私道かぴ (安住の地)

安住の地 所属。http://anju-nochi.com 戯曲や小説やコラムなどを書きます。

道後温泉クリエイティブステイ日記

道後温泉活性化プロジェクトのうち「クリエイティブステイ」の日記です。松山や道後のことを中心にリサーチ、創作を進める記録です。

すべて見る

◎道後温泉クリエイティブステイ日記⑥後編

【道後滞在6日目 後編】 Oさんと別れて時計を見てびっくりした。なんと3時間も歩き通しだったらしい。どこかで休もうと思ったものの、活弁のために内子座に戻ることを考えると、お店に入るには微妙な時間だ。 たまたま開いていたベンチに腰掛けてお茶を飲んでいると、青い空が急に目の前に迫って来た。「私は一体何をしているんだろう」という気持ちになってくる。 数日前までは知らなかった町で、一生のほとんどをここで過ごす人に出会って、その人生や地域のことを聞く。そして、最後に「子どもは生んどっ

スキ
6

◎道後温泉クリエイティブステイ日記⑥前編

【滞在6日目】前編 朝市めがけて早起きしたものの、実際に足を運ぶとまだ始まり切っておらず閑散としていたので、電車の時刻までからくり時計の下の足湯に入る。8時になると観光協会の人が「おはようございまーす!」と元気に傘を立てに来た。昨日今日でかなりの観光客が来るのだろう、行楽シーズン真っただ中といった感じだ。 8時になったので伊予鉄で松山駅前まで出た。時間があまりなかったので急いでJRに乗り換える。アンパンマン列車に子どもが群がっていてかわいい。電車はなかり込んでいた。 今

スキ
4

◎道後温泉クリエイティブステイ日記⑤

滞在5日目は作業日。できるだけ出歩かずに過ごそう…と思っていたのに結局色々と回ってしまった。 朝食を食べて道後温泉本館に向かう。昨夜、霊の湯に入りに行ったものの、人が多く整理券配布になっていて「本日は終了」と言われてしまったので、早めに行っておこうと思ったのだ。(本館は只今改修中で、大きな幕がかけられている。訪れた人は霊の湯に入れるようになっている) 入口の前で写真撮影している人が多くいたので「すわ、また入れないのか…!?」と思ったものの、受付に行くと案外すんなりと入れた

スキ
5

◎道後温泉クリエイティブステイ日記④

【滞在4日目】 三日目の朝食は、じゃこ天のバター焼きと鯛の塩焼きが美味しかった。じゃこ天の、たまにごりっという歯ごたえ(骨を砕いたところ?)があるのが好ましい。そして愛媛の鯛は本当にどう食べても信じられないくらいおいしいな!と思う。 今日も嘘みたいな晴天。小学生が絵を描く時に青いクレヨンで全部塗りつぶしたみたいに、雲ひとつない青色だった。 昨日気になった芝居小屋は「内子座」と言うらしい。内子町のHPを調べると、観光ガイド付きの町案内があると言う。なぜ!?いいの!?何でこん

スキ
5

もしもしからだ

見逃しがちな身体感覚や、人間のふとした会話についてのコラム。時勢柄、コロナウイルスや、過去のことを考えるコラムが多めです。

すべて見る

◎もしもしからだ はじまります

2020年は、「まさかこんなことになるとは」な出来事が続発した1年だった。 まず、今も続くこのコロナ禍のこと。 1年前の今は、横浜にダイヤモンドプリンセス号が着いた頃で、まだそんなに危機感はなかった。 その頃、私は劇団で「無言劇」の稽古をしていた。 無言劇とは書いて字のごとく、役者が全く喋らない演劇のこと。 ちょうど自分の書く会話劇に疑問が出て来た時で、「このまま誰かの悩みばかりを種にセリフを書いてていいのか?」「演劇でしかできない表現ってなに?」と思って、いっそ言葉を

スキ
2

◎お尻に激痛で気づいたこと

リモートワークになって最初に思ったのは、 「人間、こんなにも動かないものなのか」 ということだった。 やっている仕事は出社していた時と何ら変わりないのだが、人と会う必要がなくなると、めっきり外を出歩かなくなってしまった。気付けば、一日中パソコンの前からほとんど動かない生活になっている。 最初の一週間くらいは、朝起きてからひたすら部屋で仕事をし、簡単な昼ごはんを作って食べ仕事をし、気付くと日が暮れているのでカーテンを閉め仕事を締めくくり、夕飯を食べて家事をして寝る…という

◎言葉はその身体に向かって書かれる

先日、カフェで作業をしていると、隣に若い二人が座った。 どうやら新人の後輩と、その会社の先輩らしい。資格の勉強をするためにお互い集まったようで、机の上にはテキストが広げられていた。勉強する先輩に、後輩がつまらなさそうに声をかける。 「先輩って、本とか読みますか?」 「え、まあ、普通に」 「まじっすか。すごいっすね」 「と言っても月に一冊とかそれくらいだけど」 「いや十分すごいですよ。私本とか無理なんですよね~」 「無理って?」 「読めなくて。大学の時とかも、課題で読まなきゃ

スキ
3

◎湯あたりって何?

温泉が好きだ。 昨年、自宅から車で15分圏内に公共浴場を見つけてしまってから、 狂ったように温泉に通っている。 温泉の好きポイントはたくさんあるのだけど、 どこの湯に行ってもつい確認してしまうのが、濃度の濃い温泉によく貼ってある【湯あたり注意!3分を目安に出ましょう】という注意書きだ。 これぞ本物の温泉の証!という感じでついつい惹かれてしまう。 通い始めた当初は、看板通りに入らねばなんかえらいことになるのではないかと思い、律義に3分で出たり入ったりを繰り返していた。

スキ
2

食欲をさがして

飲食ライターをする中で気付いた、食にまつわる話を集めたコラム集。(2020年2月~2021年2月)

すべて見る

〇私たちはその土地の水、土、空気を食べている

東北で暮らすようになって最も驚いたことの一つに、「野菜のでかさ」がある。 全部、とにかく大きい。 白菜は赤ん坊より巨大だ。片手で運べないくらい重い。 大根なんて切り落とした丸太で、ちょっとした鈍器として使えるぐらいずっしりしている。 かぶは丸々としていてサッカーボールくらいある。包丁が入らない。 そして、何よりすべて目をむくほどおいしい。ただ茹でただけで、ただ焼いただけで、ただ煮ただけで、塩コショウ程度の味付けにもかかわらずものすごく甘いのだ。 すごい…。これが東北の農家

スキ
2

〇こころざしのない店員、その苦悩

「どんな経緯で、飲食の世界を志されたんですか?」 取材の最後にそう聞くと、相手はふいに泣きそうな、苦しそうな表情をした。 「志すとか、そういうのが全然…ないんですよね。すみません」 そう言ってなぜか頭を下げるその人に、私はいえいえそんな、と言って言葉を探す。 そして、やっぱりこの聞き方はよくないな、と思う。 今までも数人、いや、そんなに少なくない人数、この質問に答えられない人がいたからだ。 飲食店には、色々な「アツい」人がいる。 ある地域で取材した焼肉店の店長は、「

スキ
11

〇広告的に料理を書く、その罪悪感

最近、訳あって韓国料理の記事ばかり書いている。 仕事で書く記事の大半がそうなのだけど、お金をもらって書く記事は往々にして「広告的」なものが多い。広告的とは、つまりアクセス数を稼ぎやすい文章のことだ。 「できるだけキャッチ―に・わかりやすい言葉で・欲望に訴える見出しを」 というような鉄則があって、それを極めていくとどこかで見たような、「なるほどこういう言葉に人はつられるのか~」というような記事が出来上がる。例えばこんな感じ。 「ダイエットにおすすめ!サムギョプサルの痩せ効果

スキ
8

〇100週目 何が変わった?

このエッセイが、今回で更新100週目を迎えるらしい。 手帳を開くと、今日の日付のところに「100週目!」と書いてあった。 その「!」を見ながら、私はなんだか不思議な気持ちになった。手帳にこう書いた1年前は、きっと100週更新したら、「!」みたいな感情になると思っていたんだろう。 なるほど…と思いつつ、本来あると思っていた満足感とか自分をねぎらう気持ちがまったくないことに気付いた。なんたることか。 2019年の2月から、毎週水曜日にコラムを更新することに決めた。 その理由は前

スキ
3

からだの感覚を取り戻す

身体感覚について書いたコラムたちです。(2019年2月~2020年2月)

すべて見る

(最終回)○あなたを覚えていること

先日、母から突然連絡があった。 親戚が屋根から落ちたという。「雪かきをしていて足を滑らせた」と聞いた時、それでも私は「あんなに強いおじさんなら大丈夫だろう」と思った。 その人は、厳密に言うと遠い親戚なのだけれど、小さい頃から本当によくお世話になった。どちらかと言うと野性的なにおいのする人で、どんなに遠い距離でも、紙の地図を一瞬見ただけで運転できてしまう。目的地までの道がはっきりとわかるらしい。 また、陶芸や畑仕事、日曜大工などなんでも自分の手で作ってしまう人だった。 教わった

スキ
6

○人類共通の記憶があるなら

年末、飛行機に乗るためにある空港の待合でぼーっと座っていた。すると、左斜めに見知った背中がある。声をかけると、お世話になっている本屋の店長だった。その人は南に行くという。私は北なので真逆だ。年の瀬に、しかも同じ時間に正反対に向かう飛行機を待っているという事実をおもしろく感じる。搭乗までお互い時間があったので、だらだらと取りとめもない会話をした。神戸空港は飛行機よりも海の上の船の方が多く目につく。 「飛行機ってさ、眠くなるねん」とその人は言う。「ねむい?」「うん。もう、乗った時

スキ
4

○内側から大人なわたしたち

幼い頃、正月に親戚で集まった時のこと。 肉や揚げ物、甘いものを次々に食べる子どもたちを見て、ある大人がこう言った。 「若者はいいなあ!何でもばくばく食べられて。それも若いうちだけだよ~。食べられるうちにたくさん食べときなよ」 すると、また別の大人が言う。 「違うよ、若い頃にたくさん食べるか、少しずつを長く食べるか、どっちかだよ」 今思えば、その人は数年前に高血圧と診断されて、食べ物をずいぶん制限していたので、残念な気持ちが現れたのだろう。 その時は、子どもながらに「そんなもの

スキ
2

○顔のことを言う

「化粧してる?」という言葉が、褒め言葉じゃなくなったのはいつからだっただろう。 中学や高校生の頃、親戚に聞かれる「化粧してる?」はどちらかと言うと褒め言葉だった。「そんなことしなくてもそのままで十分なんだからしなさんな!」という意味で使われていたからだ。 しかし、大学生以降この言葉はおそろしいものになった。 特に同年代に言われた時は、ぐっと急所を突かれた気がする。 「化粧してる?」の言葉の裏に、勝手に 「え、なんで化粧してないの?素顔で十分勝負できるっていう自負があるの?」

スキ
4