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【DVは なおる 続 無料公開分】④さらに傷つきを深めた「DV加害者プログラム」

こちらからの続きとなります。

さらに傷つきを深めた「DV加害者プログラム」

 そこで早速、元パートナーから指定のあった、家から電車で行ける範囲のDV加害者プログラムに問い合わせ、参加することとなりました。

 プログラムでは、参加するにあたり加害者と被害者それぞれの面談が必要とのことでしたので、それぞれ面談をし、いくつか注意点や約束事が書かれた誓約書にサインをする…という手続きがあり、そこで初めて参加が許可されます。

 面談では、ファシリテーターから「あなたはここに来るほど酷いことをしたのではないんじゃない?」ということを言われましたが、自分としてはこれまでの加害行為に対する申し訳なさがあり、ここで自分を変えたいという思いがあることを伝え、無事通う許可を頂けましたのでそのまま手続きをし、次の週からプログラムへの参加を始めました。

 プログラムは毎週決められた曜日のお昼からの二時間となり、一年通って五十二回で一通りのカリキュラムとなるとのことでした。

「DV加害者プログラム」の流れ

 DV加害者プログラムでは、女性のファシリテーターと五~六人の参加者がいるという空間でした。私はその時初参加でしたので、決められたフォーマットで全員が自己紹介をするという一幕がありました。初参加の人がいるときは必ずそうするという決まりだそうです。

 自己紹介では、名前と年齢・どんな加害行為をしたか・警察の介入はあったか・現在の状況・アルコール依存があるか等、紙に書かれたフォーマットに従い、一人一人読み上げていくという形でした。中には警察の介入があった方も参加していました。

 年齢層は二十代~六十代と幅広く、こう言ってはなんですが、見た目からはとてもDVをしたとは思えない印象の方ばかりでした。もちろん見た目は影響しないというのはわかってはいたのですが。

 新規参加者がおらず、自己紹介がないときはそのままグループワークに入ります。まずは「先週の振り返り」と称して、前回のプログラムからその日までにあったことを共有します。ファシリテーターがそれを聞き、それは良くない・良い等の評価をするという時間でした。

 その後、教材を使ったグループワークを一時間ほど行い、一回のプログラムは終了となります。

「?」を感じた加害者プログラムのグループワーク

 プログラムの流れは毎回、おおよそ先述のものになり、それに毎週通うという形となっていました。そしてその雰囲気は終始、重苦しいものでした。
 自分が感じた限りですが、なんだか「小・中学校の楽しくない学級会」というイメージがありました。おそらく自分が体験した学級会があまり面白くなかったという積み重ねがありますので、例えとしては適当ではないかもしれませんが。

 「先週の振り返り」がこの時間は特に重苦しく感じました。参加者の思いについての語りはファシリテーターによってほぼ否定されていたのが大きな理由かもしれません。

 確かに、DVやモラハラをした人間としての感じ方や思いは、被害者側からすれば否定したくなるものかもしれません。ファシリテーターは参加者の思いについては知ったことではなく、いかにやったことに対する責任を取るか…反省や、考えの矯正を迫っていたように思います。

 一つの例としては、言葉(単語)の使い方についてでした。例えば私が他の参加者に「○○さんの奥さんはどんな方なのですか?」と聞いたところ、すぐさまファシリテーターから「奥さんはやめなさい。パートナーと言いなさい」という注意が入りました。

 ここではそういうルールなんだそうです。「女と言うな、女性と呼べ」等、このような言葉の指摘は他にもいくつもありました。勿論言い方一つで印象というのは変わるとは思うのですが、ファシリテーターの価値観を押し付けられているようで、少し不快な気持ちになったのは否めません。

 ですがもちろん、私を含め参加者の殆どは、自分の行動を反省し、自分の行為について責任を持ち、自分の行動や考え方を変え、暴力を手放したいと願っていましたので、素直に従うことで自分を変える一歩にしようと、ファシリテーターの言うことを受け入れる努力を続けました。

 それでも受け入れがたいことというのは参加者それぞれ、様々なことがありました。

 振り返りにて、パートナーから暴力を受けたという男性参加者に対しては「それはあなたがこれまでDVをしてきたのだから、パートナーからの暴力はあなたがさせたようなものだ」という言葉があり、流石に他の参加者からも「それはないのではないか」等の反対意見もありましたが、ファシリテーターはそれに対して「あなたたちは何もわかっていない!」と一蹴するという形で論議を切り上げる…という場面がありました。

 反論に対し「あなたはわかってない」という言葉は度々あり、その度に参加者は納得のいかない気持ちと、自己否定の念に襲われていたのではないかと感じていました。

 また、参加者の多くはお子さんがいらっしゃる方が多く、別居もしているため、お子さんに会いたいという気持ちの強い方も当然多かったと記憶しています。

 そんな参加者の思いに対してもファシリテーターは「あなたは酷いことをしたのだから会ってはいけない!たとえお子さんが会いたいと言っていてもそれは違う」と頭から否定していました。

 また「諸外国では離婚後共同親権なんて制度があるらしいけれど、それはとんでもないことだ」等、子供に会うということはいけないと考えていたようです。その割に「女性に対する暴言やセクハラは国内で言っていてもしょうがない、日本の政府は外圧には弱いから、外国からどんどん言ってほしい!」とも仰っていたので、どうも矛盾を感じざるを得ませんでした。

 このような矛盾や価値観の押し付けは、まさに自分達がやっていた「モラハラ」に他ならないと感じたのですが、こういうプログラムだから、ファシリテーターもある程度はわざとやっているのではないか、同じようなことを自分もしていたということに気付かせる為ではないか……と考えました。きっと本当は真面目でいい人なのかもしれない…と自分は思い込む努力をしていたと思います。

 とはいえ、自分の感じ方を完全に否定することもできず、どうにももやもやしたので、匿名でネット相談や、他の夫婦カウンセラー等にも「セカンドオピニオン」として相談に乗ってもらうということをしていました。

 特にネットでは「DV加害者プログラムは、家族を破壊するための酷いところだ。信用してはいけない」という旨の記述が多々あり、自分も少し疑わしくなりました。

 半信半疑ではありましたが、何かあったときのために、プログラムの様子を残しておこうと思い、ノート代わりにしていたタブレットで録音を、胸ポケットに入れたスマホのカメラで動画を毎回残しておくことにしました。これも加害者的な思考だったのかもしれませんが、不安を感じていたのだと思います。

それでも、学ぶ・家族再生センターとの出会い

 とはいえ、ファシリテーターに反発する前に自分を変えるのが先だと思った私は、真面目にプログラムに通い、学ぶことに精力を傾けました。

 それでも、回を重ねるごとにファシリテーターへの不信は募っていきます。参加の度に憔悴していく他の参加者の面々を見ていると、自分もつらい気持ちになっていきます。「それだけのことをしたのだからこれは罰なんだ、しょうがないんだ」と自分に言い聞かせはしますが「やはりこれは何かが違う」という思いも捨てきれません。

 それでもファシリテーターを信じるしかないんだと、自分なりに誠実に、ファシリテーターに教えを請い、時に相談に乗ってもらうということをしていました。

 特に、元パートナーが不倫をしたという事実が辛かった自分は、プログラムが始まる十~十五分ほど前にプログラムの会場へ向かい、ファシリテーターと二人の時に少し話を聞いてもらうということをしていました。

 不倫されたからといってDVをして良いわけじゃないのはわかるし、それを言い訳にしたくはない旨、相殺して自分の罪を軽くしたいなどとは考えたくないこと、様々なことを相談しました。勿論、他の参加者には聞かれたくなかったので、ここだけの話にしてほしい旨も伝えました。

 また、別口での夫婦カウンセラーへの相談も定期的にしており、その中で認知行動療法のワークを紹介され、それをこなしたりしつつ、自分の変化に向けて取り組むことも忘れませんでした。

 カウンセラーさんからは、元パートナーも一緒に(同席という意味ではなく)カウンセリングを受けられれば、お互いの傷や問題も、少しでも良い方向に向かうのではないかという話があり、元パートナーにもカウンセリングを勧めたところ、受けてみたいという反応があり、それならばと話を進めることができました。

 また、「家族再生センター」というところがあるという情報を得たのもこの頃でした。DV加害者支援をしているということで、その一風変わった支援の方向やセンターのカウンセラーさんの人柄が気になり、ブログなどを興味深く読ませていただいていたのですが、実際に繋がるのはもっと後のことになります。

ありえないファシリテーター

 元パートナーとカウンセリングを受ける旨を、加害者プログラムでの振り返りの時間に話したところ、ファシリテーターからは「カウンセリングを受けさせてどうするつもりだ!何を企んでいる!」という旨を言われました。

 その言い方があまりに酷いと感じましたが、確かに自分の良いように物事をコントロールしようとしているのかと思われるのも心外でしたので、カウンセラーさんは何もモラハラを正当化するような姿勢ではないこと、離婚するしないは問題ではなく、お互いが抱える傷や問題を癒やしていくのが良いと考えていること、コントロールするつもりは一切ないということ等をファシリテーターに伝えましたが、どうも納得はされていないようでした。

 その数日後、元パートナーはカウンセリングを断ったという連絡がカウンセラーさんから入りました。カウンセリングより良い方法があるのでそちらを実行します。とのこと。ファシリテーターからのコントロールがあったのではないか…と考えましたが、疑うのも嫌なので、それはそれとして受け入れました。

 そして、次の加害者プログラムの回で、とんでもないことが起こりました。

 いつものように、先週の振り返りを行い、グループワークに入ろうとした際に参加者皆の前でファシリテーターが、ちょっと皆に話がある。と一言あり…

「中村さんのパートナーは以前、不倫をしたことがあります」と言い放ちました。

 これには私もですが、参加者の皆が驚きました。先述した通り、不倫の事については皆に話さないでくれとお願いしていたにも関わらず、いきなりそれを暴露するという行動が信じられませんでした。

 ファシリテーターいわく、元パートナーはどうせ不倫が許せないんだろう、だったら別れれば良い、こちらから調停を申し立てる。と言っている…という旨も話していました。

 さらに続いてファシリテーターはこうも言っていました。

「DVに関係することですから、秘密でもなんでも話しますからね。そもそもプログラムを受けるにあたっての約束事が書いてある書面にサインされたと思います。そこにはその旨記載されていますから。それにこれはですね、皆で考える為の教材になりますから」とも。

 この言葉を聞いて私は物凄くショックを受けました。信頼して自分の問題を秘密で話した結果がこれとは…目の前が真っ暗になりました。自分になんの落ち度があったんだろう…相手のことをちゃんと考えられてなかったのだろうか…等、自責の念やファシリテーターへの怒りで感情がぐちゃぐちゃになったのを覚えています。

 その回のグループワークでは混乱しきっており、まともに頭に入ってくることはありませんでした。

 最後にファシリテーターは「あなたも大変だろうけどね、○▲☓■…(もはや何を言っているかも覚えていません)」という言葉を私にかけてきました。

 そこで完全に怒りが爆発しそうになりましたが、なんとか抑えて、ただ一言「私はあなたの行動と言葉で物凄く傷つき、怒りを感じています。」とだけ伝えました。まさに、プログラムで教えられた、感情を丁寧に伝えるという実践でした。

 それだけを伝え、なんとか怒りを抑えて帰路に着きました。あの日のことは未だに忘れられません。

プログラムからの排除から、過呼吸に

 その後更に精神不安定になった私は、元パートナーに対してメールで、もうどうにでもなれといった思いで、不倫が未だに許せないことや、不倫はDVと同じだとファシリテーターが言っていたこと等をぶつけてしまいました。

 そして次のプログラムの日に、そろそろ出かけようかと家を出ようとしたところに一通のメールがファシリテーターから届きました。

 内容は「上記の件につきまして、参加をお断りいたします。以上、よろしくお願いします」という非常に簡素なメールでした。

 すぐにファシリテーターに電話をし「これはどういうことですか?」と聞いたところ。

「メールに書いてある通りですが?」とのこと。いきなりそう言われても意味がわからず、説明をお願いしたところ「は?説明しないとわからないんですかあ?」との答えで話になりません。

「何か至らない点があったんだろうとは思いましたが、どれがそれに当たるのかどうしてもわかりません。どうかご説明をお願いしたいです」と再度お願いしても「自分でお考えになったらどうですかあ?」とのこと。

「勿論自分でも考えましたが、どうしてもわからないんです。お願いします」と話しても「はあ~(ため息)自分で考えてもわからないのでは、そのままで良いんじゃないですかあ?」との答え。

「言ってもらえないとわからないこともあります…あなた自身、プログラムではそう仰っていたではないですか、どうか、後学のためにも、自分を変えるためにも教えていただけませんか?」と聞いても「ご自分で考えてみてはどうですかあ?それと、パートナーの○○さんはこれから弁護士をつけて調停を申し立てるそうなので!」という答え。

 何度もお願いした結果返ってきた答えは、以前送った、不倫もDVだというメールが「プログラムで得た知識を悪用」したというルール違反になるとのことでした。こうして私は、DV加害者プログラムにこれ以上通えなくなってしまいました。

 その電話の直後、私は極度の不安や怒り等の感情に襲われて、過呼吸の発作を起こしてしまいました。

【続く】


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