個人でコワーキングスペースを運営するということ〜「手作り」は誰でもできるわけじゃない〜

コワーキングスペースに限らず、飲食店なども、物件を借りてオープンする前には必要に応じて改装したりしますよね。でも改装にかけるお金を持ってない。
「居抜きの物件を借りれば大丈夫！」
…というわけにもいきません。前のお店とまったく同じではないですから。古くて使えない部分もあったりするし。
それで、

「オーナーみずから、改装」
「ホームセンターで材料を手に入れればこんなに安くできる」

と、手作りでお店を作るっていうの、よく紹介されてます。

たとえばこの本に出てくる飲食店とか。おもいっきり参考にしました。

減速して自由に生きる: ダウンシフターズ (ちくま文庫)

私もお金がないんで、じみーちに手作りするしかないと思ってました。それに、手作りのほうが、「味」があっていいじゃない。そう思ってました。

が。

今思うと、プロに頼んだ方がよかったなと思います。

なぜかというと、私は手作りできるほどのセンスがなかったのです。
そしてそれを自覚してなかったのです。

センスがない人は手作りやっちゃだめです。

手作りならでは、ちょっと不器用な感じ、いいじゃない。そう思うかもしれませんが、やっぱり無理です。

あのですね。私、壊滅的にセンスが悪いんです。というか、ない。ダサい、がわからない。

まずね、服のセンスがない。おしゃれがわかりません。変な格好をして平気でいるようですが、自覚もない。以前、焼肉屋のおばさんにただで服をもらい、喜んで着ていたら実家で母に「ひどい！そんなもの着ないで！」と言われました。

デザインセンスもありません。実は少し前まではウェブデザインで食っていこうと思っていました。でも、他人の作ったものすごく綺麗なウェブサイトを見て、無理だと思いました。

センスが悪いといえば、こういうこともありました。

うちのスペースで、あるイベントを開催することになったんです。センスが良くデザインに敏感な、ちょっとおしゃれな方向けの。

わたしは張り切ってA4のチラシを大量に印刷し、スペース入り口にタイル状にぺたぺた貼り付け、吹き出し型の紙をつけて宣伝文句を書きました。
私は得意げに写真に撮り「宣伝してるよ！」と主催の人にメッセージを送りました。

でも、それを見た主催の方が言いました。
「ありがとうございます。でも、ごめんなさい。外してください」
はっとしました。私のしたことは、「ダサい」ことだったんだ…

だから、センスのない人は、そのセンスをお金お払って買わなきゃいけません。手作りで安上がりは諦めて、プロに頼むべきだと思います。

もう一つ私に欠けているものがあります。

「根気」です。

手作りするならめんどくさがってはだめなんです。でも、ほんと、この「根気」がなくてダメでした。

棚を手作りしたかったんです。既製品の棚の「ツンっ」とした雰囲気が嫌で。きっと楽しくて夢中になって作るだろうなと思いました。でも始めてみると、全然気分が乗りませんでした。

自分で設計して、材料をホームセンターで買って裁断してもらってきました。でも、次は、塗装をしなくちゃいけない。

塗装ってすごくめんどくさい。塗ればいいってもんではないです、乾かさないと作業が進められない。そして乾かすスペースも必要。

えらい時間がかかって、無事塗装が終わって、次は組み立てしなきゃいけない。でも組み立ても、すごくめんどくさい。

めんどくさいなぁ、が、積み重なって、ついついあとまわし。

これではいけないと、何度か、泊まり込みましたが、寒い時期でもありましたし、辛くて、眠くなってすぐ寝てしまい、進みません。中途半端な材料がいつまでもノラヤの中にある状態になりました。

ようやく棚ができたのは、オープンしてから半年後でした…

（ちなみに作るのに半年かかった棚は、壊すのは1日で済みました。）

で、そんなに大変な作業なら誰かに手伝ってもらえばいいじゃないかってなりますよね。

実際、コワーキングスペースオープン前に、仲間を集めて「壁を塗ろう」「床を貼ろう」「テーブルを作ろう」と、イベント化して作るところは多いです。

ノラヤでも「床貼りイベント」をやったんですよ。でも、参加者はゼロでした。結局、当時小学生だった息子と2人でやりました。夜遅くまでかかり、かなりきつかったです。

ノラヤはベースとなるコミュニティがない状態でのスタートだったので、この頃はまだ、「やろうぜ」って声をかけて来てくれる人がいませんでした。

手作りするには、仲間の存在も必要だと思います。

もしくは、たくさんの人がしぜんに集まるような、その地域で人望と人脈があること。

お店を手作りしてうまくいく事例は、

・その人にもともとセンスがある
・面倒な手作りを続けられる根気がある
・人望と人脈があって、サポートしてくれる仲間がいる

この条件が揃ってないと、厳しいんじゃないかなと、私は思います。