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私の空白

「高校を中途退学された理由は何ですか。」


面接官にそう聞かれたとき、胸が強く痛むのを感じた。
そこで自分の中でまだ消化できていない感情があると思い知らされた。

「最初の会社に入るまで一年間空いていますが、それはなぜですか。」

(自分で決めたはずなのに……自分の選択は間違っていたのだろうか)

履歴書を見ながら淡々と質問をする面接官に対して、
自分の変えられない過去への諦めのような後悔のような感情が支配する。


私の空白期間は他の誰かにとってはただの「空白」

なのだ。

分かっている、分かってはいるけれど、どうしても苦しくなってしまう。

そのときはどうしようもなかったことなのに。

その「空白」に何に悩んだか、もがいたか、挑戦しようと試み挫折したか。

そんなものは当たり前に履歴書からは読み取れない。

ただ「頑張らなかった過去の自分」 になってしまう。

それがたまらなくつらい。

それがまぎれもない「事実」であるからこそ。


私の転職活動はそんな重たい感情から始まった。


私は高校を中退したあと高卒認定試験を受け、
そのあと短大に入り卒業した。

そのあと就職しないまま一年空いたが、たまたま見つけた会社に縁あって入ることができた。

そして今二年間働いたその会社を辞め、新たな場所へ行こうと決意した。

会社を辞めた理由は嫌になったからではない。

むしろそこで出会った人達には感謝しかない。

私を認めてくれたこと、褒めてくれたこと、
それによって自己肯定感があがり、自分に自信がついた。

自分を好きになることができた。

それでも、ずっとはここにいないだろうな。漠然とそう思っていた。

居心地は良かったけれど自分が本当にやりたい仕事ではない気がしたから。

もっと自由に自分が輝ける場所があるのではないかと考えるようになった。

可能性を広げるため、成長するため、経験のため
ポジティブな気持ちで新たな場所へ行くと決めた。

今まで何かを決断するとき、辞めるという言葉を使うとき、
そのことから「逃げる」意識が少なからずあった。
そしてそのことを後悔することもあった。

会社を辞める日、密かに憧れ尊敬していた人から、


「〇〇さんには感謝の気持ちでいっぱいです。」



そう言われた。それはこっちのセリフなのに。

私の方が何倍も思っていたことなのに。本当に嬉しかった。

私のすべての選択は間違いでなかったとそのとき心から思った。

行き止まり、回り道、色々してきた人生だけど、
何が起こるか分からない自分の人生のこのドキドキさがたまらなく楽しい。

つらいことがあっても何とかここまで生きてきた。
この人に出会えて良かったと思える出会いもあった。
それだけでこれから先も生きていけそうな気がする。

立ち止まってもいい、逃げてもいい。

自分の過去を肯定できるのは自分だけだ。

履歴書の空白にとらわれていたのは自分自身だったのかもしれない。

誰にも見えない私の空白
今、私には鮮やかに色付いて見える。

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