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「新しい実在論」を分かり易く学ぶ➎(最終回)

《これまでの記事》
「新しい実在論」を分かり易く学ぶ❶(2020.6.5)
「新しい実在論」を分かり易く学ぶ➋(2020.6.20)
「新しい実在論」を分かり易く学ぶ➌(2020.7.6)
「新しい実在論」を分かり易く学ぶ➍(2020.7.17)

◇第5回「意味の場について」2020.8.5/8.21/9.2 ZOOMにより実施

BPIA (ビジネスプラットフォーム革新協議会)の会員向けに行っている研究会「Think!」。2020年度の研究会は、『Think! 新しい実在論研究会 〜新実在論で世界、社会を捉え直す〜』というテーマで、オンライン講座という形態で進めています。https://b-p-i-a.com/?page_id=8119          「本質主義vs.相対主義」という対立から抜け出す第三の道を開く、マルクス・ガブリエルらが提唱する「新実在論(新・ドイツ観念論)」などの最新哲学を探究します。

2020.8.5/8.21/9.2に、研究会第5~7回(7回は最終回)がオンライン開催されましたので、以下要旨をまとめて報告いたします。

本研究会では、マルクス・ガブリエルの著作『なぜ世界は存在しないのか』(講談社選書メチエ刊)を基本書としています。

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今回は「意味の場」とは何かについて考えます。書籍では、第2章後半から第3章「なぜ世界は存在しないのか」に該当します。

 なんと既に第2章でマルクス・ガブリエルは「世界が存在しないこと」を証明してしまいました。※証明プロセスは、「新しい実在論」を分かり易く学ぶ➍(2020.7.17)を参照くださいね。

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世界は存在しない。または、総体は存在しない。しかし、「意味の場」が存在する。ものごとは、何らかの「意味の場」の中に現われる。

ということでした。

で、今回は

「意味の場」

についての理解を深めます。

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繰り返しになりますが、ガブリエルはこう言います。

存在すること=何らかの「意味の場」の中に現われること

彼はこの等式のことを「意味の場の存在論」の原則として表現しています。

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存在することは、何らかの「意味の場」「現象」していることです。

僕も存在しているので、何らかの、複数の「意味の場」に「現象」していることになります。僕も「ビジネス」や「プライベート」、はたまた多くの各々の「趣味」の中、様々な「領域」に存在しています。

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マルクス・ガブリエルは、「意味の場」を上の図👆のように説明しています。

意味の場は、2つに分けられる。

ひとつは、そこ(その意味の場)に現われる対象が           ➤お互いにはっきり区別され                     ➤多数で可算的 である。
これを「対象領域」という。

この「対象領域」は、これまでも何度も出てきた「キーワード」でしたね。

「対象領域」は、「意味の場」の一つだったのですね。

もうひとつは、そこ(その意味の場)に現われる対象が、
➤捉えどころがない
➤曖昧
➤多彩
➤両価値的
➤相対的に規定不足 
である。

つまり、「意味の場」は、
論理的ですっきりした「対象領域」と、そうでない曖昧模糊とした場に分けられるのです。

ところで、「意味の場」の「意味」とは何でしょうか?

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マルクス・ガブリエルは、ここでドイツの論理学者で哲学者でもある、ゴットロープ・フレーゲの論文「意義と意味について」を取り上げます。フレーゲは数理論理学の祖でもあるようです。

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①かつてNYのヘラクレスだった俳優は、第39代カリフォルニア州知事と同一である。

②2+2=3+1。

マルクス・ガブリエルは、👆このような「同一性命題」を示します。

そして、

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①はシュワちゃんと同一
②は「4」と同一 であることを示します。

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「かつてNYのヘラクレスだった俳優」、「第39代カリフォルニア州知事」、はたまた「2+2」、「3+1」のことを、マルクス・ガブリエルは👇こう言いいます。

「与えられ方」=「意味」

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マルクス・ガブリエルは以下のように説明します。

同一性命題で等置される二つ(以上)の表現それぞれの「意味」は異なっているが、それらの異なった「意味」の表現が指し示しているもの同一である。
                   ⇩
同一性命題が実質的内容を備え、真であるとともに無矛盾である時同じもの(同じ人物、同じ事実)が様々に異なった仕方で表され得る。

ちょっと難しいですね。「僕」で言うと....。

「Initiative&Solutions,Inc の代表」「こどもの父親」「黒人音楽のレコードやCDを1万枚程収集」は、それぞれの「意味」は異なっています。また、これらは「実質的内容」を備えており、真であるとともに無矛盾です。これらの異なった「意味」の表現が指し示しているものは、「僕」であり「同一」なのです。「僕」様々に異なった仕方で表され得るのです。

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つまり、「意味」とは「与えられ方」であり、この「与えられ方」「現象」と言い換えられます。

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マルクス・ガブリエルはこう言います。

「意味」とは、「対象」が現象するし方

さあ、整理しましょう。

今回は「意味の場」とは何かを考えています。

上記「意味」の考察から、👇こうなりますね。

「意味の場」とは、

何らかのもの、つまり、もろもろの特定対象が何らかの特定のし方で現象してくる領域

と言えます。

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さらに、マルクス・ガブリエルは、この「意味の場」について、👇以下のように言及します。

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❶は何度も言ってきたことですね。➋~➍は「社会構成主義」の批判とも取れますね。

まとめるとこうなります👇。

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実は、ここまでが「第2章」なんです!!

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しかも、この第3章は、全体的に第1章~2章のくどい解説なんです。
だって、第2章で結論が出てしまっているのだから…

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でも、この結論を補足する哲学的知見が論じられているので共有しましょう!

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結論を補足する知見の一つは以下です👇。

「第3章の知見①」:無限の、「意味の場」のイメージ

「意味の場」は無限に存在し、そのイメージは以下の通りです。

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マルクス・ガブリエルはこう付け加えます。

(これだけでは)どんな意味の場が存在するのか、それがどんな状態にあるのか具体的に言うことはできない。(P127)

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そうなんです。どんな意味の場が存在するのか、それがどんな状態にあるのかはさらなる考察が必要なんです。

マルクス・ガブリエルはさらに言います。

それを言うには、…他の様々な学問、経験、私たち自身の感覚、言語、思考が必要。(P127)

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つまり、いっぱい様々なことを勉強し、経験し、考え、言葉にすることが必要なんですね。

他の様々な学問、経験、私たち自身の感覚、言語、思考のことを、マルクス・ガブリエルは、

人間による認識の営みの現実全体

と言います。

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また、マルクス・ガブリエルは次のように注意喚起します。

その際、考え違いをする可能性があるよ。だって、つい間違った「意味の場」に自らを位置づけることがあり得るからさ。

さて、結論を補足する知見のもう一つは以下です👇。

「魔女」は「地球上」という「意味の場」には現象しません。でも、他の様々な「意味の場」に現象するのです。

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「ゴッドファーザー・オブ・ソウル」と呼ばれるジェームス・ブラウンは2006年に亡くなりましたので、「地球上」という「意味の場」には現象しません。でも、「ソウルミュージック」という「意味の場」や、「ライブ映像」という「意味の場」に現象します。


さて、5回に渡って、マルクス・ガブリエルの著作『なぜ世界は存在しないのか』の第1章~3章を探究してきました。

彼の結論は、この第1章~3章で理解できます。

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第4章以降は
・自然科学
・宗教
・芸術 という個別に「意味の場」について論述しています。第1章~3章を理解していれば、第4章以降も読み易いと思いますので、チャレンジしてみてください。

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また、2020.8.22に「全体主義の克服」マルクスガブリエル・中島隆博共著が出版されました。全体主義の台頭を如何に阻止すべきかが検討されています。学んだ知見を踏まえると、この書籍を立体的に読むことができると思いますよ!

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最後に、『なぜ世界は存在しないのか』の第1章~3章の探究を通じての「僕の気づき」をお話しします。

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数か月のお付き合いありがとうございました。また、お会いしましょう!!

以上

(2020.9.18)


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