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「感受性が豊か」だなんて自分で言うのはサムすぎる【HSP/HSSの話】

1

小学生の頃。

習い事の迎えに来る母親の車のエンジン音をいつも聞いていた。
離れていても自分の母親が駐車場に車を停めたことに気づくし、ブレーキングや車の停め方でその日の機嫌もわかった。
機嫌の悪い日は理由を考える。
母親の服に染み付いたニオイでその日の晩御飯を推測し、カレンダーに書いてあった予定や、父親との朝の会話、届いていた手紙、季節、いつしかの電話。色々な情報を自分なりに読み取って、さながら水平思考クイズのように答えを導きだす。
車に乗り込んだ瞬間に入院していた親戚のおじさんが亡くなったことを当てたときはさすがに驚かれたが、とにかく勘の鋭い子供だと思われていた。

だからって、それについて何かを思ったことはなかった。
感覚なんて人それぞれだ。
そんな話を誰かにするわけでも無かったし、他人の目に世界がどう映っているかなんか知る由もない。

ある程度大人になってからは気づいていないフリをすることも覚えた。
自分が気づいていないフリをして話していることは、相手も気づいているけど気づいていないフリして話してるんだろうな、それがこの世界のマナーなんだろうな、と思っていた。

2

就職した。
違和感を感じることはあったけど、それで職場で損をすることはなかった。
むしろ、自分としては上手くその能力を使っていたと思う。
相手の気持ちが読めるとかそんなカッケーやつじゃない。
その人の翌日の運勢も見えなければ、魔術めいた力も一切ない。
でも、アンテナを張っていれば、ドアを開ける音で誰が来たかもわかるし、MAXまで集中力が上がっていると、電話の着信音で誰がどんな要件でかけてきているかもわかる(多分タイミングとかいろんな兼ね合いだと思う。その辺のメカニズムは自分でもよくわかんない)。
上司の携帯に電話がかかってきてその電話に出ながら席を外した時にも誰から何の要件でかかってきた電話かが見抜けたりする。だから戻ってくる前に次に必要になりそうな書類を準備しておく。
上司が便利だと思っているのか、それとも気持ち悪いと思っているのかは怖くて聞けてないけど、まぁ、そういうのを気にするタイプの人間ではない。

こういうのは意識してやっているわけじゃない。
脳が勝手にバックグラウンド処理している感覚だ。
逆に言うと止めたくても止められなかったりする。
自分が疲れていなくて、周りがポジティブな環境であれば全く問題ない。
だけど、自分が疲れていて、周囲にネガティブな要素があると大変だ。
意識していないところで脳内がミキサーみたいに勝手に回っている。
そこに墨汁が一滴垂れると物凄い勢いで攪拌して、全てが真っ黒になる。
一滴のネガティブがものすごい勢いで拡大してしまうのだ。
普段は受け流しているちょっとした苛立ちや相手の感情の起伏が全て刺さり始めてしまう。

私が仕事を断ったことで上司が他の人に相談している所を見れば「お前が断ったせいで俺は苦労している。お前のせいだ」と聞こえる。
何か質問をされれば「お前の説明は要点を得ていない」と詰められているように感じる。
自分で回しきれなくなって巻き取ってもらった案件のやり取りが他の人との間で進んでいるのを見ると、投げ出したことを責められているように感じると同時に「お前なんか要らない」と言われている気がする。
誰かから愚痴を聞けば自分には関係ないとしても改善策はないかと悩んでしまう。
会話がうるさい、倉庫の使い方が汚い、自分ばっかり電話取ってる、書類の提出が滞っている、仕事が上手く回っていない…。
「部下」「上司」「事業部」「会社」etc...
色々なものへの愚痴と「私への非難」の線引きがわからなくなって勝手に手一杯になって抱え込んでしまうのだ。
そこで冷静さを欠き、優先順位を崩して、馬鹿みたいにすぐに対応してしまうものだから「この人は対応してくれる人だ」と思われて、また違う愚痴や不満が集まってきてしまう悪循環。

私は周囲の人がミスをするのをみるのも苦手だ。
特に自分が担当していた仕事から外れた後、後任にトラブルがあると中途半端に事情を把握している分、より一層のストレスを感じてしまう。
去年はそういうことが多かった気がする。
自分のことで手一杯の中、他の人のトラブルが耳に入ってくると事情を知っている自分だったらその事故を防ぐために何かできたんじゃないかと考え込んでしまう。
「なんとかしてよ~」なんて雑談の中の軽口を、本気じゃないとわかっていても受け流せず真に受けてしまう。
自分の案件がうまく回っていたのかどうかも定かじゃないくらいに2019年度は1年間常に大炎上してたイメージだ。
今思えば私の案件はめちゃくちゃ上手く回っていたし、コロナの影響で、2月~5月の案件が全てぶっ飛んだのに年間予算達成してるんだから、めちゃめちゃ働いていたのだ。
だけど、無駄な完璧主義故に100点以外は失敗と捉えてしまう節がある。
だから正直今まで上手くいったと思える仕事は1つもない。
回想するのも辛いぐらい全ての案件が嫌な思い出を伴っている。
その中にはとてもやりたかった仕事もある。
こういう仕事がやりたくて頑張ってきて、その頑張りが報われて携わることができて、本当なら喜ぶべきことだったはずの仕事だ。
でも、喜ぶべきだったと自分に言い聞かせる度になんだか悲しくなってしまうのだ。
一つ一つは他の人からしたら「なんで?」というレベルのことかもしれないけど殆どトラウマになっている。振り返って思い浮かぶのは飛び交う怒号と失敗の風景ばっかりで、周囲の人の仕事の話を聞きながら過去の自分の失敗を勝手に追体験してしまうのだ。

もうこうなるとどうにもならない。
一度情報の受け取りをミスると、次から次へと情報が入ってきて、受け止めきれなくなってしまう。誰とも話なんかしたくないし、会話が耳に入ってくるのすらシャットアウトしたい。
イヤホンが外せない。
パソコンの画面から顔があげられない。
処理しきれない情報の多さに右往左往。

最終的に電話なっているよ、って肩を叩いてきた同僚にブチ切れて部屋を出て、そのまま休職した。
それが去年の冬だ。

3

さすがにアラサー。こんな破天荒な生き方は許されない。
どうにかしなければ。
逃げ続けた自己分析といよいよ向かわなきゃいけない。
そこでわかったのが、どうやら私はめちゃくちゃ「繊細で感受性が豊からしい」ということでした。

自分を繊細な人と認めるのは、なんかめちゃくちゃ嫌だ。
どうにも「私」という人間が「私の思い描く繊細さん」と違っているのだ。
私が思う繊細な人間は、ミニマリストで、無印に売ってるいい感じの生地の服を好み、オーガニックの化粧品を使って、白を基調とした部屋に住んで、小麦粉は食べず、休日はマフィンを焼いている。
中学のジャージを部屋着にし、猫の毛まみれのベッドで寝起きし、トイレの電気が3年間切れっぱなしで、蒙古タンメン中本ばっかり食ってる私のような人間は「繊細」を名乗る資格など無い。
自他ともに認めるガサツな人間だ。

自分が自分のことを一番知らないというが、本当にそうだと思う。
・豊かな想像力を持ち、空想に耽りやすい。
・美術や音楽に深く心動かされる。
という項目に最初NOを付けていたけど、よくよく考えてみれば、音楽に深く心を動かされて空想に耽る、というのは私が常日頃Twitterでやっていることだった。
めちゃくちゃYESやん。
他の人の方がわかるだろう、お前はYESだろう、と。
なんか「豊かな想像力」とかちょっといい感じに言われると、いやいやそんなもんないっすわ、っていう謎の謙虚が生まれるから、設問が良くないと思う。
あと、私は美術にめちゃくちゃ苦手意識があるから、音楽と美術セットにされると素直にYESと言いにくくなっちゃうので、設問が良くないと思う。(2回目)

4

言い訳はさておき。
そこで出会ったのが今流行りのHSP(The Highly Sensitive Person)とかいう概念である。
私が、センシティブですって。ウケる。

■HSPセルフチェックテスト
http://hspjk.life.coocan.jp/selftest-hsp.html

14個当てはまればHSPのところで、私は21個当てはまっている。

だがしかし、私はめちゃくちゃセンシティブなパーソンと思いきや、わりとアクティブであり、あまり保守的ではない。
そもそも保守的な人はイベント業界みたいな刺激まみれの業界で働いてない。
むしろ、毎日同じ場所に通うことの方が苦手だし、すぐに海外に飛びたくなってしまうし、R-15映画ばっかり見ている。

「清涼感のあるグロ」について熱く語る私
https://note.com/nkya_3dvtr/n/n1a10f0fa23a3

どうやら、繊細なHSPという人種の他に、HSSという刺激を追求する人間がいるらしい。

■HSSセルフチェックテスト
http://hspjk.life.coocan.jp/HSS-Test.html
女性は11個当てはまればHSSのところで、私は18個当てはまっている。

やっぱりないとーさんの話が一番わかりやすい。
基本的な情報しか話していないけど、わかりやすくまとまっている度はNo.1である。
https://www.youtube.com/watch?v=FoE4GUml9eA

正直、「繊細」と「刺激追及」の対比ってどうなん?とは思ってる。
その2極での分断はあんまりピンときてないが、まぁ新しい概念なんてそんなもんですよね。

とはいえ、その概念と出会ったとき、ちょっとほっとしたのだ。
怖い話もそうだ。
謎の怪奇現象が出てくるだけの話よりも、幽霊が何故怨霊になってしまったのかの背景とか知りたいじゃん。それと一緒。
理由のわからない不調よりも、不調の理由を知りたいし、どうやったら改善できるのかが知りたい。
今後、医療現場とかにこのチェックテストが用いられるようになって、改めて診断したら違うかもしれないけど、そんなことはどうだっていい。
初めて「あなた、こういうことで困ってませんか?」「こういう対処法したら楽になりますよ」がしっくり来たのだ。
今までいろいろな概念が流行っては廃れてきたが、こんなに腑に落ちたのは初めてだ。

おわりに

「なんか生きづらい」と思ってる人が少しでも安心できればと思い動画にしました。

とないとーさんは言っていた。
もしできることなら、思い詰めていた就活生の頃の自分にこの概念を伝えてあげたいが、どうにも無理そうなので諦めて今後に生かすことにする。

他人の書いた歌ばっかり考察していないで、自分についてもまともに考察してナルシストを極めたいと思う。
noteはそういう場所だと聞いている。
異論は認めない。


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