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新規事業立ち上げ&DX構築 ― 某クリニックの郵送型PCR検査事業マーケティング その3 赤いキャップでクイックに!篇

PCR検査ビジネス立上げの話は、あと一回で終えるつもりだったけど、もう一つ書いてない独自サービス、ある意味目玉だったサービスを整えた話があったので、もう少し続けます。

前回のその1とその2はこちら。



徹底的に生活者目線


NクリニックのPCR検査の特徴の一つにスピードがある。
検体受領後24時間以内、できるだけ当日中を目指して検査結果報告する事と、当日数時間で検査結果を確認できるクイックサービスだ。
これはN社長の強い希望、強烈な一言で実現した。
「結果が心配な人は、少しでも早く、1時間でも早く結果が知りたい。その思いに応えなくては実施する意味が無い」とまで言い切った。
先行して検査センターを開設していた木ノ下工務店グループの検査センターなら、その場で唾液採取、検査、結果通知が行えるので、当日中での対応は可能だけれど、輸送や宅配で検体を受取り、検査して、メールで通知を送る来院不要の検査方法だと、かなりの難題になる。
が、物理的には不可能ではない。
この物理的に不可能でないのなら、実現できるし、する方法を考えて整え、提供するのが仕事だと言うのがN社長の根本の考え方だ。

と言う事で、命題を与えられた私は、いつもの微分でプロセスを整理して、リソースやシステムについて確認していった。
通常の受取型に関しては、単純にオペレーションを効率化して時間を詰めていけば、受取後当日中の結果報告実現はそう難しくない。ポイントはいつまでに届いた物を対象とするかだ。(このいつまで、の考え方は後でかなり大きく指摘された所。当日受け取った物は全てが答えだった)
と言っても実際には、各担当の作業を細かな所で詰めていき、間違いのないシステムチェックとプロセスを設計して、実施するスタッフを教育するのは、相当タフだったけれど。
検査自体は前処理を終え検査器にいれると約90分で結果が判明する。エラーやミス、複数チェックや検査不明などの対応は、メインの検査を軸にして複数検体に分けるなどの回避対応と、万が一の追加検査の場合の追加時間の発生についての連絡と検査希望者の承認プロセスを組み込む事で目処をつける事ができた。

問題はクイックだ。どこで?どつやって?いつ?だれが?


何を、なんのためには、サービスのコアとして当日結果のわかるPCR検査を、感染の疑いを解決するために、と決まっているから、クイックサービス特有の残り4つ、どこで、どうやって、いつ、誰がを現実的に解決しなければならない。
細目に分解する作業した上で、次に思考を整理するのは基本のキ、5W1Hだ。
微分して明確化した課題は、この5つの要素が決まれば解決の糸口が見つかる。
ホントに有能だ5W1H。
当日中の仕分け、前処理、検査
結果の報告、各プロセスの物の移動と分散して持ち込まれる検体の取り扱いにかかる時間を整理すると受け取って最最速で三時間、平均的には6時間は必要と見積つもれた。
なんとかN社長の目指した3時間はクリアできる。
これでもう一つわかったのは、最終の受け取りは19時が限界だと言うこと。
検査スタッフを24時間体制にするコストは捻出できないので、なんとか都内某所を最終でクリニックスタッフ、検査スタッフを帰宅させるシフトで、かつ再検査が発生してもギリギリで対応できる時間だ。
場所も三時間の中で移動と処理を行える都市という前提から、自ずと東阪名の三ヶ所に限定された。(すぐにここに福岡が加わってテンヤワンヤだったけれど)
と言うことで、無茶な調整や手続きは必要かも知れないが、物理的に必要とされる事が判明すれば、後は現実として形になった課題をどうやってクリアするかに手続きはシフトする。そこまでくれば、内外のリソースの何をどう使えば良いかも見えた中での作業だから、具体的課題を処理しつつ、時に力技でも解決に導ける。
とは言え予想外の問題は常に発生するもので、この時は、誰にまでは比較的シンプルに割り付けできたけれど、どうやってと誰のの中間にある、どんな格好で、が予期せぬ課題として立ち上がった。
道交法を考慮しながら、ハチ公広場でキットの渡しをするスタッフのスタイルについて、待ち合わせ場所にやってきた検査希望者から分かりやすくするために真っ赤なスタッフジャンパーを着て背中にPCR検査と白抜きでいれたいと要望があった。同時に現場のスタッフからは、立っているだけでクレームを言われる可能性の指摘があった。
確かに当時は今以上にコロナの感染について情報が少なく、たとえほとんどが陰性の検体だとしても、自分の目に入る場所でやりとする、例え検体採取前のまっさらキットでも反射的に拒絶をしてしまい、強くクレームを言ってくる人が稀に存在した。
正体不明で重症化や場合によっては死に至る可能性のある危険なウイルスに、理屈以前に恐怖を感じる事は素直に理解できる。
でも、同時にその恐怖を克服し安心を得るために検査が必要、陽性の感染者を適切に治療して市中の感染の可能性を少しでも抑えるためにも検査は必要だ。(様々な意見があるのは十分承知しています。検査を提供しようと決めた企業としての意思、社会に提供できるだろうと考えた想いです)
また、単純な話だがスタッフが渋谷の雑踏の中で真っ赤なジャンパーを着るのが恥ずかしい、と言う口にはださない、だせない感情も理解している。
この3つのポイントを念頭に、間違いなく希望者にキットをできるだけ効率的に数多く渡すという目的を解消するには、別にジャンパーは必須ではない。ハチ公前に到着した際に誰かに聞くことなく、検査キット渡しスタッフが見つかれば良いのだ。結果、白縁取りのPCRと大きくかかれた赤いキャップを被る事にした。今でもサイトの説明では、赤いキャップが目印と訴求している。高齢の希望者からも混雑した渋谷で、なかなかPCR検査と言うキーワードを口にしずらいなかで、分かりやすかったとの声もいただいた。
一部スタッフは、それでもクレームを心配していたが、ほぼ0で実施できた。(私の在職中)
最盛期には、キャップあるなし関係なくかなりの希望者が集まり、人だかりになって一目で受け渡し場所がわかるようになったのは、予期せぬご愛敬だ。

実際には、これ以外に検体の受け取り方法、移動手段と保管方法、受け取り後の個別情報の正確性の確保、近隣住民からのクレーム対応、受け取り時間の設定など、細かな項目が山のように絡みあっていたが、微分した各プロセスに着目して各プロセスのスタッフと、個別に必要な事、関連しあう項目関での連携と必要な事項などの確認していけば、短時間で抜けなく準備や課題の発見ができ、ほぼ数日で実現の目処がたち、代表が要望を出して約1週間で開始ができた。

オンライン診療もなかなか


このクイックサービスとは、別に海外渡航や会合、イベント参加などに必要な陰性証明発行についても、かなり痺れる準備だった。
PCR検査の前に、クリニックの別の診療メニューで当時厚労省が要件緩和していたオンライン診療を活用する目処が立った時に、一番の課題は解決できたが、これも必要なレベルまで細目を分解する事で必要な事柄を明確化できた事で答えを、容易に見つける事ができた。
これは手続きやらスタッフ、ドクターの根回しや対応など、クイックサービスとはまったく異なる問題が山盛りだったが、対応の解決は複雑だったが難しいものではなかった。

かくして100億越えのビジネスに急成長
なんやかんやの全体を、できる限り微分して、5W1Hで整理して、ホワイトボードで関係者に説明しながら理解を得ると同時に抜けのチェックを行い、内製と言う幸運に恵まれ、約一月半で実際のビジネスを開始できた。
オンライン広告は初カテゴリー、初クライアントのため、考査審査に時間がかかりプラス2週間ほどかかったが、その後の浸透と拡大は、もの凄いものだった。
あっと言う間に100億の規模に拡大した。0から初めて一月半で準備して、一年かからずに巨大になる、こんな経験はそうそうできるものではない。
良い経験をさせてもらった。

立ち上げ後、誰も実施していなかったテレビCMを開始するのだけれど、これはまた別の機会にnoteにまとめたいと思う。

もう少し細かく具体的な説明を想定して読まれた方には申し訳ないが、当時の内容をnoteで書けるのは、このレベルぐらいです。

し新規ビジネスの立ち上げや、既存ビジネスの改善など、企画立案と実行を行う際の参考、ほんのとっかかりや気休めになってくれれば嬉しいと思います。

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