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2020年4月の記事一覧

『禅銃〈ゼン・ガン〉』バリントン・J.ベイリー(著)

栄耀栄華を極めた銀河帝国は、いま黄昏を迎えていた。激減した純人間を補うために動物たちが宇宙艦隊に乗りくんでいる。その折も折、辺境星域に帝国を滅ぼす力を持つ武器が出現したとの報をうけ、アーチャー提督は早速調査に赴いたが……英SF界の鬼才が奔放なアイデアで描く傑作ワイドスクリーン・バロック! 実にもったいない! それぞれ短編に出来るレベルの面白設定てんこ盛りなのに、ラストが超雑。小姓という謎めいた侍に全部語らせて終わっちゃう。 後退線という疑似科学(作中いきなり講義が始まるし

『バーナード嬢曰く。第5巻』施川ユウキ(著)

読みたいときに、読みたい本を。グータラな読書家“バーナード嬢”と、その友人たちが図書室で過ごすブンガクな日々――。『三体』『カササギ殺人事件』『ダレン・シャン』『本好きの下克上』『ギネス世界記録』……、古今東西あらゆる本への愛と“読書家あるある”に満ちた“名著礼賛ギャグ”、渇欲の第5巻! 今回は遠藤巻かな。ウザさを再認識。そして毎度のことながら、既読の本が出てくると嬉しい。漫画のキャラとの一体感が堪らない。自分も図書室にいる気分になれる。 今回出てきた既読は、『カササギ殺

『惑星クローゼット(全4巻)』つばな(著)

第1巻の内容紹介: ある日、女子中学生の愛海は見知らぬ世界で巨大な怪物に襲われる夢を見る。そしてその世界には愛海に助けを求める、同年代の少女フレアが居た。「夢の中の出来事」と目を覚まして学校に向かう愛海だが、その日以来眠りのたびに“あの世界”へと迷い込む――。異才・つばなが描く「百合×SFサバイバル」! 完結したのでまとめ読み。まとめて読むと不気味さ10倍増しだし、伏線も覚えてられるしで大満足。 ある日、主人公が眠ると見知らぬ惑星(化け物アリ)で目覚め、同じく遭難してるっ

『ハリー・オーガスト、15回目の人生』クレア・ノース(著)

1919年に生まれたハリー・オーガストは、死んでも誕生時と同じ状況で、記憶を残したまま生まれ変わる体質を持っていた。彼は3回目の人生でその体質を受け入れ、11回目の人生で自分が世界の終わりをとめなければいけないことを知る。終焉の原因は、同じ体質を持つ科学者ヴィンセント・ランキス。彼はある野望を持って、記憶の蓄積を利用し、科学技術の進化を加速させていた。激動の20世紀、時を超えた対決の行方は? 最初の数ページを読んだだけで傑作だと確信したが、ラストは予想を遥かに超えてきた。な

『SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと』チャールズ・ユウ(著)円城塔(訳)

「僕」はタイムマシンの修理とサポートを担当する技術者で、個人用タイムマシンに乗って時間のはざまを漂っている。電話ボックス大の空間で暮らす僕にとって、UIのタミーと非実在犬のエドはかけがえのない存在だ。家族は父と母の三人だけど、母は同じ時間を繰り返すループ・サービスに入ったきりだし、ガレージでタイムマシン開発をしていた父は失踪中で、時空のどこにいるのか不明だ。あるとき、修理工場でタイムマシンから僕が降りてくるのを目撃した僕は、とっさに「もうひとりの自分」を撃ってしまった!?最悪

『第三惑星用心棒 第2巻』野村亮馬(著)

本編カラー159ページ。29世紀、地球が人類の中心地ではなくなった時代。かつての紛争に投入されたロボットに対処するのもまたロボット。月面生まれの人型ロボット「エルシー」はそんな「用心棒」のひとり。今回、北米西海岸で行われる祭りの手伝いに来たエルシーは到着早々トラブルに対応する事に…日常、まれにアクション。そんな未来ポップSF。 1巻第2話に出てきたレックスくんの活躍が見れるのかと思っていたら全然別のお話だった。しかし、今回も人間のため明るく働くエルシーが健気でよい。その健気

『一行物語集 世界は蜜でみたされる』飯田茂実(著)

世界のすべての人びとを愛するために、彼女は電話帳を開き、ひとりひとりの名前を精魂こめて覚えはじめた。一行物語333編を収録した。 超ショートショート集。書き出し小説大賞のようにインパクト勝負ではなく、一文でなんとなくさまになっている。 333編とあるが、序と0も合わせると、335篇。大量にあるが、似てるのも多々あり。自分が読んで楽しむというより、いろんな人と、自分はどれが好きだ、という話で盛り上がってみたい。 自分が好きなの抜粋。 何も食べる必要がなく、路傍で石鹸水を

『無伴奏ソナタ』オースン・スコット・カード(著)

生後6カ月でリズムと音程への才能を認められ、2歳にして音楽の天才と評されたクリスチャン。人里離れた森の奥で、いっさいの人工的な音から遮断され、ただ鳥の声や風の歌声だけを聴いて育った彼は…表題作ほか、異星人の攻撃から地球を守るため設立されたバトル・スクールで最高の成績を収めた少年エンダーの成長を描く処女作「エンダーのゲーム」(短篇版)など、独創的なアイデアと奔放華麗な想像力で描く傑作11篇。 爽やかな表紙とは裏腹に、黒い藤子・F・不二雄や、荒木飛呂彦を思い出すホラーもあり、お

『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーエンズ(著)

ノース・カロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアは湿地の小屋でたったひとり生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女のもとを去ってゆく。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく…みずみず

『マーダーボット・ダイアリー』マーサ・ウェルズ(著)

かつて大量殺人を犯したとされたが、その記憶を消されている人型警備ユニットの“弊機”は、自らの行動を縛る統制モジュールをハッキングして自由になった。しかし、連続ドラマの視聴をひそかな趣味としつつ、人間を守るようプログラムされたとおり所有者である保険会社の業務を続けている。ある惑星資源調査隊の警備任務に派遣された弊機は、ミッションに襲いかかる様々な危険に対し、プログラムと契約に従って顧客を守ろうとするが……。ノヴェラ部門でヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞3冠&2年連続ヒューゴ

『天冥の標 Ⅷ ジャイアント・アーク PART1~2』小川一水(著)

西暦2803年、メニー・メニー・シープから光は失われ、《咀嚼者》の侵入により平和は潰えた。絶望のうちに傷ついたカドムは、イサリ、ラゴスらとともに遥かな地へと旅立つ。いっぽう新民主政府大統領となったエランカは、国家再興に向けた苛酷な道へと踏み出す パート1では、1巻のB面+アルファ。イサリやラゴス、フェオの視点から1巻の顛末が語られ、あのラストの続きも味わえる。 パート2では、咀嚼者達とメニーメニーシープ臨時政府の戦争、アクリラの孤軍奮闘、カドム達のセレス北極紀行のお話。み