Wave's Diary, Behind the mask -1st, July, 2022-
互いを隠し、互いを知らぬまま、笑い合う世界だ。
頬の色も、顎の形も、唇の厚さも、鼻の高さも、知ることはできない。布や不織布で覆われた見えぬ面影を、知らず知らずのうちに描いて、ふとした瞬間に訪れるそれとの邂逅に、少し高揚を抱いたりもする。
「芸能人がマスクで変装する時代」から、「マスクを外すと誰か分からない」と言われる時代を、手探りに生きてもう三年。
テレビの向こうの若者が「マスク外すと誰かわかんないですよね」という話をしていた。確かにそうだ。コロナ禍の中、マスクを身につけた人々は、自然と「顔の下半身」を描かれることを強いられる。「想像と違う」はどういったことを指しているのか、それはその時じゃないと分からない。当然のことではあるけれどそれを恐れる人が出てきても、仕方ないなあとも思う。実際、マスクを外すことに恐怖や不安を覚える同世代の若者も一定数いるみたいだ。
そんな時代だからこそ、マスクを取った姿で語り合える人は大事にしたいと思う。
今日、大切な人に「渚くん、そんな口元にほくろあったっけ?」と言われた。疑問符を浮かべながら、机上の手鏡を取る。すると本当に、自分でも気付かないほど小さなほくろが、唇の左端付近にできていた。
「え、ほんとだ。嫌だなあ」
「なんで〜?いいじゃん」
そんな会話を重ね、自分を見つめる。こんな些細な違いに、よく気付いたなあと感心しながら。
そうやって自分を常に見てくれる存在はありがたい。そして、いつも花を見つめている。地面に反射する熱に項垂れ、それでも力を振り絞り懸命にひらく花を。
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