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棚のディスプレイにおける一連の思考プロセスと、アイテムの選び方について

初めまして。普段はinstagramで自分の部屋の写真を上げてはイキり散らかしている者です。

そして自分以外にも、日々同じようにインテリアを愛し、各々が自身の部屋の写真を投稿しイキり合うという、素晴らしいコミュニティが形成されているのですが、どうにも内容が単一的であったり、逆にコアに寄り過ぎていたりという、勿論そこの自由性は個々に委ねられているものではあれど、それらを面で捉えた時、これからインテリアに興味を持つような人たちにちゃんと裾野が開けているように見えるか?という点は懐疑的です。

そんな中、ふと"オープンな収納家具に対するディスプレイ"を経験してみたいと、ベースとなるIKEAの書棚とその中に配置するアイテムの購入を画策し、 先日それが一旦完成、というレベルにまで到達したのですが、"何故このスペースに対し、このアイテムを選び、ここに配置したのか"というのを、実際の自分の思考プロセスを遡って記録してみたら面白いんじゃないかと思い、書いてみることにしました。

今現在、SNSやオウンドメディア、専門誌などによってインテリアのディスプレイにおける"手法"に関する情報は十分に、かつ簡単に得られる反面、肝心なアイテムをどう選ぶか、そもそもどこで手に入るのか、という情報は不十分であると感じています。

今の暮らしに不自由は無いが、もっとインテリアに拘りたいと考えている方、勿論この春から新生活を始めたという方にも、この記事の内容が一助となれば幸いです。

①:装飾するスペースを決める

今回はIKEAで購入した80cm幅の書棚(ビリー)上3段を装飾するスペースとし、ディスプレイを考えていきます。

なぜ"上3段まで"と考えたかは、単純にオプションの扉を下半分に追加したというのもありますが、最もその判断への根拠は"アイレベル(目線の高さ)"から成ります。
この書棚に対しては主に立った状態で眺める事が多いので、よく目に留まる上3段分を飾るスペースと考えるのは必然的です。
さらに、最上段から上段・中段・下段と分け、どの段の部分に目が留まるかを考えると、下段部の棚板は固定式で床から106cm、中段・下段の棚板は可動式なので高さは変えられるものの、ある程度バランスよく棚板を配置しようとすると中段は140cm、上段は170cm程度の高さとなり、その高さからそれぞれ2~30cmの高さまでのものを配置していくと考えると、少なくとも上段は他の段と比べ目に留まりにくく、装飾性のあるアイテムを置くにはあまり適していません(=そこまでお金をかける必要がない)。

ショップのディスプレイを考えるのに"VMD"という言葉がありますが、それにおけるアイレベルは大人の平均身長から考え"100~150cm位"が、商品が最も目に留まる高さとし、そこにサンプルを並べ、それよりも下に在庫を平積みする、のようなセオリーは上に書いた内容に通じます。

②:手持ちのアイテムを置く

そもそもの動機としてディスプレイを経験したい、というものなので、モノが散らかっていてそれを整頓する為に収納家具(書棚)を購入する、という一般的な購買動機に対し、先に収納家具があってモノを買う、と逆転した形で進んでいます。
とはいえ、この書棚を配置した場所には元々別の棚があり、そこに置いていた観葉植物の行き場が無いので、それらに加え手持ちのアイテムをいくつか配置してみます。

上段右にツタ性の植物、中段左にシェーカーボックス、
中段中央・下段左に小さめの観葉植物を配置 ※CGイメージ

上の画の通りまだスカスカの状態ですが、この時点で2つほど念頭に置いたことがあります。
一つは、各段を左と右で1区画ずつ分けて考えること。80cm(側板を除けば76cm)のスペースをそのまま1つとして括り、さらにそれを3段分考えていくというのはなかなか難しく、とても疲れます。そこで、各段でそれぞれ左右を分けた40cm分のスペースを6つ埋める、という形にすると、思考が整理されてゴールが見えやすくなります。
そしてもう一つは、見せたいアイテムを上下交互に配置すること。視線の移動がスムーズになるよう配置すると美しく見えます。また、そのアイテムを引き立たせるよう、それぞれの横には装飾性の低いもの(角ばった形の収納用品など)を並べる、と制約ができることでよりゴールの形が鮮明になります。こうやって制約を増やしていくことこそが、むしろ自分のイメージするものに近づきやすくなると思います。

下段右に装飾性のあるアイテム、それ以外の空いたスペースには収納用品、と
あと何を追加すればいいのかが鮮明となる

③:参考元から好きを"見つける"

手持ちのアイテムを並べた事でぼんやりと方向性というか着地点が見えてきたのですが、ここで先人たちの知恵を借ります。
インテリアにおけるインプットのツールとして、現在最も効率的なものはpinterestかなと思います(既に知っているとは思いますが)。

例えば「一人暮らし インテリア」「1K インテリア」だったり、「北欧 インテリア」みたいに検索すると、いい感じの画像がたくさんサジェストされます。pinterest上にアカウントを作成し投稿されているものもありますが、アカウント不在でtwitterやinstagramなど他のSNSに投稿された画像などもヒットするので、手早くリアルな情報に辿り着けます。

ここで、自分が好きだと思う部屋などを参考元として、足りないアイテムを探していくのですが、そもそもこの"好き"とはどういうことなのか?というのをこの段階で一度考えてみます。
例えば、インターネット上で素敵な部屋の写真が投稿されているサイトなどを見ると、決まって"自分の好きに囲まれた部屋"みたいな見出しによって紹介されています。そして、それを見た自分がその部屋を"好き"だと感動するとします。つまり"好き"とは"憧れ"や"プライド"で、他者を媒介してようやく自覚できるものであり、自己から湧き出るものではないということです。
"自分らしさ"という言葉も、他者との比較から自己の身の丈を定め、"諦め"と"プライド"の間で妥協点を見つけることだと思います。

上記はあくまで自分のフィロソフィーですが、これも一種の制約として機能します。過去のインプットから、より具体的に「あのアイテムが合いそうだ」「あれはどうだろう?」というのが浮かんできます。

④:アイテムを探し、購入する

さてここから、最も楽しくもあり、最もハードルが高く頭を悩ませるフェーズへと入ります。洋服や料理も然り、ここの精度を上げるにはやはりトライ&エラーを繰り返すしかないかと思うのですが、インテリアにおいては物を簡単に捨てれないという点と、そもそも(特に装飾アイテムが)手に入らない・どこに売っているか分からないという点の2つの大きな障壁があります。
残念ながら今現在、装飾アイテムだけで絞っても包括的に全てを揃えられるショップは(自分が知る限りでは)存在しません。この"全て"とは何か、という話ですが、装飾アイテムは形状の面で3つの要素に分別できます。

3つの要素とは"垂直"、"立体"、"平面"です(上の動画の受け売りですが)。
"垂直"のアイテムはポスターフレームや立てかけた本、
"立体"はフラワーベース、鉢植え、オブジェ、非定型の収納アイテム、
"平面"はトレイや平置きした本、などが該当します。
この中で最も入手に頭を悩ませるのが"平面"のアイテム…中でもです。逆に最も簡単に入手がしやすいのは"立体"で、"垂直"にあるポスターフレームと一緒に手に入るショップは多く存在し、実店舗でもIKEAがその筆頭として挙げる事ができます。
インテリアのディスプレイにおける"装飾として機能する本"は、いわゆる洋書です。Amazonでもいくつか購入できますが…明らかにその"質量"に対して費用が釣り合わないように感じてしまいます("垂直"のアイテムが必要ならポスターフレームがある) 。ちなみにヤフオクなどで「洋書」で検索すると、こういったニーズに対してか、数冊セットで1000円とかで販売しているものを見かけたりします。ともかく、この洋書(もしくはそれに代わるアイテム)がインテリア関連のショップで揃わない現状には嘆かわしく思います。

少し脱線しましたが、今回のプロセスにおいてどうやってアイテムを選定していったかを説明します。
②と③のステップを経て、どういう形のもので、あのショップで扱っているもの、というのが輪郭を持って見えている物と、全然イメージができていない物とあるので、ひとまず装飾アイテムを多く取り扱うショップを一通り眺めていくことにします。以下、今回利用した・検討したショップを紹介します。

・ACTUS

ACTUS(アクタス)は直営店とパートナーショップなる店舗を含めれば全国に60以上もの実店舗を構えるブランドです。Webサイトからも格式の高さが伺えますが、装飾系のアイテムに絞って見れば比較的リーズナブルに購入できます。
さらに、プライベートブランドものが多かったり、アイテム数が豊富であったりとオススメできるポイントは数多くありますが、何より素晴らしいのが殆んどのシリーズでサイズや形状の違いなどで2アイテム以上揃えられる所です。

ディスプレイの手法として最もポピュラーなものの一つに三角構図というものがあります(上で挙げた動画でも解説されています)。例えば3アイテム揃っているシリーズのものを購入すればそれだけで三角構図が作れ、また2アイテム揃うものであれば、その後ろに垂直アイテムを加えると簡単に三角構図が作れます。

中央に置いているのがACTUSで購入したキャンドルホルダー、
高低差があるので並べるだけで簡単に三角構図が生まれる

自分だと"立体"アイテムを探す時はまずACTUSを見ます。それ以外にも、鉢植えやフラワーベース、クッションカバーを揃えたいという場合にも必ずチェックするほど信頼があります。"垂直"アイテムは少なめ、"平面"は無し。

・H&M home

H&M内のインテリア専門ブランドであるH&Mホーム。実店舗は無くネットのみの取り扱いですが、とにかく安価で、かつ"使える"アイテムが豊富に揃っています。ACTUSの紹介で書いた"シリーズで数アイテム揃う"、という点も押さえられています。あと発送がメチャ早い。

アイテムの傾向として有機的なデザインのものやニュアンスカラーのものが多く、いわゆる韓国インテリアのような、女性向けという印象を受けがちですが、プリミティブなデザインで汎用性の高いアイテムも多く扱っているので、誰でもすぐ家に取り入れれるようなアイテムが数点見つかるかと思います。"立体"アイテムが豊富で"垂直"もいくつか、"平面"はほぼ無し。

・無印良品 / IDEE

間を埋めるための収納用品を探すにあたって、真っ先に浮かんだのが無印良品内のFound MUJIというブランド?で取り扱いのあるコシャー箱です。

フランスの公的機関や〜(省略)。「コシャー」って人の名前らしいです。
出典:https://lee.hpplus.jp/100nintai/2146181/

収納アイテムをディスプレイとして並べる際、プラスチックの…それこそ同じく無印良品で扱っているポリプロピレンの収納などを置くと、結構浮きます。これはおそらく光の反射率であったり、反射方向の均一性によるものだと推測されるのですが、、まあとにかく、コシャー箱や籐などの天然素材で生成された収納アイテムは馴染みやすいという印象です。
IDEE(イデー)もバスケット収納などが豊富に揃っています。IDEEが入っている無印良品には上のコシャー箱も一緒に取り扱っている印象があります。

・CHLOROS / HAFEN

CHLOROS(クロロス)は実店舗の展開はなく、ネット限定のショップ。国内でBloomingville(ブルーミングヴィル)やhouse doctor(ハウスドクター)といった、本場北欧のデンマークブランドのアイテムを手に入られる数少ないショップであり、プライベートブランドの家具や雑貨の取り扱いも多く、とても重宝するショップです。(CHLOROSがいかに国内インテリア市場において稀有な存在であるかを語らせれば記事1つ書けてしまうほど、、)
自分がこのショップを訪れる動機として多いのがポスターを探す時で、THE POSTER CLUB、ATELIER CPHといった主要ブランドのポスターが他ショップより少しだけ安価に購入できます。
HAFEN(ハーフェン)は、CHLOROSでは取り扱いのないPaper CollectiveやFine Little Dayといったブランドのポスターが手に入ります。
ポスターフレーム自体は勿論それぞれのショップで販売されていますが、IKEAやH&M homeでより安価で揃えられます。

・ART OF BLACK

こちらもネット限定のショップですが、装飾アイテムが豊富に揃っています。何より、前述したショップではほぼ取り扱いの無かった"平面"アイテムが沢山取り揃えられている点が大きな特徴です。"垂直"、"立体"のアイテムも揃うので最も包括的に揃えられるショップとも言えますが、実状、アイテムそれぞれが持つ"属性"が偏っている印象があり、その属性を好む人にとってはこのショップ1つで完結するのですが、大抵のインテリア志向を持った人であればここで完結、というのは難しいかなと個人的には思います。

⑤:購入したアイテムを並べていく

コシャー箱とカゴ、本(後述)、A4ポスター、オブジェを購入し、届いたものを②の状態から加えて配置していきます。

中段右にコシャー箱+カゴ、中段左端に本、下段右にポスター、オブジェを配置

"経験"という動機上、本を置くことはマストで考えていたのですが、上述の通りなかなか手に入らない上、値段も高い。しかしイミテーションブックやダミーブックと呼ばれるものは避けたい…とインターネット上を彷徨う中でふとmomo naturalのカタログを発見し、アリでは?と購入してみました。

こんな動機で購入する人は珍しい気がしますが、それでも背表紙はシンプル・B5サイズで扱いやすく、ディスプレイのアイテムとしても機能する、というのはおそらくmomo natural側も狙いとしてあるはず(多分)。
あと普通に中身も読み物として面白く、社外のインテリアスタイリストの方によるコーディネート例は参考になります。個人的に大谷優衣さんという方の作品が前から好みで、その方のスタイリングが載っていたのが図らずも嬉しい出来事でした。

上段左の部分に対してはIDEEでバスケット収納を購入し置いてみたのですが、しっくり来ず撤去。代わりで手持ちのアイテムに使えそうなものがあったので、そちらを含めいくつか間を埋めるようにアイテムを追加します。

上段左に丸型の収納、中段左シェーカーボックス後ろにガラス材のフラワーベース、木製のオーナメントを配置

IKEAで購入してからずっと出番の無かった丸型の収納ボックスがいい感じに馴染みました。こういう、構想に無かったアイテムがふとした閃きでバシッとハマる、みたいなことはディスプレイを考えることに於いて気持ちのいい瞬間の一つです。
そして中段にもフラワーベースとオーナメントを配置。これはアイテムの高さを揃えることが意図としてあります。

左右端にその段で一番背の高いアイテムを置くと、アウトラインが見えてすっきりします

あまり目立たせたくない部分で高さを揃えるとバランスがよく見え、その区画に一体感が出ます。反対に、下段は高さを揃えないことによって視線の誘導を促しています。

中段に一体感が出た反面、情報量が増えたことで下段が寂しく感じられた為、ポスター付近にアイテムを追加します。ポスターフレームと一緒に購入していたH&M homeの花瓶を置いてみたらいい感じに収まりました。

下段の色味がちょっと寂しいような…
発展途上で"のびしろ"を残しておくのも、インテリアの楽しさの一つです 

⑥:完成!

完成した形がこちら。

ジャーン
しれっと左上にクランプ照明が付いていますが、これはディスプレイの完成度とは無関係です
ポスターを飾る醍醐味は前面に反射する光だと思っています。知らんけど…

⑦:アイテムの購入先・価格一覧

上段左から:IKEA - KVARNVIK(¥2,499)、マドカズラ4号鉢(¥2,000位・鉢込)
中段左:MOMO NATURAL - カタログ(¥1,000)、ACTUS - ラタンフラワーベース S(¥1,650)、〃 - レジンバードオブジェ Lサイズ(¥1,600・廃盤)
中段中央:AXCIS - Homestead シェーカー オーバルボックスS(¥5,940)、stem - マンゴーウッド ボウル 3号(¥3,245) + ネフロレピス ツデー(植物・¥437)
中段右:無印良品 - コシャー箱 A4(¥1,200)×2、〃 - 市場のかご・深型・小(¥500)
下段左:FARM - プラントポット リンネア(¥1,980) + ホヤ クミンギアナ2.5号(¥400)、〃 - プラントポット アスタ 9cm(¥1,375) + ホヤ カルノーサ2.5号(¥400)
下段右:筒型土偶("design shop"で購入・¥2,200)、H&M home - ウッドフレーム A4(¥1,799) + STILLEBEN - Tulip II No.68(¥3,300)、101 COPENHAGEN  - Duck Bowl Big(¥7,400)、H&M home - テラコッタフラワーベース S(¥1,299)


7256文字。お疲れ様でした。

インテリアという嗜好品は、ある意味で"コロナ禍"という後押しも今や凋落し、それ以前よりも"いびつ"な形のロールモデルが形成されてしまったように感じます。まだイームズチェアを"北欧"と括って語られるくらいの方が文化的に豊かだったかもしれない、とそんな事すら考えてしまいます。

インテリアは自由で楽しいと、趣味程度で嗜んでいる人にとってはそれで良いのですが、それで飯を食っている人が言うにはあまりにも無責任です。自由であることへの無気力さは、誰しも思い当たる場面がある筈で、制約があってこそ、その枠組みの中で試行錯誤してアイデンティティを追求するという楽しみが生まれるのだと思います。

制約がない状態は不自由で、制約をもっと一般に周知させることが重要だというのが、この記事で最も伝えたかったことです。知らんけど。飯食ってないし。食わせろ〜〜〜!終わり。


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