

『モモ』時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな話 ミヒャエル・エンデ作 大島かおり訳

本を読んでるのにまるで映画を見ているように物語の世界が頭に入ってくるお話だった。モモの世界は、自分と自分のいる世界に繋がるところがたくさんあって、モモを読んだあとの渋谷にいるとみーんな”灰色の男達”に見える。見える景色全てに慣れてしまったことに怯えたし、こんなところを平気で歩いていた自分に驚いた。私もモモに出会ったからにはモモの役割を引き継ごうと思う。

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『ストリートの精霊たち』川瀬 慈

この本に今出会って本当に良かったと思う。私の学科の友達たちも共感できるところが多いんじゃないかな、とか思ったりした。人を知る、暮らしを知るというのは、自分が考えているよりももっと”本当のこと”であると思った。全て正直に素直に共に生きることで感じることなのだと知った。このあとの感想文で出てくる『抱擁、あるいはライスには塩を』の桐おじちゃんをどうしても重ねてしまって、余計桐おじちゃんの死が悲しかった。

『沼地のある森を抜けて』梨木香歩

長い長いお話だった。一気には到底読めなかったのでドラマをずっと見ている感じがした。お話の途中に挟まれる「かつて風に靡く白銀の草原があったシマの話」は、絵に描けそうなほど頭に残る世界だった。淡々と話す主人公と比較してしまうからか、風野さんの容姿や仕草や話し方にどきっとしてしまう。生命の孤独ー自然の延長にあるふたりの関係性は、あいまいではなく明確だった。同じ目的と感覚を持つことでウォールは溶けるのだ。作者の梨木さんの比喩が天才かよ...の言葉しかなかった。

『抱擁、あるいはライスには塩を』江國香織

大きく立派なお屋敷の一生のお話。いろんな人間の人生を疑似体験できる。読んでいるとどんどんこのお話が終わってほしくないと思ってしまった。読み終わってしまったときはとても寂しかった。儚いとか美しいとかそうではなく、ただひたすらに幸せな物語なのだと思う。尊いお家(おいえ)の血が流れていくのを見ることができて”有り難い”とすら感じる。桐おじちゃんの遊学の章がとても好きで、さっき書いた『ストリートの精霊たち』も本当は桐おじちゃんが書いているのではないかと思ってしまうくらいだ。愛しい気持ちになる本。


淡々としかもかなり短い感想文になってしまいましたが、読み返したら違う感想が出てくるものなのでまた書き加えようと思います。


最後に、令和最初の夏に6つの素敵な物語を選んでくれた庭文庫のみきさん、ももちゃんありがとうございました!6つの物語も私の夏の思い出になりました。やっぱり物語は良いですね。

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