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2020年8月の記事一覧

特許法173条、174条 再審請求期間等

特許法173条、174条 再審請求期間等

 再審は、(i)審決確定「後」、(ii)「一定の期間」しか請求できません。再審請求できる一定の期間とは、再審理由を知った日から30日です。いわゆる不責事由が有る場合には、例外的に30日経過後も請求できます。その場合の請求期間は、不責事由の消滅から14日(在外者は2月)、又は、30日経過からさらに6月経過までです。

・審決確定「前」に再審理由があることを知った場合には、審決取消訴訟を提起できます。

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(~22/08/14)特許法73条 特許権共有者が許諾した通常実施権は、特許権共有者が持分放棄したらどうなるか?

(~22/08/14)特許法73条 特許権共有者が許諾した通常実施権は、特許権共有者が持分放棄したらどうなるか?

 弁理士試験中に考えたことですが、少し前に聞かれたので整理しておきます。

(聞かれた内容)
 共有に係る特許権の共有者は、他の共有者の同意を得れば、その特許権について他人に通常実施権を許諾することができます(特許法73条3項)。この通常実施権は、許諾した共有者が、持分放棄したらどうかるか?
 
 具体例を使って説明します。

(具体例)
特許権Aを、甲と乙とが共有している。
甲が乙の同意を得て丙

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特許法171条 再審の請求

特許法171条 再審の請求

 原則として、確定した審決が覆ることはありません。しかし、完全に不服申し立てができないとすると、困る場合もあります(論文試験では、具体的妥当性の要請に反する事態を生ずるおそれ とか言います)。そこで、訴訟手続における重大な暇疵等一定の理由がある場合に限定して、再審を受けられることとしています(特許法171条)。

・確定していない審決について再審を請求した場合
 再審請求は補正できない欠缺のある不

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特許法169条、170条 審判における費用の負担と、費用額決定の執行力

特許法169条、170条 審判における費用の負担と、費用額決定の執行力

 意外に間違った解釈を聞くことがありますが、拒絶査定不服審判の費用は出願人の負担です(特許法169条3項)。仮に、拒絶査定が覆った理由が審査官側の明らかなミスであった場合も、出願人負担です。

 一方、特許無効審判の費用は、基本的に敗訴者負担になります。この費用負担は審決又は決定において、職権で定められます。ただし、審判に必須とは思われない費用は、勝訴者であっても負担しなければなりません。

 費

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特許法168条 訴訟との関係

特許法168条 訴訟との関係

 侵害訴訟が提起された場合、差止(特許法100条)とかをされたら困ります。このため、侵害訴訟の根拠となる特許権に対して、特許無効審判を請求することがあります。その場合、特許無効審判を請求した旨を裁判所に陳述し、訴訟手続の中止を申し立てることができます。これにより、審決があるまで訴訟手続が中止される「ことがあります」(裁量)。

 また、侵害訴訟事件の早期解決のために、特許庁と裁判所との間で情報交換

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特許法167条、167条の2 審決の効力と確定範囲

特許法167条、167条の2 審決の効力と確定範囲

 審判の当事者及び参加人には、審決確定とともに審決の一事不再理効が発生します。
 一事不再理というのは、特許法167条の「同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することができない」ことです。同じ証拠を使って、何度も特許無効審判又は延長登録無効審判を起こされると困るので、一事不再理の規定が設けられています。
論文試験では、この部分は、「先の審判において主張立証を尽くすことができたのに、審決

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特許法165条、166条 訂正審判における特則

特許法165条、166条 訂正審判における特則

 審判長は、訂正が所定の目的ではない、又は、訂正が特許請求の範囲を変更/拡張するものであると判断すると、特許権者(請求人)に意見書提出機会を与えます。

 訂正審判の併合は可能です(準用特許法154条)。特に、分割を繰り返した特許権(複数)を一括して訂正する場合には、併合することで手続きが簡単になると思われます。

 また、当事者及び参加人の審尋(特許法134条4項)は、166条で適用除外されてい

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特許法164条の2 特許無効審判における特則

特許法164条の2 特許無効審判における特則

 特許無効審判において、このまま審決がなされると特許権が無効になる場合、審決の「前に」審決予告がなされます。

 ただし、訂正の機会を与える必要がない場合には、審決予告がなされない場合があります。例えば、(i)全ての請求項に無効理由が無いと判断された場合(訂正請求により無効理由を解消した場合を含む)、(ii)審決をできる状態になるまでに訂正の請求が全くなされないような場合、には審決予告がなされませ

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特許法162条~164条 前置審査

特許法162条~164条 前置審査

1.概要

 拒絶査定不服審判と同時に、その請求に係る明細書等の補正がなされた場合、いわゆる前置審査がなされます。
 前置審査というのは、拒絶査定不服審判という審判に入る前の事前審査にあたります。元々、拒絶査定不服審判において拒絶査定が覆るものの大部分が拒絶査定後に明細書等について補正がされたものでした。このため、拒絶査定をした審査官に再審査させれば、特許査定できる(拒絶査定が覆る)可能性が高いと

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特許法160条 差戻審決

特許法160条 差戻審決

 差戻審決というのは、拒絶査定不服審判でもう一回審査をやり直しなさいと、拒絶査定を取り消して審査に差し戻す審決のことです(160条1項)。
 差戻審決になる例は、審判請求が正当と考えられる場合や、審査の手続きに重大な瑕疵がある場合です。なお、差戻審決をする場合、審判請求に理由があると判断した場合であっても特許査定はしません。

 差戻審決後の審査では、査定に関与した審査官が審査できます。
 差戻し

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特許法 物(装置)と、方法の違い

特許法 物(装置)と、方法の違い

 物(装置)と、方法の違いの1つとして、構成が明確か否かという違いがあります。
 具体的には、物(装置)は構成を明確にする必要がありますが、方法では構成を明確にする必要はありません。

 例えば、画像加工装置(A装置)という物が、a1、a2、a3という構成を有する場合、
請求項では、
 a1(という構成)と、
 a2(という構成)と、
 a3(という構成)と、を有する
 A装置。
というように記載

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特許法159条 拒絶査定不服審判での審理

特許法159条 拒絶査定不服審判での審理

 拒絶査定不服審判の審理中に、審判請求「前」の補正が不適法であることが発見されたとしても、その不適法な補正が却下されることはありません。
 これは、適法な補正であると信じている出願人を保護するためであり、不適法な補正に対する新たな拒絶理由通知がなされます。この拒絶理由通知とあわせて50条の2の通知がなされるケースもあります。

・特許法159条

第百五十九条 第五十三条の規定は、拒絶査定不服審判

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特許法158条 拒絶査定不服審判における特則

 158条では、特許出願の審査における続審主義が規定されています(特許出願の審査と拒絶査定不服審判とが続審)。
 続審主義とは、審判官等が特許出願の審査結果を基にして審理を続行し、新しい資料を補充して拒絶査定した審査官の判断の当否を審査することです。

 拒絶査定不服審判では、拒絶査定を維持できるか否かが判断されます。このため、拒絶査定の理由が維持できないと判断されたとしても、拒絶査定が維持される

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特許法156条、157条 審理終結通知、審決

特許法156条、157条 審理終結通知、審決


1.概要

 審判審理は、当事者が口頭審理に参加していない場合であっても、職権で進行させることができます。このため、当事者が知らないうちに審決がなされることを防止するため、審決できる状況になった段階で審理終結通知がなされます。

 例外として、審判請求人に不利にならない場合は、審決前の審理終結通知を省略できます。具体的には、(i)拒絶査定不服審判の請求認容、(ii)補正却下不服審判の請求認容、(

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