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『草祭』恒川光太郎(著)

団地の奥から用水路をたどると、そこは見たこともない野原だった。「美奥」の町のどこかでは、異界への扉がひっそりと開く―。消えたクラスメイトを探す雄也、衝撃的な過去から逃げる加奈江…異界に触れた人びとの記憶に、奇蹟の物語が刻まれる。圧倒的なファンタジー性で魅了する鬼才、恒川光太郎の最高到達点。

美奥という地方をテーマにしたホラー短編集。それぞれ微妙にリンクしていて大好物。愛ちゃんの本編は別の本なんですか?

けものはら

用水路沿いからしか入れない、崖に囲まれた不思議な野原のお話。そこで夜を明かすと別の生き物になるという…。
家出した友人とこの野原で出会うが、そばには死体があり…。

この友人のドラマもホラーだし、けものはらの力もホラーだし、何になっちゃうのか、どこに行っちゃうのかもホラー。しかし全体的には爽やかなのが不気味。乙一を思い出す。

屋根猩々

この地域を守る持ち回り式神様のお話。

主人公が出会った少年がこの守り神で、日頃は掃除や備品の修理などをしている。わりとほのぼのしたお話で、主人公のいじめに介入し、力技で解決してゆくさまが面白い。と思っていた所であのラストでぞわっとくる。化け物なんぞより、自分の意識を他人に強制的に変えられる(変えられたとも気づかない)話を特に怖く感じる。

くさのゆめがたり

美奥が美奥となるお話。

主人公の少年が作り出した秘薬がすべての始まりとなってゆくのだが、なぜこんな呪われた土地を開発してゆこうと思ったのやら。。
しかし主人公の生い立ち、生き方が面白い。この本で一番好きなお話。

天化の宿

少女が山の宿に迷い込むが、クトキの客だからと泊めてもらえ、天化というゲームをすることになるお話。

クトキとは苦解き。少女の内にわだかまる苦しみとはなにか、天化とはなにか、どんどん明らかになってゆく。ラストはあっけにとられたが、苦解きは成功なんだろうね(笑)

朝の朧町

カラスの宝物の玉を拾ったら、自由に街を作れる空間を手に入れたお話。

50代男性の家に居候してるバツイチ女性が主人公。なぜそうなったか、というドラマと、箱庭のような不思議な霧の中の街、二重にそれぞれどうなるのかとドキドキする。これは恒川作品全部に言えることで、いくつもの不思議が並行し、不協和音で読者の心臓を逆撫でしてゆくのが本当に快感。

#読書感想 #読了 #ネタバレ #ホラー #ファンタジー

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