18歳、浪人、学生会館暮らし

18歳で田舎を飛び出した。憧れの東京で一人暮らし。ただし受けた大学は全て落ちていた。いわゆる「全落ち」そして「浪人」。
家族を説得し、東京の予備校に1年通うことが決まった。

ちなみにこの投稿ははじめて借りた部屋というテーマで書くが、厳密には家族が資金を出して「借りてくれた」で、自分の稼いだお金で借りれるようになるのはまだまだ先の話。

話を戻すと、予備校をほぼ勘で決め、通学圏内で住む家を探した。
1年浪人生活を送るに当たり、なんとなく通常のマンションよりも寮がいいのではないかと検索をかけると「学生会館」というものを見つけた。

女子学生専用、管理人さん常駐、朝晩の食事付きで駅近と、防犯面も申し分なく、まさに希望通りの家だった。

そもそも「学生会館」とは…
その名の通り学生さんを対象にした賃貸。管理人常駐や食事付きなどのサポートや、門限などのルールが設けられている。「寮」にイメージされる相部屋や共同生活とは異なる。=学生限定のマンションにサポートとルールが付いてるイメージ。
学生同士の交流はしたい人するし、しない人はしない。
※あくまで一例。今回の場合。

すぐに内見にいき、オーナーさんに建物を案内していただいた。
自分の生まれ年よりももっと前にできた建物。でもリフォームと行き届いた清掃で、古さはあまり感じなかった。

案内された部屋の、重いドアを開ける。

ワンルーム6畳、3点ユニットバス、ベランダ有り。1口コンロのキッチン付きで、備え付けの収納スペースも十分。家具家電はすでに設置されていて、ここで暮らすイメージがぼんやりと湧いてくる。

暖房の効いてない冷たい部屋の中で南向きの窓から差し込む日差しが暖かい。
リフォームで張り替えられたのであろうクッションフロアが、ふかふかで心地よかった。

なんだか良さそう、そんな予感がした。
その場で無事に入居が決まり、すぐに初めての一人暮らしが始まった。

受験の悩みと、思春期みたいな悩みがごちゃまぜになって、ベッドから天井を見上げボロボロ泣いた日もあれば、予備校の友達が遊びにきてくれてとことん映画をみる日もあった。

気分転換に共有のランドリールームで考え事をしたり、食堂のダイニングテーブルで勉強するのも好きだった。

入居者との交流を一切持たず、殺伐とした気持ちを抱えて予備校に通う日々の中でも、管理人さんに外出の挨拶をしたり、たまに出没するワンちゃんに出迎えてもらうのは心が和む瞬間だった。


もしあのとき、ふつうのマンションに住んでいたら、
ひとりぼっちのワンルームに閉じこもって、こころが潰れていたかもしれない。



1年後、どうにか大学に合格し浪人生活を終えた。管理人さんに報告すると受験生である自分以上に喜んでくださって、これはよっぽどめでたいんだな、なんて思ったりした。



学生会館にはなんだかんだそのまま2年くらい住み続け、
その後何度か引越しをした。
今では自分で稼いだお金で部屋を借りられるようになったけど、
二度とあの部屋には住めないことが、すこしさみしい。

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