萩尾望都 「ビアンカ」を読んだ頃

ぼうと? …じゃないよね。

著者名をなんと読むのか、まだ知らなかった。しかし、読んだあとに受けた衝撃は決して忘れなかった。たったの16ページ。

その作品は、妹が買った『サインはV!』(原作・神保史郎 漫画・望月あきら)の総集編が載った少女フレンド増刊に掲載されていた。

折にふれ、その雑誌を取り出しては思いだしたように読み返した。

画家である老婦人は追想するーー子どもの頃のビアンカのことを。森にひとりでいた少女のことを。

「その姿を表現するために私は画家になったのです」

少女は光のなかで踊っていた。 

雑誌の荒い印刷を通して、その輝きが見えた気がした。

その感覚を忘れられず、私は編集者になった……のかもしれない。



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