こんなことに困っていました《小学校編》

私は聴覚障害を持っています。右耳は全く聞こえず、左耳(80dB)に補聴器を入れています。コミュニケーションは主に口話(耳で聞いて、口で話す)で、手話は勉強中です。

今回は"自分の聞こえを説明しよう"シリーズの一環として、"こんなことに困っていました"を説明しようと思います。特に小学校のときは、自分で説明する能力がまだなく、自覚も無かったので、気づかれることが少なかったのですが、きっと今の小学生も私と同じことで困っているのではないか?と思い、書きます。(小学生時代は短く、その時は困っていても、過ぎてしまえばどんな風に困っていたか忘れてしまうため、次の世代に引き継がれにくいと思うので…)

【こんなことに困っていました】

◯休み時間のとき、一緒に遊んでいたのに、急にみんなが居なくなる(チャイムの音や、先生の集合の合図が聞こえず、一人だけ取り残されてしまう。気づいたら誰もいなくて、慌ててみんながどこにいったか探す)
◯縦割りで交流するときに、ゲームの説明が全く分からず、泣きそうになりながら見よう見真似で適当にごまかす(ルールを間違えていると、みんなに批判される…)
◯体育の授業で、試合終了の合図が聞こえず、一人走り続けていて、みんなに笑われる
◯体育のプール授業で、先生の指示が聞こえないので、前の人の真似をして泳いでいたが、行きの泳法しか見ておらず、帰りの泳法が違うことに気づかずに、行きも帰りも同じ泳法で泳いでいたら、みんなに笑われる。

とにかく状況が分からず、常に不安な状態で、キョロキョロしていました。指示が分からなかったので、周囲の真似をしていることが多かったです。いつも置いていかれることに不安を抱えていました。状況に合わないトンチンカンな行動をして笑われる度に、えへっと天然を装い、笑って誤魔化していましたが、ひっそりと傷ついていました。

母に聞いたところ、みんなに置いていかれるのが嫌(みんながどこかに行ってしまうのが嫌)だから「すぐに履ける靴にしてほしい」と言っていたそうです。

実は、小学生の時は成績も良く、真面目で、明るくて、学級委員を務めるようなキャラでした。先生からの信頼も厚く、女子グループの派閥ができたときに間を取り持ったこともありました(現在の根暗キャラとは全く違います、笑!)。きっと誰も私が困っているとは思っていなかったと思います。むしろ、いつも楽しそうで羨ましいとさえ思われていたと思います。だから私が困っていたことは、きっと誰にも気づかれずに埋もれたままなのだろうなぁ、と思っていたのですが、つい先日思いがけないことが起こりました。

私は小学校卒業以来、毎年欠かさず小学校の恩師と年賀状のやりとりをしているのですが、今年はいつものやりとりと違いました。私が、「年々聴力が落ちていて、できることが減ってきたけれど、周囲の皆が支えてくれているので働けています。本当にありがたいです。」と綴ったら、お返事をお手紙で下さりました。小学校時代の楽しい思い出とともに、色々なことを書いて下さっていましたが、その中で「君が聞こえにハンデを持っていたことは、あの当時からもちろん知っていたけれど、君は優秀だったから何も心配してなかった。でも、もしかして君は、小学校の時に困っていたのではないか、と今になって思うようになった。気づいてあげられなくてごめんね。」と綴られていました…。私は涙しました。

数十年経って、あの時の困っていた私を見つけてくれた。誰にも気づいてもらえなかったけれど、先生が気づいてくれた。そのことが本当に本当に嬉しくて、何度も何度も手紙を読み返しました。先生、気づいてくれてありがとう。きっとその恩師は、これからの聴覚障害を持つ子供たちの良き理解者になってくださるのだろうと思います。

小学校の先生方へ。
いつも子供たちと向き合って下さってありがとうございます。聴覚障害をもつ子供たちは、状況が分からなくていつも不安です。急にみんながいなくなって置いてけぼりにされたり、指示が聞こえずに一人だけ違う行動をしてしまい笑われてしまったり…。悲しい思いをたくさんしています。そんな時、もし周囲のお友達が一言声をかけてくれたら…それだけで安心できます。「今、笛が鳴って試合終了だよ」「行きはクロールで、帰りは平泳ぎだよ」「チャイムが鳴ったから教室に帰ろう」そんなたったの一言で、ものすごく救われます。

お忙しい中、たくさんの子供たちを見てくださっている中、大変恐縮でございますが…どうか、聴覚障害をもつ子供たちが、自分の障害を周囲に説明できるようになる手助けをして頂けると幸いです。みんなに助けてもらえるようになるにはどうしたら良いか、一緒に考えてあげて頂けませんでしょうか?どうかよろしくお願い申し上げます。

--------願わくば、これからの聴覚障害をもつ子供たち・若者たちが少しでも明るい未来を歩んでいけますように。そう願ってやみません。

お読み頂いてありがとうございました。心より感謝申し上げます。

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