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個人でコワーキングスペースを運営するということ―1対1

ノラヤは会社ではないです。管理人が個人事業主を10年以上やってて、その事業のひとつとしてやっています。ちなみに、たまに「法人化は?」と言われますが、収入が少なく法人化のメリットがないため、していません。

さて、「個人」でコワーキングスペースを運営することについて、いくつか経験談をお伝えしようと思います。ただしここでは事業形態としての「個人」ではなく「ひとり」「単独」という意味の方。

まずメリット。全部自分の都合で決められる身軽さがあります。営業日も、休日も、イベントするのもレイアウト変えるのも家具を買うのも、揃える飲み物の種類もお菓子も。オープン時間変更もなにもかも。
「これ面白そう!」と思ったらすぐ企画できるし、「嫌だ!」と思ったらすぐやめられます。

デメリットは、全部自分でやらなければいけないことです。なんでも自分で決め、全部自分で背負わなければならないです。逃げられないです。

メリットの「身軽さ」デメリットの「背負う」、相反するような言葉ですが、それが個人経営というもの。

さて、そういうざっくりしたメリット・デメリットの他に、ノラヤ特有の悩みもありました。その一つは、この20平米程度の狭い空間で、利用者と「1対1」になって、向き合うことが多いということです。

お互いがもくもくと作業したり、ほどほどに雑談しつつ同じ空間にいるだけなら、なんともないのです。ただ、中にはずっと相手をして欲しいのか、ひっきりなしに話しかける人もいます。

もちろん、なにか相談されたら、それについてアドバイスしたり、他の勉強会やコミュニティを紹介したり、話の流れで他の利用者の方を紹介したりということをします。その結果、新たなつながりができ仕事につながったりすると嬉しいし、コワーキングスペースをやっててよかったと思います。しかし、そういった交流ばかりではないのです。

ノラヤは「ダメ人間のためのコワーキングスペース」と言っています。普通のコワーキングスペースのような「起業!」「会社に縛られず生きる!」「東北から世界へ!」といった、意識の高い人の集まるような場所を苦手に思う、特別じゃない普通の人こそ、うちに来て欲しいと思っています。

そうアピールしているので、心の弱い人や、対人関係に支障がある方、うまく働けない方が、ノラヤのゆるさに惹かれるのか、よくいらっしゃいます。そういった方々がうちを居心地よく感じてくださるのは、喜ぶべきことなのかもしれません。
しかしながら、中には向き合うのがとても難しい方がいます。私はカウンセラーとしての訓練を受けたわけではありません。1対1でいるのが、かなり大変な方もいます。どう接したらいいかわからないのです。ただ話を聞くだけでも、苦痛に思うことがあります。

もしも、1対1ではなく、他にも利用者がいる状態ならば、また状況が違います。でも、ノラヤは利用者のほとんどいないコワーキングスペースです。高確率で、私と1対1になってしまうのです。

ある方は、とある著名な男性が自分を気にかけているはずだと、来るたびにずっと語っていました。なぜか嫌われてしまった、どうしたらいい?と言われても、こちらは相槌を打つしかなかったです。

ある方は、ものすごくネガティブで、自分を卑下する発言と間接的に他人を侮辱する発言を繰り返す人でした。来ると毎回「ノラヤに人がこないのはぼくのせいでは?」と言うので、腹が立ってしまいました。もちろんその人が来ても来なくても利用者は少ないのですから。一時期毎日のように来店されていたので、正直ノラヤに行くとき気が重かったです。

率直に言えば「来てほしくない人」が、どうしても出てきてしまう。でも利用者が少ない状態で客を選べるような立場なのか?けっこう苦しみました。

あるとき、経営コンサルタントの方に、辛さを漏らしました。すると、「嫌な人がいるのは当たり前。カウンセラーやコンサルタントは、たくさんの人と接しなければならないから自分の『心を守る』方法も学ぶのです」と、「ゲシュタルトの祈り」という言葉を教えくれました。
難しくてよくわかりませんでしたが、他人と接して思いを吐き出されても、それをすべて自分で受け止める必要はなく、その人はその人、わたしはわたし、というスタンスでいなさいということだと解釈しました。

しかし、だからといって、万人を受け入れられるような人格者にはなれないです。難しいですね。

結局、(タイトル詐欺みたいで申し訳ないですが)こちらが「個人」でなくなることで、この辛さは解決しています。現在、ありがいたいことに運営サポートメンバーがいます。ちょっとした不安なことでも相談できる存在があるというだけで、だいぶ気が楽になりました。

ノラヤをクローズしてからは、ほぼ無職の日々です。自腹でスペースめぐりをしているので、支援いただけるとすごく嬉しいです!ドロップイン費用や交通費に活用させていただきます。