第五章 大好き!愛してる!④
「暑っ!」
「日焼けしちゃう……珀ちゃん、今日バイトは?」
「今日は休みだよ。どっか、デートする?」
そっか……。
もう、あたし達、付き合ってるんだよね。
「珀ちゃん、いつもどこら辺で遊んでるの?」
「渋谷かな。どうする?何、食いたい?」
「駅前のファミレス行こうよ。安いし」
「そうだな」
「ねえ、渋谷で何してるの?」
「何だろうな……まあ、色々……」
ファミレスへと、到着。
「あたし、Aランチセットください」
「オレもそれ」
「ドリンクバー行ってくる。珀ちゃん、何飲む?」
「メロンソーダがいい」
「はあい」
へへ、幸せだ。
にゃんちの時とも違う、この感覚……。
何故だろう。
にゃんちの事だって、あれだけ好きだったはずなのに。
「あれ?千尋!」
名前を呼ばれ振り向くと、玲が突っ立っていた。
「玲……玲の家、横浜の方じゃなかったっけ?」
「あたし、午前中補修受けてるの。赤点だったからね……もう最悪よ。せっかくの夏休みだってのに。そっか、千尋の家って高校の近くだったよね?誰とランチ?」
「珀ちゃんと……」
「珀?珀も来てるの?あたしもそっち、合流していい?!」
「でも、友達と来てるんじゃないの?」
「ああ、いいのいいの。女友達三人だから。一人くらい抜けても、平気よ」
「あ、そう……」
う……。
これは、やばいかもしれない。
「お待たせ……」
メロンソーダを二つ持ち、席へと戻った。
玲を引き連れて……。
「珀っ♪もう!全然連絡くれないんだから!」
当然のように、珀ちゃんの隣に座る玲。
「あ?何で、玲がここにいんだよ?」
「夏休みの間、補修なの。最悪でしょ?」
「オレらですら補修受けないで済んだのに?お前、そんなバカだったんだ?」
「ひっどーい!」
イチャイチャしているように……。
見えないわけでもない。
いや、珀ちゃん、玲に何か言い出さないうちに、伝えておかなくちゃ!
あたし、ひどいかもしれないけれども、それでも玲とは友達でいたいもの。
『玲に余計な事、言わないでね。あたし、玲とは友達でいたいの』
こっそり、珀ちゃんにラインを送信。
それを見た、珀ちゃん。
ランチセットがやってきた。
「いただきまあす。玲は、もう食べ終わったの?」
「うん。ドリンクバーで居座ってるだけ。ねえ、何で二人なわけ?よっしいは?」
「よっしいは、バスケ部の合宿に行ってるの」
「ふうん、そうなんだ?珀、夏休みの予定は?」
「特に何も」
「じゃあ、海にでも行かない?!」
「お前、補修だろ?」
「土日は補修ないもん!いいじゃん、行こうよお!」
「土日に海なんか行ったら、混んでるじゃん。やだよ、わざわざ混んでる時に行くのは」
「それもそうね……じゃ、プールは?」
同じだっつうの!
海も、プールだって……。
「珀っては、冷たいんだから!ねえ、次いつホテル行く?」
ぶっ……!
思わず、エビフライを吐き出してしまった。
「ゲホッ!ゲホッ!」
「やだ、大丈夫?千尋?」
「……お前なあ、オレらは飯食ってる最中なの!そんな下品な会話、すんなよ!それに、もうお前とは遊ばない」
「は?何よ、それ」
「お前も男、作れよ。女友達と週末に海でもプールでも行ったら、ナンパもされんだろ?」
「ひどっ!ちょっとー……千尋、聞いた?どう思う?!いくら何でも、ひどいわよね!」
「はあ……玲は綺麗だから、ナンパもたくさん、されそうだね……」
「じゃあさ、千尋、一緒に行こうよ!越名くんと別れたら、さぞかし寂しい夏休みじゃない?もっといい男、ゲットしに行こ!」
「ダメ!千尋は、海には行かないの!」
「何で、珀が決めつけるのよお……」
「……千尋は、日焼けはしない子だから」
「日焼け止めクリーム塗れば、大丈夫だって!」
「玲ー!帰ろー!」
玲の友達が、エントランスで呼んでいる。
「ああ、もう……!じゃ。千尋、連絡するから、夏休み中の週末のどれか、空けといて!じゃね!」
慌ただしく、玲は去っていった。
「はあ、何だよあいつ。千尋?ごめん、怒ってる?」
「ホテルでエッチしてたの?そりゃあ、お小遣いもすぐなくなるわね。やっぱり、最低」
黙々と、ランチを食べる。
「だから、ごめんって……けど、うまくいっただろ?全然ばれてないよ!てか、海なんか玲と行くなよ?」
「行ってもいいかもねえ……あたしはナンパなんてされた事ないけど、玲と一緒ならさすがにされるだろうしっ!」
「また可愛くない千尋に戻ってるし……しょうがいないだろ?過去にそんな目くじら立てられたって、今更どうしろって言うんだよ。これからはもうないって言ってるんだから、許してよ」
「……分かった」
やっぱり、傷ついた。
ホテルで、玲と……?
やだ、やだ!
そんなの、想像なんてしたくないのに!
想像力が旺盛な自分を、今はものすごく恨む……。
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