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2021年1月の記事一覧

『うみそらかぜに花(1)』大石まさる(著)

うみは洋々とそらには満点の星が…片田舎に住むカナメとアミは学校の文化祭準備に勤しんでいた。ぶつかり合いながらどこか近しい2人の関係は…!?大石まさるが描く叙情的思春期青春譚! 中学生男女のママレード・ボーイ的同居と中学校生活が面白おかしく、キュートなタッチで描かれる。恋愛成分ほぼゼロでギャグ寄り、わちゃわちゃと楽しい部分が濃縮されており、ただただ幸福。とにかくひたすら絵が可愛い。背景も全コマすごい。そしてキャラが皆明るくてハツラツとしており、読んでるだけで笑顔になる。非日常

『デルトラ・クエストI (1) 沈黙の森』エミリー・ロッダ(著)岡田好恵(訳)

ここはデルトラ王国。王家に伝わる七つの宝石の魔力が、国を守っている。その宝石が影の大王に奪われた! 国を救うため、少年リーフが一枚の地図を頼りに冒険の旅に出る…。愛と友情と闘いのファンタジー。 児童書だが普通におもしろい! 個人的にはハリー・ポッターより全然上。上記あらすじだと、全然期待できない雰囲気だが、本編はもっとシリアスで危機に溢れており、かなりドキドキできる冒険譚。最初の冒険から主人公たちが死にかけててビビったわ。 1巻は、事の起こりと、最初の宝石を探しに行くお話

『バラヤー内乱』ロイス・マクマスター・ビジョルド(著)小木曽絢子(訳)

幼年皇帝の摂政として惑星統治を委ねられた退役提督アラール。だが彼の前途には暗雲がたれこめ、反旗はついに、一夜にして翻された。クーデターで首都は制圧され、その妻コーデリアは五歳の皇帝をあずかり偏境の山中へ逃れるが……。マイルズの誕生前夜、辺境の星を襲った未曾有の動乱を描き、ヒューゴー賞・ローカス賞を制したシリーズ中の白眉。 『名誉のかけら』につづく、マイルズ・ママ、コーデリア視点の外伝。無事結婚し、マイルズを身ごもるも、政敵の毒ガス攻撃をうけてしまい、胎児は絶望的となる。先日

『2000年代海外SF傑作選』橋本輝幸(編)

独特の青を追求する謎めいた芸術家へのインタビュウを描きNetflixでも映像化されたレナルズ「ジーマ・ブルー」、東西冷戦をSFパロディ化したストロス「コールダー・ウォー」、炭鉱業界の革命のすえに起こったできごとを活写する劉慈欣「地火」、破滅SFにインターネットへの希望と祈りを込めたドクトロウ「シスアドが世界を支配するとき」……2000年代に発表された名作SF短篇9作品を精選したオリジナル・アンソロジー。 エンタメ度高めのSFアンソロジー。傑作選というだけあって、傑作揃い。個

夜中に読んではいけない飯テロ本『海と山のオムレツ』カルミネ・アバーテ(著)関口英子(訳)

生唾なしには読めない! 美味しい食を分かち合うことの歓び。食べることはその土地と生きてゆくこと。舌を燃やし、思い出を焼きつくすほど辛い唐辛子、庶民のキャビアと呼ばれるサルデッラに腸詰サラミのンドゥイヤ……。南イタリア、カラブリア州出身の作家が、アルバレシュという特殊な言語と食文化を守ってきた郷土の絶品料理と、人生の節目における家族の記憶とを綴る自伝的短篇集。 寝る前に読んでしまい腹の音が止まらない。第1話『海と山のオムレツ』がいきなり最高で、具だくさんのオムレツを挟んだパン

こんなグロテスクな本は久しぶり『るん(笑)』酉島伝法(著)

異形、異界、造語なしの現代日本のお話、と聞いてがっかりしたのだが、読んでみると、今までで一番グロテスク(笑) 舞台は現代日本なのだけど、科学が完全敗北した世界。理性より感情がまさり、気合とか迷信が中心。というか全て。水にありがとうというと美味しくなるのが常識の世界。全員いかれてて最高に気持ち悪くて面白い。よくここまで人間を醜悪に描けるな、と笑える。心底人間が嫌いなんだろう。共感しか無い。 そもそも恐ろしいのは、作中に出てくる民間療法とか、手でトイレ掃除だったり、ラッセンだ