見出し画像

小寺の論壇:東京に張り付き!? 食文化について考えてみた

知財、IT産業、ネット、放送、買ったもの、ライフハックなど、コデラの気になるところを語ります。


今週のごあいさつでもお話したところだが、台風10号の影響で8月28日から31日まで、東京に張り付きになってしまった。予想外に3日も連泊したわけだが、それでも連載の締切は普通に来るので、仕事がないわけではない。ホテルにこもって原稿を書くことにはなるわけだが、食事をどうしようかと考えて、ふと気がついた。

そういえば、東京で食べたいものがないな、と。

宮崎にいれば、定食か、ラーメンか、うどんか、そばか、カレーか、中華か、食べたいものがあればそこへ行くだけの話である。車で移動なので、片道10分ぐらいが行動範囲になる。そうするとだいたい半径5kmぐらい行けてしまうので、かなり広範囲である。

一方で、東京でどう外食してたのかなと振り返ると、これは場所に縛られていたように思う。例えば新宿にいるならあそことか、池袋ならあの辺とか、場所が食べ物の選択とイコールになっていた。東京で食べるものに迷った記憶がないのは、場所ごとにだいたいなにを食べるか決まっていたからだろう。

逆に、これが食べたいからわざわざ電車に乗って移動する、ということもなかった。それだけ、あちこちにそれなりによく行く店があった、という事なのだろう。

そんなことを考えたのは、29日の夜、どうせ帰れないなら誰かメシでも、とFacebookに投稿したら、以前メルマガでも対談させていただいたライターの矢作 晃さんが、恵比寿でビール飲みましょうと誘ってくれたからだった。

恵比寿といえばヱビスビール発祥の地なわけだが、現在は工場もない。ところが8月23日から9月1日までの10日間限定で、「YEBISU BEER HOLIDAY」というイベントが開催されており、限定ビールが飲めるのだという。恵比寿に行ってヱビスビールを飲むというのも、場所に縛られた東京らしい食文化なのではないだろうか。

■トレンドに突撃する電気街

今回食事で困ったのは、宿泊場所が秋葉原だったことである。今でこそアキバには飲食店が多数あるが、昔は本当に食べるところが少なかった。まだ駅前再開発が行なわれる前、駅近くにマクドナルドができた時などは、ついにアキバも一般の街と同じになったのかと驚愕したものである。逆に、誰がアキバまできてマック食うんだ、とも思ったものだった。

そもそもアキバでは待ち合わせのために喫茶店に入るか、飲み会があって行くぐらいのことで、普通にごはんを食べたという記憶があまりない。アキバ界隈をうろついて40年、隅々まで知っているつもりだったが、まさか食事でさまようことになろうとは思ってもみなかった。

最初に宿泊したのは、APAホテル《秋葉原電気街口》だったので、その周辺で食事できるところを探すことになったのだが、あの界隈はどうしたことか、ラーメンの激戦地となっていた。旧電気街といわれる、昔はPCのパーツ屋がひしめき合っていたブロックだけで、14件もある。ありすぎである。

そして共通するのが、どの店もコッテリ系の濃い味を特徴とするところだ。豚骨ならこってり系になるのは致し方ないが、つけ麺や鶏そばまでもがこってり系へとシフトしてしまっている。

あらゆる食べ物がコッテリ系

最近のアキバはインバウンド客が多いが、ラーメン店はインバウンド客狙いではないだろう。じゃんがらのような老舗はガイドブックにも載っているせいか、ときおりもの好きなインバウンド客が並んでいるのを見かけることもあるが、豚骨ラーメン屋はインバウンド狙いではない。アキバに来る日本人が相手のはずだ。

アキバに来る客の中心は、ほぼオタク層となっており、駅前のラジオ会館などは、若松通商がかろうじて昔の名残を残しているだけで、もうすっかりラジオと関係ない、フィギュア・トレカタワーと化している。客層はインバウンドも含め、みな20代から30代前半といったところだ。

こうした客層に合わせた結果、コッテリが主力になっていったと考えられる。その理由には、2つあると思われる。

1つは、毎日食べる前提ではないことだ。アキバはある意味イベント会場であり、休みの日に用もなくヲタ友と待ち合わせて来る街だ。これはPC街の頃から変わらない。そうした記念碑的な食べ物として、味の強い、しっかり記憶に残るコッテリ系がウケたのではないか。

おそらく来る客も、あちこち迷ってどこかに入るといった風ではなく、狙いを定めて、わざわざ行列を作って待っている。アキバならこのラーメン屋、といった具合に、各自がそれぞれの理由で固定化しているということだろう。

ここから先は

1,435字 / 4画像
この記事のみ ¥ 200

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?