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「魂を込める」-リライトからの固定記事としての自己紹介です。

自分は美容師という仕事に誇りを持っている。


美容師でない方にとって、美容室は数ヶ月に1度行く場所でありライフスタイルのほんの数%の要素でしかない。(毎日鏡を見て髪の毛を触るという事で言うと、その要素としてはもう数%は増量できそうだけど。)

自分にとっては「仕事」ということでも、「好きな事」という事としてもライフスタイルのほぼ大半を占めている。好きな服をきて音楽を聞きながらお客様と楽しく会話して髪の毛をきれいにして喜んでもらえる。お客様が落としてくれるお金の一部が自分の生活費となりそしてご飯を食べている。「人のため」に行い、そして報酬を得る、これが仕事であり自分のライフスタイルでもある。

そんな日常における美容室の中でも、美容師の頭の中でもおもしろいことがおきている、そんな事を文章にしていきたいと思いnoteに1年間書き留めてきた。

数ヶ月[固定記事]にしていた

「魂を込める」

をこの度リライトする機会があったので、365日毎日連続投稿達成記念として改めて固定記事にしたいと思う。ある意味自分の自己紹介にしたいと思う。

美容師という人たちはこんなこと考えて仕事しているんだ!

にやにや、くすくす

してくれると本望だ。少々note記事としては長いので,退屈でしょうがないときでいいので読んでくださいまし。


☆☆☆

「魂を込める」

理論的な事を伝えることは、教育としてはとても大切な事だと思う。

 でもたまには精神論みたいなものを振りかざすときもある。今の時代そんなの古いよ、なんて言われそうだが40代の人は若かりし時、上の人からはかなり精神論を叩き込まれたものだ。「頑張れ!根性だ!今やらないでいつやるの?今でしょ!」みたいな。とは言え20代の若者たちには、木でできた鐘くらい響きづらい案件なので無理矢理根性論をもって鐘を叩くつもりはないのではあるが。「おれが若い時、昔はこうだったよ〜」なんていう武勇伝はもはや隣で自分が聞いていても鳥肌ミノルものである。そんな武勇伝を思わず言いかけそうになると、ハッと気づき話をすり変える自分がいたりして。でも本当に今必要なのは精神論にも似た本質論なのだけど、直属の上司が本質論を述べるよりかは、外部(職場外)の人の言葉が響いたりもする。父親ではなく叔父みたいな。上ではなく斜めの関係性があると本当はいいのだ。話がやや脇道にそれたが、今日はサロンワークで大切にしたい「気持ち」について書こうと思う。

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 土、日曜日のサロンワークで忙しい時を想像して欲しい。立て込んだ予約状況、猫の手すらも借りたいくらいの慌ただしい昼時間。ハイライト、ローライト、そしてベースの根本と毛先の薬剤のミックスを考え混ぜ合わせていく。トイレに行きたいがいけない、喉が渇くが水分補給もできない。「トイレに行きたくなるなら水分取るな」、とはここでは突っ込まないで欲しい。誰しも経験あると思うが、とても忙しい状況だ。そんな時、猫の手ではできない、人の手でないとできないことを若者アシスタントにお願いする。作り終えたハイライトとローライトの薬剤を、ベースの薬剤を作るほんの1分間で混ぜてもらいたい時がある。それほどに急ぎたい時がある。その時に、自分は真面目な顔をして横にいる若者アシスタントにカップを手渡しながらこう伝える。


 自分「魂込めてね。」
 若者「はい、わかりました。」

口角をあげ口元は緩やかに、目元は不動明王のように目力強めで伝える。若者も強めな目にうろたえることなく気持ちの良い返事をする。

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 このやり取りのあとの若者の混ぜるカラー剤はかなりクリーミーになる。何も考えずに混ぜるよりは1.5倍は良くかき混ぜてくれる。気持ちを込める、魂を込める、これはただの精神論だけではない。よくかき混ぜることで物質への作用としての効果も確実にある。1剤に含まれるアルカリ剤と2剤である過酸化水素を混ぜる時に、どれだけ酸素を含ませるかで、薬剤の作用を効率的に促す事ができる。そして、基剤をよりクリーミーにする事で塗布のしやすさを得る事ができる。これも、効率性があがる。剤が固いと塗布しづらいことは想像するに及ばないだろう。

 あとは良くかき混ぜてもらうために、どんな言葉を放つかが重要だ。

「とりあえず混ぜて」→頼まれた側はやる気10%ミックスといったところか。

「おい、混ぜとけ!」→どこの不良グループのリーダーが言っているのか。

「誰でもいいから混ぜて」→これを言った時点で誰もがその場からいなくなるだろう。

「混ぜたければ混ぜていいよ」→ここまでくるとワガママ育ちのスネ夫みたいである。同じ空気を吸ってくれる人はいないだろう。
 

 以上あげた例えは、なんと乱暴な物言いか。こんな風に言われて、気持ち良く混ぜる人はいないだろう。人にものを頼む際にこんな状況でこんな物言いができるのか、知っている人がいれば教えて頂きたい。その他の仕事に気を取られ、充分な薬剤のミキシングには至ることはないだろう。そんな時、

「魂込めてね。」と一個人に目を見て伝えると、こちらの雰囲気は伝わるのではなかろうか。カップへと視線は集中し、マドラーをもつ腕の筋肉はひきしまる。カップを持つ左腕の上腕二頭筋とマドラーをもつ右腕の上腕三頭筋はこの時にフル活動する。マドラーを2本使いする者もいる。気合が空回りし、マドラーとカップが交錯し薬剤が半径1m以内に飛び散ることになる。力み過ぎは要注意だ。

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 ただ、この伝え方の有効性は対象となるアシスタントのキャリアが関係してくるということが最近になってわかってきた。カラーリストを15年となるとこんなことに気づくこともできるのかと嬉しくなる。「魂込めてね」はアシスタント3年目くらいまでが有効だ。1、2年目の若者は気持ち良く「はい!」と返事をし、一生懸命に魂を込める。新卒入社したてが一番気持ちの良い返事が聞ける。だから 4、5月が一番いい返事が聞けるシーズンなのだ。秋刀魚が美味しい季節が9〜11月みたいなことか。
 だが4年目以上になると、込める魂は違う事に使いたいと思うようになるので通用しなくなる。キャリアも重ね、できる仕事も増えたから仕方がない。そして自分みたいな40代のおじさんがいう精神論に対して、嫌悪感を持ち始め表情に垣間見るのもおかしくはない年頃なのだろう。
 
 ここまで冗談混じりに書いてきたが、こういうのって、そういう気持ちを込めた事がその他の接客や施術に反映されてくるとも思う。その魂という見えない何かを持ち合わせているかいないかで、お客様への気配りも変わるのではないかと考える。
 インターネットやSNSではなかなか伝わりづらいのが「気持ち」なのではないだろうか。接客されている側、お客様の立場になって想像してみて欲しい。「気持ち」を込められた接客をされると嬉しくなるのは誰しも同じだ。機械ではない気持ちを込めた手によるシャンプーの方が絶対に気持ちがいい。「こうすると絶対に可愛くなる!」と気持ち込めた提案をされると自分のことをしっかり考えてくれていると思える。魂を込めるいう行為は量ではなく質が大切で、たくさん込めすぎると疲れてしまうので気をつけよう。たくさんという「量」ではなくお客様のこと、スタッフのことを想う「質」を持って仕事をすることがとても大切だと思う。若者にとってその「魂の質」はスタイリストデビューした時の接客に必ず反映されると疑う余地もない。けしてスネ夫にはならないよう気をつけよう。

 

 昔、中学生の時だったか、キングカズ(三浦知良氏)の著書、「足に魂込めました」を読んだ事を覚えている。その頃この本以外、ちゃんとした読書をした経験がないから読んだことを良く覚えている。カズの自伝的な本だ。そう、その通りである。僕はこの本のタイトルの影響を受けているのは、言うまでもない。


☆☆☆

最後までお読み頂いた方には感謝しかありません。

キングカズに反応できる方は恐らく、同世代の方とお見受けします。小学生から高校生までサッカーをしていた自分にとってはカズは昔も今もヒーローなのです。そのスピリットを今も身体のどこかに秘めつつ、魂こめてこれからもnoteを書いていきたいと思います。

365日×3年=1095日

いけるかな。

いやいけないかな、

いやでもな、カズもまだ現役でやっているしな、と思いながらいけるところまで続けてみますかな。

おつきあいの程、よろしくお願いします。

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