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【400字小説】スタンド・バイ・湯~とぴあ

駅前のバスロータリーを見渡してる。鳩がいる、外国人観光客がいる、タクシーが何台も客を待ってる。俺は温泉に行きたいと考えていた。このあとカウンセリングで、そのあとは家事。引っ越しをしたが荷ほどきが進まない。ぼんやりとガラス張りの向こうを見ながら、思考。

若い女たちが歩いている。俺は下心丸出しでみっともないおじさん。でもバスを待ち続けているおばあさんにしてみれば、まだまだ俺なんて未熟で。夏は終わったのか? 冬はまだ来ないのか。

ナンパをしている男がいる。知っている男だった。ナンパは成功しないだろう。俺の野望も叶いはしない。それがなんだったのか、忘れたのだから。

都合良くスクランブル交差点のスクリーンビジョンで表示されるはずもない。銀行の広告が流れている。最近、投資の煽りがひどい。そんなに簡単に稼げない。しっかり働いてくたびれるから、湯~とぴあは最高なのさ。だから駅から温泉までの直行バスに乗ることに決めた。

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