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2021年7月の記事一覧

『オクトーバー・リスト』ジェフリー・ディーヴァー(著)土屋晃(訳)

ドンデン返しの魔術師が技巧のかぎりを凝らした前人未踏&驚愕連続の “逆行” ミステリー! 本書は最終章ではじまり、第1章へとさかのぼる。 娘を誘拐され、秘密のリストの引き渡しを要求された女ガブリエラ。隠れ家にひそみ、誘拐犯との交渉に向かった友人の帰りを待っていた。しかし玄関にあらわれたのは誘拐犯だった。その手には銃。それを掲げ、誘拐犯は皮肉に笑った……。 『ボーン・コレクター』『ウォッチメイカー』などでミステリー・ファンを狂喜させてきたベスト・ミステリー作家の神髄がここにある

『NOVA 2021年夏号』大森望(編)

日本SF大賞受賞、芥川賞受賞作家から、初小説に挑む日本SF作家クラブ会長、日本ファンタジーノベル大賞受賞、ゲンロンSF新人賞・創元SF短編賞受賞の新鋭まで、10人が饗宴する日本SFの最前線。 「いずれ劣らぬ個性豊かな書き下ろしSF短編を楽しんでいただけるとさいわいです」大森望 ラスト4編が特に良いが、斧田小夜「おまえの知らなかった頃」が圧巻。これが新人だなんて。割と力業のお話だが、ハイテク、復讐、ファンタジー要素が相まって面白い。 また、乾緑郎の機巧のイヴは未読なのに番外

『罪人の選択』貴志祐介(著)

「夜の記憶」―『十三番目の人格―ISOLA―』『黒い家』の本格デビュー前に書かれた貴重な一編。貴志祐介ワールドの原点! 「呪文」―『新世界より』の刊行後ほどなくいて発表された短編。惑星「まほろば」で何かが起きている…。 「罪人の選択」―「罪人」の前に出されたのは、一升瓶と缶詰。一方には猛毒が入っている。果たして正解は? 「赤い雨」―新参生物のチミドロによって、地球は赤く蹂躙された。スラム出身の瑞樹はRAINの治療法を探る。 SF短編4つ。短編なので『新世界より』みたいな凄み

『南の子供が夜いくところ』恒川光太郎(著)

からくも一家心中の運命から逃れた少年・タカシ。辿りついた南の島は、不思議で満ちあふれていた。野原で半分植物のような姿になってまどろみつづける元海賊。果実のような頭部を持つ人間が住む町。十字路にたつピンクの廟に祀られた魔神に、呪われた少年。魔法が当たり前に存在する土地でタカシが目にしたものは――。時間と空間を軽々と飛び越え、変幻自在の文体で語られる色鮮やかな悪夢の世界。 とある南国の島を舞台とした短編集。今までの本は日本が舞台で、昔話的、侘び寂びな雰囲気があったが、本書は一転

『ピエタとトランジ 完全版』藤野可織(著)

天才的な頭脳を持つ女子高生探偵トランジと、彼女の才能に惚れ込み助手に名乗り出たピエタ。トランジは事件を誘発させる体質で、次から次に周囲で人が死んでいく。 あるとき、トランジに秘められた恐るべき事実が明らかになり、人類は滅亡に向かう――!? 芥川賞作家が送るスリル×サスペンス×友情の、超弩級ガールズ・エンターテイメント! うわぁ何だこれ凄い! 『SFが読みたい2021』で知ったので、てっきりSFだと思っていたら、ミステリーが始まり、いつのまにか、テルマ & ルイーズみたいなロ

『未来職安』柞刈湯葉(著)

平成よりちょっと先の未来、国民は99%の働かない<消費者>と、働く1%のエリート<生産者>に分類されている。 労働の必要はない時代だけど、仕事を斡旋する職安の需要は健在。いろんな事情を抱えた消費者が、今日も仕事を求めて職安にやってくる。 斬新だけどほっこり、近未来型お仕事小説の登場! ベーシックインカムが実現した未来のお話。野崎まどの『タイタン』は貨幣がなくなるほど労働が消えた社会だが、それよりはるか手前。何もしなくても生きていけるけど、タクシーに乗ったり、ハイソなカフェで