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matsurimusic
『しゃべるピアノ』
あなたの名前は？
本当はもう知ってるんだけど、あなたの声で聴きたくて。
びっくりした。しゃべるピアノは、うちのピアノだけだと思っていたから。ともちゃんちのピアノも、あっくんちのピアノも、話しかけてこない。なのに、学校の音楽室の大きなピアノは、音楽室に入るのは初めてのわたしのことをなぜか知っていて、こう話しかけてきた。
どうして？
知らなかったの？
何を？
もう、そろそろかな。
何が？
最近しゃべってる？
･･･。
おうちの、ピアノと。
･･･。
･･･。
わたしは最近うちのピアノとしゃべっていない。ある日を境に急に声がしなくなった。だからわたしは、少し、聴こえない生活に慣れかけていて、だから今日は本当にびっくりした。
･･･ぇ、ねえ。聴こえる？
目の前にある大きな黒いピアノの声は続いていたらしい。わたしは尋ねた。
うちのピアノ、どうなるの？
大丈夫。順番だから。今度はわたしの番。
また、一緒にいられるよ。
わたしは、わたしの名前をしゃべった。
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